ドクターサロン

池脇

関節リウマチ(RA)の逆紹介の質問です。

私の知識が古いのかもしれませんが、RAはなかなか手強くて、関節や骨の変形で治療が難渋するということが多かったと思います。寛解を維持できている患者さんを逆紹介するケースが増えてきたということは、RAの治療が以前に比べると進歩したということですね。

針谷

はい、そのとおりです。RAは、以前は不治の病といわれ、いったん発症すると体の機能がどんどん低下していく、たいへんな病気でした。しかし1990年代に、RAの治療にメトトレキサート(MTX)が日本でも使えるようになり、様相が変わりました。MTXの使用方法に専門医が習熟したことにより、MTXだけで寛解を達成する人も出てきました。

しかし残念ながらMTXだけでは寛解を達成できない患者さんもいます。それらの患者さんに対する治療薬として、2003年に最初の生物学的製剤が日本でも使用可能になりました。生物学的製剤はTNFやIL-6、あるいはT細胞表面機能分子などを標的としたタンパク製剤で、点滴あるいは皮下注射で投与する分子標的治療薬です。生物学的製剤の導入により、RAの疾患コントロールが飛躍的に改善しました。

さらに複数のヤヌスキナーゼ阻害薬(JAK阻害薬)が上市され、生物学的製剤の効果が不十分あるいは副作用のために使用できない患者さんの治療成績も上がってきました。最近では、RA患者さんの5~6割が寛解、7~8割が寛解または低疾患活動性を達成できる時代になりました。

池脇

RAは滑膜の炎症(滑膜炎)で、そこから軟骨、骨破壊へと進行していきます。先生が言われた治療のターゲットは滑膜の炎症を抑えるという理解でよいですか。

針谷

そのとおりです。関節の滑膜炎を制御することによって関節破壊の進行を抑え、それにより身体機能が悪化するのを防ぐという流れになります。

池脇

以前はプレドニゾロンが使われていましたが、MTXが一躍治療のファーストラインになったのは、従来と違う機序で効くということでしょうか。

針谷

MTXは、細胞内の葉酸代謝を抑制することでその効果を発揮します。MTXにグルタミン酸が1~5個程度付いたかたちで白血球中に蓄積されます。このMTXポリグルタメートが細胞内の複数の酵素の働きを抑え、抗炎症効果を発揮します。

池脇

だからMTXのときに葉酸を補充することにつながるのですが、葉酸を阻害することが結局、滑膜炎を抑え、リウマチの活動度を抑えることになる。MTXで治療を始めて、単剤での効果、あるいは寛解の程度はどのくらいなのでしょうか。

針谷

通常、MTXを1週間8㎎から開始し、2~4週間ごとに10㎎、12㎎と増量します。MTXの至適用量は、体重を4で割った値ですので、例えば60㎏の人なら14~15㎎、50㎏の人なら10~12㎎となります。

治療を始めて3カ月で最初の効果判定を行います。実際の臨床では、開始後2カ月ごろから関節の腫れや痛みが改善し、治療効果がピークに達するのがだいたい開始後3~4カ月になります。

池脇

ある程度量を増やしていかないと、効果がなかなか出ない薬でもあるのですね。

針谷

そうですね。効果は用量依存性です。

池脇

単剤で適量までドーズを増やして、効果がある、あるいは寛解というのは、どのくらいで達成できるのですか。

針谷

ある程度の効果が見られる患者割合は60~70%です。寛解を達成する割合は、20~30%です。グルココルチコイドやほかの経口抗リウマチ薬を上手に併用すると寛解達成割合が40%近くになるとも報告されています。

池脇

でも、それまでの薬に比べると、良い数字であることは確かですね。

針谷

そのとおりです。MTXは関節の状態だけでなく、全身状態も改善します。

池脇

いわゆる治療の標語として、treat to target(T2T)がありますが、治療の見通しが立つようになったのですね。

針谷

そうですね。日本のRA診療ガイドラインにも、あるいは欧米のガイドラインにも、先生が今おっしゃったT2Tを使ってRAを治療することが明記されています。

池脇

逆紹介の前に、専門医のところに来院するリウマチの患者さんは難治性の方が多いですよね。そういうときは、MTXにいわゆるバイオ製剤を組み合わせることによって寛解までもっていくのでしょうか。先ほど寛解までもっていける割合は6割か7割ぐらいとおっしゃっていましたよね。

