映画“Top Gun”の挿入歌として有名な“Take My Breath Away”ですが、これには「私の息を奪う」、つまり「息をのむほど心を奪われる」という意味があります。同じく有名なThe Policeによる名曲“Every Breath You Take”も甘いラブソングだと思われがちですが、実際には男性側の「監視」や「執着」を描いた暗い歌詞の曲です。どちらの曲名からも、英語のbreathにはtakeという動詞が使われるのがわかります。
ですから「胸部レントゲン写真」chest X-rayの撮影を行う際には、“Please take a deep breath. Hold it. Now relax.”のような声がけが定型表現として役に立ちます。この場合のbreathは可算名詞であり、take a breathには「息を吸う」以外にも「一息つく=落ち着く」という意味もあります。レントゲン撮影では「息を止めてください」と言うことも必要ですが、この場合にはhold your breathのようにholdを使います。ただhold your breathには「息を止めて待っている=期待して待つ」という意味にもなり、“Don’t hold your breath. He never shows up on time.”のようにも使われます。
breathにはtakeやhold以外にもcatch, waste, and saveのような動詞が使われます。catch one's breathには「息を整える」という意味があり、“Give me a second to catch my breath.”のように使われます。日本語には「無駄骨を折る」という表現がありますが、英語には同じような意味としてwaste one's breath「無駄な息をする」というものがあり、“You’re wasting your breath trying to convince him.”のように使われます。そしてその反対の意味がsave one's breathであり、“Save your breath. She’s already made up her mind.”のように使われます。
呼吸の問題と言えば「息切れ」が重要ですが、これを一般英語ではshortness of breathと言います。英語圏のカルテではこれをSOBのような略語を使って表現しますが、一般社会ではこのSOBは「ののしり言葉」swear words(またはcurse words)になりますので、患者さんの前では使わないように心がけましょう。
このshortness of breathの有無を確認する際には、“Do you have shortness of breath?”よりも“Are you feeling short of breath?”という表現のほうが一般的です。また「息が切れる」という動詞としてはget out of breathという表現があります。これを使って「労作時の息切れ」を尋ねたい場合、“Do you get out of breath when you exercise?”と言うと「しっかりとした運動をする場合」という意味になりますので、「日常動作を含めて身体に負荷がかかる場合」という意味の“Do you get out of breath when you exert yourself?”という表現のほうが、「労作時」という意味を正しく反映します。
「息切れ」がある場合、ほかにもbreathlessという形容詞が使われ、“I feel breathless.”のように表現されます。英語の曲にBreathlessというタイトルのものが複数ありますが、もちろんその意味は「息切れ」ではなく、「息をのむほどあなたに夢中になっている」というロマンティックなものになっています。
患者さんにshortness of breathがある場合、医学英語ではdyspnea「呼吸困難」と表現されます。そしてこのdyspneaは米国(特に東側)では「ディスニーア」のようにpを発音しませんが、それ以外の地域では「ディスプニーア」のようにpを弱く発音します。どちらが正しいというわけではないので、皆さんも自分なりにどちらかで発音するようにしてください。
「息を喘ぐ」という状態は、英語ではgasp for airのように表現されます。また運動などで「ハァハァと息をする」という状態は、pant for breathのように表現されます。これらを逆にしてgasp for breathやpant for airという表現は不自然になりますのでご注意を。
左心不全などで生じるorthopnea「起坐呼吸」ですが、この発音は「オーソプニーア」のようになります。この有無を尋ねる際には“Do you feel short of breath when you lie flat?”や“Do you need extra pillows to sleep?”のような質問をするとよいでしょう。
感染症の「百日咳」の医学英語はpertussisですが、この一般英語はwhooping coughです。このwhoopとは、咳発作のあとに息を吸い込む際に生じる高く鋭い吸気音を意味します。百日咳では激しい咳が連続した後、一気に息を吸い込もうとするため「ヒューッ」「ホーッ」と聞こえる独特の音が出ます。ですからpertussisはwhooping coughとも呼ばれるわけです。ただwhoopという動詞には「歓声を上げる」という意味もあり、“The crowd whooped with joy.”のようにも使われます。
成人のrespiratory rateの正常値は12-20/minですが、12未満のslow breathingをbradypnea「徐呼吸」と、そして20以上のfast(rapid)breathingをtachypnea「頻呼吸」と呼びます。前者は「ブラディプニーア」と、そして後者は「タキプニーア」のように発音します。これらは地域に関係なく、pもしっかりと発音されます。ただ呼吸が止まるapnea「無呼吸」の発音は「アプニーア」のようにアクセントが最初に来るので注意してください。
このtachypneaとよく混同されるのがhyperventilation「過呼吸」です。前者はrespiratory rateが増える状態を指すのに対し、後者は必要以上に換気してしまう状態を指します。速く呼吸していてもventilation自体が過剰でなければhyperventilationとは言えません。
