ドクターサロン

山内

非専門医にとって、膠原病関連自己抗体マーカーは非常に種類が多くて複雑で、当然、保険やコストの問題もあり、どこまでスクリーニング検査をしたらいいか、非常に迷うところなので、改めてうかがいたいと思います。

まず通常、非専門医がこの手のものを測ろうとするときには、大きく分けて2つの状態、ひとつは不明熱、もうひとつは関節痛があるときに測ると思います。順番にこの辺りから教えてください。まず不明熱ですが、これは当然、CRPや血沈といった炎症マーカーが陽性という前提ですが、数多くの自己抗体の中から、まずどれを選んで測定したらよいでしょうか。

桑名

まず、自己抗体検査は診断に有用なツールであることは間違いありませんが、一方で、健康な方でも一定割合陽性になる、あるいは検査の方法によって偽陰性、偽陽性が起こりうるという前提で結果を解釈することが重要です。そのため、ある症状から特定の疾患を疑い、それらを診断、除外する際の補助ツールと理解すべきです。

発熱が持続して、感染症等の兆候があまり明確でない不明熱の場合に、膠原病あるいはその類似疾患の鑑別が上がります。不明熱の原因となる代表的疾患として、全身性エリテマトーデス(SLE)、成人発症スチル病、血管炎が挙げられます。

これら疾患の鑑別において、抗核抗体検査が役立ちます。現状の国際的な分類基準では、抗核抗体80倍以上陽性の場合にSLEを疑うという規定があります。

山内

確認ですが、SLEを診断病名とする際には、抗核抗体が80倍以上ないといけないのですか。

桑名

はい。SLE患者のほぼ100%で80倍以上であり、多くの疫学研究で示されています。

山内

抗核抗体は必須の項目ということですね。

桑名

必須ですね。一方、例えば成人発症スチル病は、抗核抗体陰性が診断根拠になります。その意味で、抗核抗体検査によって、その2つの病気は区別が可能になります。

山内

次に、抗核抗体80倍以上のケースはできれば専門医に紹介したほうがいいというお考えでしょうか。

桑名

発熱が持続していて、多発関節炎や尿検査でタンパク尿が陽性、紅斑がある。このような組み合わせは高率にSLEを疑う兆候です。これらに加えて抗核抗体80倍以上で陽性であれば、すぐに専門医に紹介することが望ましいと思います。SLEではCRPが上昇しない場合があるので注意が必要です。

一方、発熱だけで、あまりほかの顕著な症状がないようなケースでは、一般医家が二次検査をするケースも多いと思います。その場合には、抗核抗体の抗体価と染色パターンから特異自己抗体の存在を推測してオーダーすることが推奨されています。

例えばSLEの場合、homogeneous(均質型)の場合には抗DNA抗体が陽性のケースが多いですし、speckled(斑紋型)の場合にはSm抗体、U1RNP抗体、SSA抗体、SSB抗体などが陽性のことが多く、検査を追加します。いずれかの検査が陽性の場合、SLEの確率が上がりますので、軽症であったとしても、専門施設に紹介するという流れをつくりやすいと思います。

山内

そういったものが陽性の場合には専門医で、もし陰性、偽陰性というレベルなら、経過観察でかまわないと考えてよいですか。

桑名

症状の程度次第だと思います。例えば、発熱でも39~40度が2週間続くようであれば、膠原病だけでなく悪性リンパ腫や感染症等の除外を含めて、専門施設での評価は必要だと思います。一方、37度台で全身状態が悪くない場合は、自然軽快するウイルス感染症などの可能性も十分あるので、経過を見たうえで判断することでかまわないと思います。

山内

膠原病のなかでも、熱発が主軸になるほかの膠原病はあまりないと考えてよいですか。

桑名

SLEの要素を持っている混合性結合組織病、皮膚筋炎あるいは血管炎症候群が発熱の原因となるケースもあります。これらの疾患では発熱以外の症状、例えば混合性結合組織病ではレイノー現象や手指腫脹などを伴いますので、それらの症状を勘案したうえで必要な検査を追加します。例えば血管炎を疑う場合は、抗好中球細胞質抗体(ANCA)を追加します。ANCAは抗核抗体ではないので、別個にオーダーする必要があります。