針谷

はい、寛解と低疾患活動性を合わせると7~8割になります。

池脇

そういう意味では、MTXの後に控える薬も非常に効果があるということですね。ただ、そういう症例はさすがに逆紹介というわけにはいかないですか。

針谷

そうですね。分子標的治療には専門的な知識が必要な点と、副作用管理のハードルが高いこともあり、一般医・家庭医に紹介するのは難しいと思います。MTXなどで安定している患者さんをご紹介する場合が多くなります。

池脇

質問は、逆紹介で寛解状態のリウマチの患者さんを診ている医師が具体的にどのような治療をしたらいいのかという質問です。基本的には紹介元の専門医が「こういうかたちで治療してください」ということを踏襲して治療していくと思いますが、先生方は注意点を含めてどう指示されるのですか。

針谷

例えばMTX単剤で治療している患者さんを紹介する場合には、少なくとも2カ月に1回は血液・尿検査を実施し、問診と身体診察を行うように依頼します。

血液・尿検査は、日本リウマチ学会が発刊している「メトトレキサート(MTX)使用と診療の手引き」という書籍に詳しく書かれていますが、血液検査によって、血液障害、肝機能障害を早期に発見することができます。また、MTXは腎排泄型の薬剤ですので、定期的なeGFRの確認も非常に重要です。

池脇

定期的にチェックをして、非専門医がどこまで関節の所見を取れるかはわかりませんが、そういうことも注意しながら、葉酸製剤はMTXを内服されるときに必ず補充するのですね。

針谷

基本的に、MTXを1週間に8㎎以上投与する場合には、葉酸を5~10㎎、週1回投与します。

池脇

しかも、MTXの内服と重複しないかたちで、飲んだ後しばらくしてから葉酸を補充するということですね。

針谷

はい。MTX投与の24~48時間後に葉酸を投与します。それによって副作用の頻度が下がることがわかっているからです。

池脇

MTXが免疫を抑制するということですと、感染症、肺炎のリスクは高くなります。予防投与ということでST合剤の投与は行われるものですか。

針谷

はい。ニューモシスチス肺炎(PCP)に対するスルファメトキサゾール・トリメトプリムによる予防投与は、生物学的製剤が導入された後から広く行われるようになりました。MTX単剤治療の場合でも、高齢、既存肺疾患、プレドニゾロン使用、糖尿病といったPCPのリスク因子を2つ以上持っている患者さんには、スルファメトキサゾール・トリメトプリム投与が推奨されています。

池脇

予防投与は少量でよいのでしょうか。

針谷

はい。これが非常に不思議なのですが、スルファメトキサゾール・トリメトプリム0.5錠を毎日、あるいは1錠を週に3日(例えば月水金)投与することで、PCPを予防できます。

池脇

少し話がずれるかもしませんが、肺の合併症としてMTXは間質性肺炎がありますが、頻度的には高くないのですか。

針谷

200~300人に1人ぐらいの頻度で発生するといわれています。頻度は低いものの、発現すると重症の間質性肺炎になる場合があるので、常に注意を怠ってはいけない副作用です。

池脇

そうしますと、私の思い込みかもしれませんが、逆紹介で、この後は紹介された医師が基本的には診ていくという印象を受けました。例えば半年あるいは1年に1回は紹介元へ患者さんに受診してもらい、そこで評価するという連携もあると思うのですが、どうでしょうか。

針谷

特に地方都市で、リウマチ専門医が不足している場合、一般医・家庭医に紹介するときなどはそういった方法が取られます。リウマチ専門医を半年から1年に1回受診していただき、関節および全身の状態を確認し、副作用をチェックして、また主治医にお返ししていくかたちです。この方法で病診連携をしている地方の基幹病院は多々あります。

池脇

MTXで必ず葉酸を補充するということですが、最近、いろいろな理由でサプリを摂っている方が多くて、葉酸を含んでいるサプリもけっこう多いようですが、その辺りは、必ずチェックをされるのですか。

針谷

そうですね。最初にMTXを処方するときに、患者さんには「葉酸がたくさん含まれているものを飲まないでくださいね」というお話をします。一番頻度が高いのは青汁ですね。青汁やサプリを服用する前に主治医に必ず相談していただく必要があります。

池脇

そこはチェックが必要ですね。一方で、葉酸を多く含む食品も幾つかありますが、これはそれほど気にしなくてよいと聞いています。指導しなくてもよいのですね。

針谷

そのとおりです。通常量の食品でMTXを阻害するだけの葉酸を摂るのは難しいので、そこは心配しなくてよいですよという話をしています。

池脇

RAについて逆紹介からどのようなかたちで医療連携をしていくかを教えていただきました。ありがとうございました。