池脇
谷口先生が判断する材料として、この患者さんの年齢あるいは心房細動が症候性か無症候性かなどの情報はないのですがどうでしょうか。
谷口
これに関しては、いろいろな場合があると思います。基本的には、脳梗塞の既往や心筋梗塞の既往があって心疾患を持っている、あるいは拡張型心筋症がある。あとは、基礎疾患を持っている人はDOACを続けます。もしくはPCIの後に抗血小板薬でなく、単剤のDOACにしている患者さん。このような方も続けています。
症状がない方については、心房細動が起こっていないことをどのように確認するかだと思います。
池脇
起こっていないことを証明するのは非常に難しいように思います。
谷口
基本的には、外来を受診されたときの心電図、あと今はいろいろなデバイスが普及していて、スマートウォッチで脈拍、心電図が記録できます。病院の外来のデバイスでも、1週間連続で記録ができるようなパッチ型のホルター心電図もあるので、そういうものを繰り返しながら、再発がないことを確認する。
あとは、患者さんが定期的に血圧を測定すれば、脈拍数は出ます。ピカピカ光るようなもので規則正しいか、規則正しくないかが出るので、そういうものを判断材料にしています。
池脇
確かに私はスマートウォッチで自分の心電図を記録したことがありますが、より精度が高い、正確な心房細動かどうかというのではなく、洞調律か心房細動かの鑑別でしたら、脈拍、心拍数の違いなどでもだいたい鑑別できますね。
あとは、ホルター心電図は、以前は24時間で、そこでは何も出ないこともありましたが、今はもうだいぶ長い期間できるので、信憑性、信頼性はけっこう高くなっています。
谷口
管理できる患者さんは、だいたい自分の脈はこのくらいで、脈が乱れると普段60~70くらいなのが80~90、100近くの脈拍になったりするなど自身で把握されている患者さんもいらっしゃるので指標にさせていただいています。
ただ、全く管理できないというか、症状がなくて管理できない。症状がないので、脈が止まっていても自覚できず、デバイスもなくて血圧の測定もできないような患者さんは、心房細動が起こっているか起こっていないかがわからないので、基本的には継続しているという状況です。
池脇
要するに、自分の心房細動に関してきちんと理解をして管理ができる方は、先生としてもやめようかという流れになるけれども、なかなか自分ではわからない。例えば高齢者の場合などは、なかなか難しいでしょうかね。
谷口
そうですね。高齢の方はやはり、無頓着な方もけっこういらっしゃるので、そういう方は基本、続けていますが、それは個人個人で違います。かなり高齢の方でも朝晩、血圧を測っているとか、スマートウォッチなどでの測定ができなくても、血圧測定で脈拍を管理されている方もいらっしゃいます。そうすれば少なくとも持続するような心房細動があるかないかはある程度把握できるので、血圧手帳などを患者さんに見せていただいて、指標にしています。
池脇
アブレーションの後、経過良好の患者さんをたくさん経験されていると思いますが、DOACをやめるかどうかは先生のほうから切り出すのでしょうか。あるいは患者さんのほうからか、どちらが多いのですか。
谷口
基本的には、医師から切り出しています。患者さんはやはり不安も多少あるでしょうし、症候性の方は、心房細動が起こったか起こっていないかが比較的自分ではっきりわかります。そういう方は最初から、術後3カ月という状況で、発作が出ないという条件で中止しています。
持続性や半年くらい症状がない方には、ある程度、外来の診療をしているうえで、症状が起こっていないけれども、万が一、再発した場合は再開することもありますが、いったん中止にしてみましょうかというかたちで提案しています。
池脇
もし私が先生の立場だったら、おそらく心房細動は起こっていない、でも絶対ゼロじゃないから、もし薬をやめたときに運悪く脳梗塞になるかもしれないけど、それは了解してください、みたいなことを言ってしまいそうですが、どうでしょうか。
谷口
そうですね。ただ、ある程度管理されている方はけっこうしっかりしているんです。管理できる方に限ってそういう話をしています。起こっているか起こっていないかにほとんど頓着しないし、普段の脈も測らないしという方は、基本的に続けています。
池脇
やはりしっかり管理できる患者さんに限ってという条件がありそうですね。
以前でしたら、起こっていないということを証明するのはなかなか難しかったですけれども、今はスマートフォンは比較的手に入りやすくなりました。患者さん自身がそういうことを目指している場合には、そういうデバイスの購入を紹介することもありますか。
谷口
気にされている方には「こういうので管理できますよ」などとお伝えしています。あとは、そういう意識がある程度ある方は、最初からしている方が今はけっこう多いですね。していない方は外来で1週間連続記録できるようなホルター心電図を間に挟みながらチェックしていく感じになります。
池脇
先生の見解ですと、以前は難しかったけれども、今はいろいろなデバイスや長時間のホルター心電図を使いながら、あるいは前提として患者さんがしっかり自分で管理できる場合には、薬をやめることも可能だということですね。
谷口
そうですね。
池脇
アブレーションも始まってから、今、いろいろなところで普及してきて、アブレーションの手技もクライオアブレーションという新しいものが出てきました。最近は症候性の発作性の心房細動のファーストチョイスにという話もありますね。
谷口
そうですね。昨年のガイドラインの改訂で、クライオアブレーションと抗不整脈薬で、アブレーションのほうが持続化しづらい、成績もいいということから、第一選択としてアブレーションが入ってくるようになりました。今の段階ではクライオアブレーションといって、肺静脈にバルーンを押し当てて行う手技です。それに限ってですが、今まで行っていたカテーテルのアブレーションなどほかのデバイスも、クライオアブレーションと同等の成績が得られているので、基本的にアブレーションファーストで行ってもいいのではないかと思います。
池脇
エビデンスを重視するとクライオアブレーションだけれども、基本、専門医からすると、従来のものとクライオアブレーションとで、特に違いはないのですか。
谷口
成績は変わりありません。
池脇
年齢によるのですが、Pafの若い患者さんの場合は最初にアブレーションはどうかなと私もいつも思っています。今はガイドライン上でそういう流れになってきたということですね。
谷口
逆に若い人、経歴が短い人はアブレーションにしたほうが再発は少ないので、発作性の場合は、積極的にやってもいいのではないかと思います。
池脇
少し話が飛びますが、高齢者の心房細動もPafなのか、Cafなのか、あるいは心不全が合併しているのかいろいろなケースがありますが、最高齢のアブレーションの患者さんは何歳くらいの方でしたか。
谷口
心房細動に関していうと、私の場合は87歳が最高齢です。
池脇
80代でも、症例によってはアブレーションなのでしょうか。
谷口
合併症という面ではそんなに変わりません。高齢者であっても、歩いて外来に来られる方、話を理解できる方であれば、行ってもいいのではないかと個人的には思っています。
池脇
先ほどの患者さんの状況と同じような感じがしました。自分自身をきちっと管理できる方に関しては、あまり年齢で排除しないということですね。ありがとうございました。