ドクターサロン

池田

ピロリ菌の除菌で、一次除菌、二次除菌がうまくいかなかった患者さんの、三次除菌、四次除菌薬の組み合わせ、投与期間についての質問です。

最近では、中学校で、ピロリ菌に感染している子どもがいるかどうか調べています。それと成人になってから、あるいはある程度年齢が高い方も除菌の対象になるとうかがいました。年齢や対象による除菌の意味は変わってきているのでしょうか。

胃がんの予防という意味合いでは、できるだけ早く除菌したほうがよいというのが専門医としての共通の理解です。ただ、感染するのが6歳ぐらいで、最終的には12歳ぐらいまでに感染が成立するといわれており、中学生が一番よいタイミングとして、自治体によっては尿中ピロリ抗体でスクリーニングをしているところがあります。

ただ、健康保険上の問題で、除菌治療は基本的には成人にならないとできないということがあり、そこにギャップがありますね。できるだけ早いほうがよいのですが、保険診療で除菌するためには成人になるまで待たないといけません。

池田

ピロリ菌の除菌ガイドラインが最近改訂になったそうですが、どのような点がポイントなのでしょうか。

除菌に関して新たな薬が使えるようになりました。具体的には、ボノプラザンです。すべてのレジメンにおいてボノプラザンによる除菌率の向上がかなり見込まれてきています。

そういったエビデンスが積み重なってきていますので、最新の知識をアップデートするといったところがまず一つと、それ以外にも三次除菌や四次除菌、ペニシリンアレルギーや腎障害、肝障害、高齢者などいろいろな特殊状況で除菌することがありますので、現状に合うようなガイドラインを示したほうがよいのではないかということで2024年にアップデートされました。

池田

ボノプラザンで除菌率が上がるというのはどういったことなのでしょうか。

胃内のpHを抑えるのが酸分泌抑制薬の目的ですが、疾患によって必要なpHホールディングタイム、つまり胃の中でどれぐらい胃酸が抑えられているか、疾患によって必要な基準があります。

具体的に言いますと、ピロリ菌の場合はpHホールディングタイム5ですのでpH5以上に胃酸が抑えられているのが除菌治療に対して有利な環境であるとされていて、ボノプラザンは非常に胃酸を抑えるパワーが強い。さらに早く効くというところもポイントで、様々な除菌レジメンの除菌率が向上しています。

池田

まず一次除菌というのはどのような組み合わせになっているのでしょうか。

一次除菌の組み合わせは、まずアモキシシリン。保険診療で認められている用量としては、750㎎が1日2回ですね。その次にクラリスロマイシンで、保険診療では1日200㎎もしくは400㎎を1日2回となっています。

最後に、酸分泌抑制薬になりますが、現在はほとんどの場合、ボノプラザン20㎎を1日2回で出されます。これを1週間服用していただくのが一次除菌治療ということで、保険診療で決まっています。

池田

除菌が成功したというのはどういう方法で検査されるのでしょうか。

ピロリ菌の感染診断法というのは、現在、保険診療で認められているものが7種類あります。そのうち3種類が内視鏡を用いない検査法で、ピロリ菌の血中抗体、さらに便中ヘリコバクター・ピロリ抗原法、あとは尿素呼気試験となります。その中でも便中ヘリコバクター・ピロリ抗原、プラス尿素呼気試験の2種類が除菌後の感染診断法として認められています。

池田

次は二次除菌になりますが、これはどのような組み合わせになるのでしょうか。

二次除菌に関しては、保険診療で認められている方法は一次除菌と同様で、アモキシシリン750㎎が1日2回。そして、一次除菌ではクラリスロマイシンでしたが、これがメトロニダゾールに変わり、250㎎を1日2回となり、酸分泌抑制薬は一次除菌と同様にボノプラザン20㎎を1日2回で7日間ということになっています。

池田

メトロニダゾールというと、何か原虫の薬のようなイメージですね。

そうですね。先生がおっしゃるところが日本におけるメトロニダゾール耐性菌の少なさを物語っています。実は世界の中でも日本のピロリ菌感染症というのはかなりメトロニダゾールが効きやすい特徴があります。これは同じ東アジアでも中国や韓国は耐性菌が多いのですが、日本の場合にはかなり耐性率が低くなっています。それはやはり先生がおっしゃったような、あまり使われないような対象、疾患に対してしか日本では使われてこなかったということで、ピロリ菌に対しても耐性率が低いのではないかといわれています。

