ドクターサロン

 医師として患者さんに「休息」を勧める場面は数多くありますが、その英語表現となると意外と知らない方も多いのではないでしょうか?
 まずは「休暇」に関する英語表現を確認していきましょう。
 「休暇」としてholidayという単語を思いつくと思いますが、この単語は英国と米国では意味が異なります。英国では「休暇」という意味で使われますので、“I’m on holiday.”と言えば「休暇中です」や「(休暇を取って)旅行中です」という意味になります。しかしこのholidayは米国では「(感謝祭やクリスマスなどの公的な)祝日」という意味になります。米国では「休暇中です」と表現したい場合、“I’m on vacation.”と表現します(このvacationという単語は英国ではあまり使われません)。またon holidayもon vacationも「休んでいる状態」というイメージですので、「勤務中です」を表す“I’m on duty.”や「待機中です」を表す“I’m on call.”などと同様に、on a holidayやon a vacationのように冠詞を伴うことはありません。
 これに対して「勤務や学校からの1日単位の休み」をday offと表現します。ですから「体調が悪くて昨日休みました」は“I took a day off yesterday because I wasn’t feeling well.”のように、そして「今週はお休みありますか?」は“Do you have any days off this week?”のように表現します。
 day offが任意で取れる休みであるのに対し、「制度としての休暇」のことをleaveと表現します。「病欠」にはsick leavemedical leaveという表現が使われますが、前者には「軽症の病気や体調不良による短期の病欠」というイメージが、そして後者には「身体や精神の不調によるやや長期の病欠」というイメージがあります。このほかにもmaternal/paternal/parental leave産休」やannual leave年次有給休暇」、そしてpaid leave有給休暇」などもよく使われる表現です。「忌引き」としては「愛する人との死別に伴う休暇」という意味でbereavement leaveという表現が使われますが、家族の危篤などの際には「家族の重病・事故・死去などの深刻な私的事情全般に対する思いやりとしての休暇」という意味でcompassionate leaveという表現が使われます。
 次に「休息」に関する英語表現を見ていきましょう。
 「休む」と聞いて多くの日本人がhave a breakという表現を思いつくと思いますが、これは「(コーヒーブレイクなどの)小休止を取る」という意味ですので、患者さんに「今週末はしっかり休んでください」と表現したい場合には“Please rest up this weekend.”のようにrest upという表現を使いましょう。rest単独には「休む」という意味がありますが、rest upには「休む」+「回復する」という意味があります。ですから「しっかり休む=休んで回復する」という場合には、restよりもrest upのほうが適切なのです。
 このほかにもchill out気を抜いてくつろぐ」やkick back脚を伸ばしてリラックスする」などを使って“Try to chill out at home this evening.”「今晩はご自宅でゆっくりしてください」や“This weekend, just kick back and relax.”「今週末は何もせずにのんびりしてください」のような表現も便利です。また「巻かれたものをほどく」というイメージのunwindという動詞を使った“Do something that helps you unwind.”「緊張をほぐすようなことをしてください」のような表現も、覚えておくと便利です。
 「自分のための時間」のことを英語ではmy timeではなく、me timeと表現します。ですから「毎日少しは自分のための時間を持ってください」と表現する際には“Make sure to have some me time each day.”のように表現します。
 また十分な休息のためには「日常を離れる」ことも重要です。
 「日常のストレスから離れてリフレッシュする」ということをget away from it allと表現します。ですから「しばらくすべてから離れて休むのもいいかもしれません」と言いたい場合には“You might need to get away from it all for a while.”のように表現できます。
 「(気分転換に)住んでいる場所を離れる」という意味でget out of townという表現も使われます。ですから「日帰りでどこかに出かけると気分が変わるかもしれません」と言いたい場合には、“Getting out of town for a day can be refreshing.”のように表現しましょう。
 「デジタル機器やネットから離れる」ことをunplugと表現します。「仕事の後にデジタル機器から離れて頭を休める時間を持つと楽になると思いますよ」と言いたい場合には、“You might find it helpful to unplug after work and give your mind some time to rest.”などと表現しましょう。このunplugからさらに進んで「文明から離れる」ことをget off the gridと表現します。このgridは「電力網や通信網などの社会インフラ」を意味します。ただget off the gridには「スマホやネットを断つ」という意味もあるので、「可能なら、スマホやネットから離れて1日リフレッシュしてみてください」は“If possible, get off the grid for a day and recharge.”のように表現できます。ちなみに「リフレッシュする」を表現する際に、refreshを使うとrefresh oneselfのように目的語が必要になりますが、自動詞のrechargeに目的語は必要ありません。
 そして休息には「他者との交流」も重要になります。
 「(親しい人と)気軽に過ごす」ということを日本語では「遊ぶ」とも表現しますが、英語ではこれをhang outと表現します。「体調がよければ、仲の良いご友人と気軽に過ごすのもいいですね」などは“You can hang out with a close friend if you feel better.”のように表現しましょう。ただこの場合のhangの過去形はhangedではなく、hungとなります。過去形がhangedになるのは「絞首刑にする」という意味のhangだけですのでご注意を。
 「(誰かと一緒に)穏やかな時間を過ごす」ということをwind down withと表現します。ですから「最近、ご家族やご友人と一緒にゆっくりする時間は取れましたか?」と聞きたい場合には“Have you had a chance to wind down with a friend or family member recently?”のように表現しましょう。ただこの場合のwindは「ィンド」のような発音になりますので注意してください。
 このほかにもcatch up with近況報告をし合う」やgrab a bite軽食をともにする」なども便利な表現です。これらを使って“Catching up with someone might lift your mood.”「久しぶりに誰かと会って話すのも気分転換になりますよ」や、“How about grabbing a bite with someone you trust?”「気の置けない人と軽く食事などしてはいかがですか?」という声がけも使ってみるようにしてください。
 最後に診察終了時に使う「お大事に」に相当する英語表現を見ていきましょう。
 日本では“Take care of yourself.”や“Take care.”という表現がよく知られています。どちらも英語圏でも使われている自然な表現ですが、前者のほうが後者よりもややフォーマルな印象があります。
 また“Hope you feel better soon.”や、これを省略した“Feel better soon.”などもよく使われます。そして「ゆっくり休んでくださいね」という意味で“Get some rest.”や“Get plenty of rest.”などが使われます。このほかにも「無理をしないでくださいね」という意味で”Take it easy.”や“Don't push yourself.”などが使われます。
 診察終了時には、これらをうまく組み合わせて下記のような表現を使ってみましょう。
 ”That’s all for today. Please get some rest and take it easy.”
 ”You’ve been through a lot. Make sure to take care of yourself and get plenty of rest.”
 ”Take care. Hope you feel better soon, and don't push yourself.”
 こうすることでこれまでの“Take care of yourself.”や“Take care.”だけの表現に、より温かみが加わることでしょう。ぜひ皆さんも試してみてくださいね。