山内
乳幼児の尿検査についての質問です。まず乳幼児に関してですが、出生時も尿の検査はあるのでしょうか。
小椋
基本的には出生時の検査は行っていないと思います。なかなか尿を採りづらいので、尿路感染を疑うなど特殊な状況でなければルーティンの検査は行っていません。
山内
そうすると、乳幼児検査は実質的に現在実施されている3歳児健診と考えてよいのですね。
小椋
はい。そうだと思います。
山内
3歳児検尿の目的からうかがいたいと思います。
小椋
3歳児検尿の一番の目的は先天性の腎疾患を見つけることです。小学生、中学生の学校検尿では腎炎を見つけることが主な目的になりますが、この段階でそのようなことはあまりありませんので、基本的には先天性の腎疾患を見つけるのが目的です。
山内
具体的にはどういうものが多いのでしょうか。
小椋
一番多いのは低形成腎・異形成腎といった、生まれつき腎臓のサイズが小さく生まれてくるものです。場合によっては片方の腎臓がない方もいますし、あとは組織学的に異形成で生まれてくるパターンもあります。それにより、腎機能が悪くなり生まれてくる方もいます。
山内
こういった方々は早期発見すると予後がだいぶ違うのでしょうか。
小椋
早期発見をして早期に介入し、計画的な治療が可能になります。その先にある透析や移植ということを考えると、急に具合が悪くなりバタバタするよりは、早めにわかって介入したほうが、腎不全になる時期も少し先延ばしにできる可能性はありますし、意義はあると思います。
山内
確かに、腎不全になる可能性があるとなると、ある程度早めにわかったほうがいいですね。
小椋
小児の場合は腹膜透析がメインになるので、手術をしておなかの中に管を入れ、透析を開始するのは、傷がくっつくまで時間が少しかかります。そういう意味では、計画的に準備ができて導入するほうが安心・安全ではないかと思います。
山内
ちなみに、このような本当に小さいお子さんでの腎臓の奇形や尿路系の形成不全のようなものがある方々の予後はいかがなのでしょうか。
小椋
腎臓以外の合併症がなければ透析を行い、その先にある移植を見据えることになりますので、基本的には予後は悪くないと思います。
山内
例えば腎臓が小さいという方は成長に伴って大きくなるものではないのですか。
小椋
体の成長に伴ってというのは、多少はあると思いますが、基本的には改善していくことは少ないと思います。
山内
健診などでそういった異常が検出される率のようなものはわかっているのでしょうか。
小椋
非常に限られた研究にはなりますが、先天性腎尿路異常、CAKUTと呼ばれるものの中の10%ぐらいが学校検尿で見つかるといわれています。学校検尿自体は何十万人という方が実施しているので、その中でCAKUTの方が見つかる率は非常に少ないとは思いますが、学校検尿の意義はあると思います。
山内
そういった異常のある方の10%ぐらいが健診、検尿でわかるということですね。
小椋
そうですね。これをきっかけにわかる方が、その程度いるということになります。
山内
ただ、全体の数としては非常に少ないですね。
小椋
そうですね。
山内
こういった健診で常につきまとうのが、どのぐらい実施する意味があるのかというところで、コストパフォーマンスの話も多少は出てくるかもしれません。
ここで出てくる通常の尿蛋白や尿潜血検査は確かに、コスト的には非常に安いと思いますが、本当にどの程度わかるのかという、そういった質問です。これはいかがでしょうか。
小椋
尿蛋白は偽陽性もかなりあるので、ワンポイントで判断するのはなかなか難しいことはあると思います。蛋白尿が何ポイントかを見て、少しずつ出ているという方の場合は、詳しい検査を実施してもらうのがいいと思います。
山内
質問は、偽陽性ということですが、例えばお子さんですから採尿の仕方が悪かったり、あるいは便等で汚染されたりしておかしなデータが出るという可能性はいかがでしょうか。
小椋
もちろん可能性としてはあると思いますが、3歳児検尿が3歳で設定されているのは、トイレトレーニングがある程度済んでいる方を前提に組まれているからなので、汚染はそんなに多くはないと思います。
山内
逆に偽陰性については、健診で見つからない先天奇形といったものもあるのでしょうか。
小椋
あります。蛋白尿、血尿が出ていない、あるいは検査で見つからないレベルの蛋白尿で見逃されてしまうことが学校検尿の弱点です。実際、低形成腎・異形成腎と呼ばれるものは薄い尿がたくさん出るので、蛋白尿が薄まって見つからないことはよく経験します。
山内
そちらの問題も多少あるのですね。
仮にこういったもので尿蛋白・潜血が異常に出た場合、次のステップとして何がよいのかという質問です。普通に考えるとエコーになりますか。
小椋
そうですね。もちろん血液検査で腎機能が明らかに悪いということであればわかりやすいと思いますが、腎臓のサイズが小さいことを発見するのは、エコーが一番侵襲の少ない検査です。学会で腎臓の年齢別のサイズは出ているので、それと比較して明らかに小さい場合は疑ってもよいと思います。
山内
ただ、小児科医すべてができるとも限らないと思いますから、慣れた医師がやられて、不慣れな医師は専門医に依頼するかたちになると考えてよいですか。
小椋
よいと思います。
山内
エコー以外に、例えば尿の沈渣やβ2マイクログロブリンなどいろいろなものがあると思いますが、いかがでしょうか。
小椋
尿沈渣はもちろん見ます。β2マイクログロブリンはけっこうすぐ分解されてしまいますし、あとは感冒で血中のβ2マイクログロブリンが高くなっているようなときは、それはそれで上がってしまいます。
なかなか、ワンポイントで重要視するという検査ではなく、継続的に見ていき、高値が続くときには疑うような感じで捉えています。
山内
糸球体腎炎のようなものはあまりない時期と考えてよいですね。
小椋
そうですね。糸球体腎炎はもう少し大きくなってからが多いです。
山内
すると、尿沈渣の意義もあまり大きくはない。ただ、赤血球かどうかぐらいはわかりますね。
小椋
否定の意味も込め、検査は一式出すようにしています。
山内
最後に、専門医へ紹介するときの目安というか、何か具体的な要件として先生から提案などありましたらお願いできますか。
小椋
もちろんエコーができればその所見は大きなものになると思いますが、すべての施設でエコーができるとは限りませんので、まず本人の症状がないかどうか。浮腫等がないかどうかは診ていただき、所見があれば、もちろんすぐ紹介いただきたいです。
ない場合は、尿検査を何ポイントか間を置いて実施していただき、そのうえで蛋白尿が続く場合です。高度でなくていいと思います。何カ月か見て、正常上限を少し超えるような蛋白尿がしばらく続くようなパターンであれば、それは紹介いただいてもいいのではないかと思います。
山内
続くということが一つのキーポイントですね。先ほどの話だと、直ちに危ない疾患はあまりないと考えてよいのですか。
小椋
まったくゼロかといわれると、何とも言えないところはありますが、基本的にはそういったことは少ないと思います。
山内
少なくとも1年ぐらいは時々検査して、尿の蛋白が持続的に出ているとか、その辺りを見守るのはありと考えてよいのですね。
小椋
ありだと思います。
山内
自治体などの定期検査を受けていればよいのでしょうかとの質問ですが、自治体の定期健診はあるのでしょうか。
小椋
3歳児検尿はおそらく決められた健診だと思いますが、それ以外に幼稚園や保育園などで定期的に実施されている検査はあるようです。そちらで見つかった方がかかりつけの病院に行く可能性は十分あるのではないかと思います。
山内
同じような対処ということですね。ありがとうございました。