山内

今お話に出てきました混合性結合組織病は、我々にはなかなか理解が難しいところですが、RNP抗体を測る意義はあるのでしょうか。

桑名

複数の膠原病を併せ持つオーバーラップ症候群は、単独の膠原病を持つ例より臓器病変が重症で予後が悪いとされていました。その中で、複数の膠原病の症状を持ちながら、むしろ治療反応性が良く、生命予後が良い患者に抗U1RNP抗体が陽性になることから提案された疾患が、混合性結合組織病です。

そのため、複数の膠原病の症状を持つケースで、抗核抗体検査がspeckled(斑紋型)で高値陽性の場合は、抗U1RNP抗体を提出し、陽性であれば混合性結合組織病の可能性が高くなります。

山内

次に、関節痛の場合ですが、こちらはいかがでしょうか。

桑名

関節痛で受診する代表的疾患は関節リウマチです。このような例では、抗CCP抗体、リウマトイド因子(RF)を必ず提出していただきたいと思います。また、頻度は少ないですが、SLE等の膠原病も関節痛で受診する場合がありますので、抗核抗体も追加することが必要です。

山内

よくMMP-3というのを聞きますが、これは入らないのですか。

桑名

MMP-3は、自己抗体ではなく、増殖した関節滑膜から分泌される酵素です。診断よりも疾患の重症度、活動性を評価する指標として活用されます。例えば腎機能障害、ステロイドの投与によりMMP-3は上昇するので、判断が難しい場合があります。自己抗体の付加情報として役立つ場合、例えば自己抗体が陰性の関節リウマチなどがあります。

山内

診断上は外してもかまわないし、保険上の問題もあるかもしれないので、こちらのほうはそれで症状があればすぐ専門医ということでよいのですね。

桑名

はい。多発関節痛があって抗CCP抗体またはRFが陽性であれば専門医に紹介すべきです。関節リウマチにおける自己抗体の陽性率は7~8割ですが、興味深いことに、若年成人では陽性率が高く、高齢になるにしたがって陽性率は下がります。

65歳以上の高齢者においては、関節リウマチであっても抗CCP抗体もしくはRFの陽性率は50%程度しかありません。そのため、高齢者においては、自己抗体検査が陰性でも関節リウマチが否定できないことが注意点だと思います。

山内

それはなかなかたいへんな話になりますね。けっこうお年寄りは多いですよね。すると、これも例えば関節の変形があるかとか、そういった話になるのでしょうか。

桑名

関節が対称性に腫れることはひとつの根拠になりますが、変形性関節症を含めた非炎症性疾患との鑑別においては、CRPや赤沈が役立ちます。高齢者では、自己抗体陰性でも多発関節痛があって炎症反応が高値であれば、専門医へ紹介することが望ましいと思います。

山内

あと最後に一つ、シェーグレン病というものがありますが、これでは発熱はないと考えてよいですか。

桑名

シェーグレン病単独で発熱することは非常にまれです。

山内

一方で関節痛があるようですが、この場合のシェーグレン病といいますと、SSA、SSBは有名ですが、これもついでに測るのはかまわないでしょうか。

桑名

はい。抗SSB抗体は抗SSA抗体陽性の患者さんにのみ陽性になります。そのため、抗SSB抗体を測る意義は、抗SSA抗体が陽性、もしくはシェーグレン病と診断をされている患者さんに限定すべきです。一方、乾燥症状は明確でなくても、例えば関節痛や微熱など、膠原病を疑うけれども明確に診断できないケースにおいて、SSA抗体を測定する意義はあると思います。

山内

SSBのほうの意義というのは何なのでしょうか。

桑名

シェーグレン病の患者さんにおいて抗SSA抗体に加えて抗SSB抗体を持っている患者さんは乾燥症状が強く、間質性肺疾患や間質性腎炎などの腺外症状を伴いやすいことが報告されていますので、どちらかというと、診断よりも重症度の評価に有用な検査と考えられます。

山内

重症度を測るもの、あとは経過を追うのに適したもの。こういったものがそれぞれあると考えてよいのですね。

桑名

はい。自己抗体は、診断だけではなくて病形分類や予後予測、あるいは疾患活動性評価など、様々な活用法があります。それぞれの自己抗体で臨床的有用性は異なりますので、各自己抗体の有用性を理解したうえでオーダーすることが望ましいと思います。

山内

どうもありがとうございました。