「男性型脱毛症」として定着しつつあるAGAという表現は、意外にも英語圏ではほとんど使われていません。ご存じの方も多いようにAGAはandrogenetic alopeciaの「略語」として日本では使われているのですが、英語圏ではAGAという略語はほとんど使われず、そのままandrogenetic alopeciaとして表現されるか、male pattern baldnessやmale pattern hair lossのように表現されます。
このalopeciaは「脱毛症」という意味の医学英語ですが、「アラピーシャ」 のような発音になります。日本では「円形脱毛症」と呼ばれている病態の英語表現はalopecia areataとなります。このareataは「アリアータ」や「アリエイタ」のような発音で、その意味は「部分的」や「斑状」となります。つまり英語では「円形」ではなく「斑状」が強調された呼び名になっており、一般的にはpatchy hair lossやspot baldnessのように表現されます。
このように「髪が抜ける」状態はhair lossと表現されますが、髪が細くなって全体的に少なくなる状態である「髪が薄くなる」はhair thinningと表現されます。
脱毛した状態の形容詞がbaldであり、名詞がbaldnessなのですが、「頭髪を剃った状態」は何と呼ぶのでしょう? 日本語では「スキンヘッド」という表現が使われますが、英語のskinheadには「極右で人種差別的な考えを持つ過激な人」というイメージがあります。英語で「頭髪を剃った状態」はshaved headとなり、“He has a shaved head.”のように表現されます。ちなみにバリカンで刈り上げた「坊主頭」は、バリカンの音にちなんでbuzz cutと呼ばれます。また日本で「スポーツ刈り」と呼ばれる髪型は、英語ではcrew cutと呼ばれます。
髪の下の部分だけ短く刈り上げた「ツーブロック」はundercutと呼ばれ、「刈り上げた部分」はfadeと呼ばれます。刈り上げた部分が比較的下にある状態はlow fadeと呼ばれ、こめかみ部分まで高く刈り上げた状態はhigh fadeと呼ばれます。日本語では「七三分け」のように割合まで重視される髪型は、英語では単純にside partと呼ばれます。ただ「真ん中分け」は英語でもそのままmiddle partと呼ばれます。
日本人に意外と知られていないのが「前髪」の英語表現です。米国ではbangsと複数形で表現されますが、英国ではfringeと単数形で表現されます。「三つ編み」も米国と英国では表現が異なり、米国ではbraidと、そして英国ではplaitと表現されます。「ポニーテール」は英語でもそのままponytailとなりますが、「ツインテール」の英語はpigtailsとなります。2つあるので複数形になりますのでご注意を。
これらはすべて「頭髪」 scalp hairに関する表現ですが、「体毛」であるhairには様々な種類があります。顔に生える毛はfacial hairですが、「顔の下半分に生えるひげ」はbeardとなります。特に「あごからヤギの毛のように生えるひげ」はgoateeと呼ばれます。そして口の上に生える「口ひげ」は、米国ではmustacheと、そして英国ではmoustacheとなります。そしてこのmoustacheと11月のNovemberを掛け合わせたMovemberという造語もあります。これは11月に男性がmoustacheを伸ばすことで、prostate cancerやtesticular cancerなどの男性の健康問題への意識を高めるという国際的な健康啓発活動を指す表現です。また「無精ひげ」や「もみあげ」という表現も日本ではあまり知られていませんが、前者にはstubbleという不可算名詞が、後者にはsideburnsという複数形が使われます。
顔に生える「うぶ毛」は英語ではどのように表現するのでしょうか? うぶ毛のように「柔らかくて細かい毛」を英語ではfuzzと表現します。ここから顔に生えているうぶ毛はfacial fuzzや「桃の表面のうぶ毛」のイメージでpeach fuzzなどと呼ばれます。
ほかの体毛の表現として「胸毛」や「腕毛」はそのままchest hairやarm hairとなりますが、「すね毛」はshin hairとはならず、より一般的にleg hairとなります。「脇」は「腕の下の窪み」という意味でarmpitとなります。ここから「脇毛」はarmpit hairとなりますが、underarm hairとも表現されます。「恥毛」は日本では「アンダーヘア」とも表現されますが、これをそのままunder hairと表現しても英語では通じません。英語では「恥部の体毛」という意味でpubic hairとなります。
「多毛症」の医学英語はhirsutismとなりますが、これを一般英語で説明する際にはabnormally hairyのように表現するのではなく、excessive hair growthのように表現するようにしてください。
「脱毛」hair removalは大きくdepilationとepilationに分かれます。depilationとは「 de-(取り去る)+ pilus(毛)」という語源の表現で、「表面的に毛を取り去る」という意味になります。具体的には「剃毛」 shavingなどがこれに当たります。これに対してepilationとは「 ex-/e-(外へ)+pilus(毛)」という語源の表現で、「毛根から毛を引き抜く」という意味になります。具体的には「毛抜き」 tweezing/ pluckingや「ワックス脱毛」 waxing、「糸脱毛」threadingのほか、「レーザー脱毛」laser hair removalなどがこれに当たります。