池田

日本特有の面もあるということですね。それでこれもまた効かなかったということで三次除菌、四次除菌になるのですが、この組み合わせはどのようになっているのでしょうか。

まず、三次除菌、四次除菌の前にお話ししないといけないことがあります。専門外来をやっていますと、三次除菌、四次除菌ということでよく紹介をいただくのですが、先ほども尿素呼気試験もしくは便中抗原が最も精度が高いという話をしました。実際は特に尿素呼気試験で問題になるのですが、我々の外来に来院される方の30~40%ぐらいの方は尿素呼気試験で偽陽性です。実際には除菌ができているが、尿素呼気試験で陽性になったということで除菌不成功と判定されて紹介されてくるケースがかなりの数あります。

ですから、二次除菌でうまくいかなかったので、まずは三次除菌をしようという話になりますが、我々の施設ではその前に内視鏡を行って必ず培養検査をします。培養検査はかなり特異度が高くて、100%になります。専用の培地を使って培養しますので、そちらで菌が生えなければ基本的には除菌治療はしません。さらに培養検査を行うことによって薬剤感受性試験で、どの薬が効きやすいのかを事前に診断することもできますので、培養検査、プラス薬剤感受性試験を専門施設で行っています。

さらには、胃液PCR法といったものが近年使えるようになってきましたので、培養検査だけでは生検をつまんだところにピロリ菌がいなければ生えないという、偽陰性のリスクがあり、培養法に胃液PCR法を組み合わせて、漏れがないように診断をすることを三次除菌の前にも実施するようにしています。

池田

一次除菌、二次除菌が駄目だと思ったら、専門医に行っていただくのは基本的なことですね。

実際にはそのように推奨していますが、大学病院や専門施設へのアクセスがよくない面もあり、除菌治療というと、やはり1週間の内服を処方することですので、三次除菌まではクリニックでやってから紹介というかたちが多いのが実情だと思います。ただ、やはりしっかりとした診断をすることが大事であるというのが専門医の意見です。

池田

それでも陽性になってしまったということになりますと、今度は三次除菌、四次除菌になってきますが、その際どのような薬を使われるのでしょうか。

現状、日本でよく行われる方法としては、三次除菌でも同様にアモキシシリンですね。アモキシシリンに対する耐性はできにくいので、必ず入れることになっています。用量については、施設によりけりです。

三次除菌以降は保険診療外になりますので、自費診療もしくは臨床試験で行われるのが一般的で、採用される薬剤の用量に施設間での差があるところです。文献や、我々の施設で行っているようなところですと、だいたい1日の量としては1,500~2,000㎎の間で処方されることが多いです。我々の施設では2,000㎎を採用していて、500㎎を1日4回で4回に分けるところがポイントです。

アモキシシリンのプラスアルファでシタフロキサシン100㎎を1日2回投与します。こちらは施設間の差はない薬です。プラス酸分泌抑制薬でボノプラザン20㎎を1日2回で、1週間治療になります。

四次除菌に関しても、実は同じです。メインで使う薬はアモキシシリンで、シタフロキサシンの位置を変えて、リファブチンを1日150㎎で、1日1回、そしてボノプラザン20㎎、1日2回、7日間で治療を行っています。

池田

逆にペニシリンアレルギーの方の場合はどうされるのでしょうか。

キードラッグであるペニシリンが使えないので、今までお話しした一次、二次、三次、四次で使ったペニシリン以外を組み合わせた薬ですね。

具体的には、特に除菌歴がない場合にはクラリスロマイシン、メトロニダゾール、プラス先ほどのボノプラザンを一次除菌や二次除菌と同じ用量で7日間投与が第一に行われる方法になります。

池田

例えばクラリスロマイシン、メトロニダゾール、ボノプラザンで効かない場合はまた次ですか。

はい、そうですね。そこでデータがあるのはメトロニダゾール、シタフロキサシン、あとはボノプラザンです。この組み合わせまでが一般的にデータがあるものになります。

池田

それでは、だいたいこの辺で除菌は済むという考えなのでしょうか。

そうですね。アレルギーがある薬剤として、抗生物質の中ではペニシリンが一番多いといわれています。除菌される方のポピュレーションの中ではある一定数いらっしゃるのですが、その中でも特に多いというわけではありません。文献によると、例えば2%ぐらいといわれていますので、その中で何回も何回も除菌に失敗される方は少ないのですが、そういった方には薬剤感受性試験ですね。胃カメラを使って菌株を分析して、効きそうなところから使っていくということです。

池田

ありがとうございました。