英語のhairは「細かさ」「恐怖」「乱れ」「リラックス」「煩わしさ」といった感覚を象徴する存在であり、英語にはhairを使った慣用表現が数多く存在します。
まずご紹介したいのはsplit hairsという表現です。これは「髪の毛を縦に割る」というイメージの表現で、「意味のないほど細かいことにこだわる」という意味になります。臨床の場面では“I don’t want to split hairs, but this blood pressure reading is just a little high.”のように、「細かいことを言いたくはないのですが」と言いたい場面で使うことができます。
恐怖や強烈な驚きの場面ではmake one’s hair stand on endという言い回しが使われます。髪の毛が逆立つ感覚をそのまま表現したもので、日本語の「ぞっとする」に相当します。“Hearing about that traffic accident really made my hair stand on end.”のように使うことができます。
整然とした様子を表す際にはnot a hair out of placeという表現が便利です。髪の毛一本たりとも乱れていないという直訳から転じて、「服装や身なりがきちんとしている」状態の表現として使われます。“You came to the clinic perfectly dressed, not a hair out of place.”という表現を覚えておきましょう。
「緊張から解き放たれてくつろぐ」様子を表す際にはlet one’s hair downが使われます。中世ヨーロッパでは、女性は公の場では髪を結い上げ、家に帰ると髪を下ろしてリラックスしていました。外来の場面でも“You’ve been under a lot of stress. Try to let your hair down this weekend.”のように表現することが可能です。
日本語の「危機一髪」に近い表現として、英語でもby a hairあるいはby a hair’s breadthがあります。髪の毛のbreadth=幅ほどのわずかな差を指すもので、医学的な検査値がぎりぎりで基準を満たしたときなど、臨床の場面でも比喩的に用いることができます。
悩みや焦りが募るときにはtear your hair outという表現が使えます。髪をかきむしるような仕草に由来し、日本語の「頭を抱える」とよく似た表現です。
get in someone’s hairは直訳すると「髪に異物が入り込む」という意味ですが、英語では「髪に異物が入り込むと煩わしい感覚が引き起こされる」というイメージがあります。ここから「人の邪魔をする」や「うるさく付きまとう」という意味で使われます。具体的には“I know the paperwork can get in your hair, but please fill out this form today.”のように使うことができます。どれも日常の診療の中で使える表現ですので、場面に応じて使ってみてくださいね。
このalopeciaは「脱毛症」という意味の医学英語ですが、「アラピーシャ」 のような発音になります。日本では「円形脱毛症」と呼ばれている病態の英語表現はalopecia areataとなります。このareataは「アリアータ」や「アリエイタ」のような発音で、その意味は「部分的」や「斑状」となります。つまり英語では「円形」ではなく「斑状」が強調された呼び名になっており、一般的にはpatchy hair lossやspot baldnessのように表現されます。
このように「髪が抜ける」状態はhair lossと表現されますが、髪が細くなって全体的に少なくなる状態である「髪が薄くなる」はhair thinningと表現されます。
脱毛した状態の形容詞がbaldであり、名詞がbaldnessなのですが、「頭髪を剃った状態」は何と呼ぶのでしょう? 日本語では「スキンヘッド」という表現が使われますが、英語のskinheadには「極右で人種差別的な考えを持つ過激な人」というイメージがあります。英語で「頭髪を剃った状態」はshaved headとなり、“He has a shaved head.”のように表現されます。ちなみにバリカンで刈り上げた「坊主頭」は、バリカンの音にちなんでbuzz cutと呼ばれます。また日本で「スポーツ刈り」と呼ばれる髪型は、英語ではcrew cutと呼ばれます。
髪の下の部分だけ短く刈り上げた「ツーブロック」はundercutと呼ばれ、「刈り上げた部分」はfadeと呼ばれます。刈り上げた部分が比較的下にある状態はlow fadeと呼ばれ、こめかみ部分まで高く刈り上げた状態はhigh fadeと呼ばれます。日本語では「七三分け」のように割合まで重視される髪型は、英語では単純にside partと呼ばれます。ただ「真ん中分け」は英語でもそのままmiddle partと呼ばれます。
日本人に意外と知られていないのが「前髪」の英語表現です。米国ではbangsと複数形で表現されますが、英国ではfringeと単数形で表現されます。「三つ編み」も米国と英国では表現が異なり、米国ではbraidと、そして英国ではplaitと表現されます。「ポニーテール」は英語でもそのままponytailとなりますが、「ツインテール」の英語はpigtailsとなります。2つあるので複数形になりますのでご注意を。
これらはすべて「頭髪」 scalp hairに関する表現ですが、「体毛」であるhairには様々な種類があります。顔に生える毛はfacial hairですが、「顔の下半分に生えるひげ」はbeardとなります。特に「あごからヤギの毛のように生えるひげ」はgoateeと呼ばれます。そして口の上に生える「口ひげ」は、米国ではmustacheと、そして英国ではmoustacheとなります。そしてこのmoustacheと11月のNovemberを掛け合わせたMovemberという造語もあります。これは11月に男性がmoustacheを伸ばすことで、prostate cancerやtesticular cancerなどの男性の健康問題への意識を高めるという国際的な健康啓発活動を指す表現です。また「無精ひげ」や「もみあげ」という表現も日本ではあまり知られていませんが、前者にはstubbleという不可算名詞が、後者にはsideburnsという複数形が使われます。
顔に生える「うぶ毛」は英語ではどのように表現するのでしょうか? うぶ毛のように「柔らかくて細かい毛」を英語ではfuzzと表現します。ここから顔に生えているうぶ毛はfacial fuzzや「桃の表面のうぶ毛」のイメージでpeach fuzzなどと呼ばれます。
ほかの体毛の表現として「胸毛」や「腕毛」はそのままchest hairやarm hairとなりますが、「すね毛」はshin hairとはならず、より一般的にleg hairとなります。「脇」は「腕の下の窪み」という意味でarmpitとなります。ここから「脇毛」はarmpit hairとなりますが、underarm hairとも表現されます。「恥毛」は日本では「アンダーヘア」とも表現されますが、これをそのままunder hairと表現しても英語では通じません。英語では「恥部の体毛」という意味でpubic hairとなります。
「多毛症」の医学英語はhirsutismとなりますが、これを一般英語で説明する際にはabnormally hairyのように表現するのではなく、excessive hair growthのように表現するようにしてください。
「脱毛」hair removalは大きくdepilationとepilationに分かれます。depilationとは「 de-(取り去る)+ pilus(毛)」という語源の表現で、「表面的に毛を取り去る」という意味になります。具体的には「剃毛」 shavingなどがこれに当たります。これに対してepilationとは「 ex-/e-(外へ)+pilus(毛)」という語源の表現で、「毛根から毛を引き抜く」という意味になります。具体的には「毛抜き」 tweezing/ pluckingや「ワックス脱毛」 waxing、「糸脱毛」threadingのほか、「レーザー脱毛」laser hair removalなどがこれに当たります。
英語のhairは「細かさ」「恐怖」「乱れ」「リラックス」「煩わしさ」といった感覚を象徴する存在であり、英語にはhairを使った慣用表現が数多く存在します。
まずご紹介したいのはsplit hairsという表現です。これは「髪の毛を縦に割る」というイメージの表現で、「意味のないほど細かいことにこだわる」という意味になります。臨床の場面では“I don’t want to split hairs, but this blood pressure reading is just a little high.”のように、「細かいことを言いたくはないのですが」と言いたい場面で使うことができます。
恐怖や強烈な驚きの場面ではmake one’s hair stand on endという言い回しが使われます。髪の毛が逆立つ感覚をそのまま表現したもので、日本語の「ぞっとする」に相当します。“Hearing about that traffic accident really made my hair stand on end.”のように使うことができます。
整然とした様子を表す際にはnot a hair out of placeという表現が便利です。髪の毛一本たりとも乱れていないという直訳から転じて、「服装や身なりがきちんとしている」状態の表現として使われます。“You came to the clinic perfectly dressed, not a hair out of place.”という表現を覚えておきましょう。
「緊張から解き放たれてくつろぐ」様子を表す際にはlet one’s hair downが使われます。中世ヨーロッパでは、女性は公の場では髪を結い上げ、家に帰ると髪を下ろしてリラックスしていました。外来の場面でも“You’ve been under a lot of stress. Try to let your hair down this weekend.”のように表現することが可能です。
日本語の「危機一髪」に近い表現として、英語でもby a hairあるいはby a hair’s breadthがあります。髪の毛のbreadth=幅ほどのわずかな差を指すもので、医学的な検査値がぎりぎりで基準を満たしたときなど、臨床の場面でも比喩的に用いることができます。
悩みや焦りが募るときにはtear your hair outという表現が使えます。髪をかきむしるような仕草に由来し、日本語の「頭を抱える」とよく似た表現です。
get in someone’s hairは直訳すると「髪に異物が入り込む」という意味ですが、英語では「髪に異物が入り込むと煩わしい感覚が引き起こされる」というイメージがあります。ここから「人の邪魔をする」や「うるさく付きまとう」という意味で使われます。具体的には“I know the paperwork can get in your hair, but please fill out this form today.”のように使うことができます。どれも日常の診療の中で使える表現ですので、場面に応じて使ってみてくださいね。