呼吸の様式にも異常がありますが、その代表例がKussmaul breathingとCheyne-Stokes breathingです。Kussmaul breathingは、deep and fast breathing that stays steady and does not stopというもので、metabolic acidosis「代謝性アシドーシス」、特にdiabetic ketoacidosis(DKA)「糖尿病性ケトアシドーシス」で認められます。これに対してCheyne-Stokes breathingは、breathing that gets deeper, then shallower, with short pauses in betweenというもので、心不全や中枢神経系などでdelayed feedback in the respiratory control systemが生じる場合に認められます。
ではここからlung examination「肺の診察」における英語表現を見ていきましょう。
日本の診療ではあまり行われることがないtactile fremitusですが、これはどのような診察なのでしょうか。まず“I’m going to place my hands on your back.”と言って、患者さんの背中に両手を当てます。次に“Could you say ‘ninety-nine’ for me, please?”と声をかけ、低い声で“Ninety-nine, ninety-nine, ninety-nine...”と言い続けてもらいます。患者さんが“ninetynine”という低音を発すると、肺が振動します。この振動をfremitus「震盪」と呼び、それをtactile「触知」することで肺の状態を推察します。もしfremitusが強く触知されれば、肺の実質がsolidな状態になっていることが示唆されます。このように肺実質が硬化した状態をpulmonary consolidationと呼び、肺胞内に液体が貯留するtypical pneumonia「定型肺炎」や、left heart failure「左心不全」によるpulmonary edema「肺水腫」などでみられます。これに対してfremitusが弱くなれば、肺の外側に液体や空気が存在することが示唆され、pleural effusion「胸水」やpneumothorax「気胸」を考えます。そしてこのtactile fremitusは「発声によって生じる震盪」という意味から、vocal fremitus「声音震盪」とも呼ばれます。
tactile fremitusと同様に、日本ではあまり行われない身体診察としてegophonyがあります。これは“I’m going to listen to various points of your chest. Could you say ‘E’ for me, please?”と指示して行う聴診です。正常な肺であれば、患者さんが“E”と発声すると、聴診器を通してもそのまま“E”と聞こえます。しかし、肺実質が硬くなったpulmonary consolidationの状態では、この“E”が“A”のように聞こえるのが特徴です。動物で「エー」と鳴くのはgoat「ヤギ」であることから、この診察をgoat soundを意味するegophonyと呼び、日本語では「ヤギ音」と呼んでいます。
呼吸音を聴診するlung auscultationでは、患者さんに“I’m going to listen to various points of your chest. Could you breathe deeply through your mouth, please?”と説明し、口から大きく呼吸してもらいます。ただし小児科で小さな子どもに同じ指示をしても、うまく聴診できないことがあります。そのような場合には、“Let’s pretend there’s a birthday cake with lots of candles in front of you. Please blow out all the candles for me.”といった表現を使うと、自然に深呼吸をしてもらうことができます。
また聴診ではbronchial breathingという表現もありますが、皆さんはこの意味がわかりますか? trachea「気管」からbronchus / bronchi「気管支」にかけてのupper airway「上気道」では、inspiration / inhalation「吸気」 expiration / exhalation「呼気」の強さと長さがほぼ同じで、両者の間に短いgapが生じるbronchial breath soundsが聴取されます。これに対してbronchioles「細気管支」からalveoli「肺胞」にかけての領域では、吸気が呼気より強く長く、かつ吸気と呼気の間にgapが生じないvesicular breath soundsが聴取されます。本来vesicular breath soundsが聞こえるべき領域で、bronchial breath soundsが聴取された場合、それをbronchial breathingと呼び、肺実質の異常が示唆されます。
bronchial breath soundsが聞こえる領域で、low-pitched rattling soundsが聴取された場合、それはrhonchiと呼ばれます。これはbronchitis「気管支炎」などで、痰が気管支内に付着することで吸気・呼気の両方で聴取され、日本語では「いびき音」と呼ばれます。
これに対してvesicular breath soundsが聞こえる領域で、high-pitched whistling soundsが聴取された場合、それはwheezes「喘鳴」と呼ばれます。これはCOPDやasthmaのようなlower airway「下気道」の閉塞によって生じ、吸気・呼気の両方で聞こえる連続性の音です。
ここで注意したいのがこのwheezesと、一般英語で使われる動詞としてのwheezeの違いです。wheezesはあくまで聴診器を通して医師が聴取する所見名であるのに対し、動詞のwheezeは患者さん自身が“I’m wheezing.”「ゼーゼーしている」と自覚症状を表現する際に使われます。また聴診器を使わずに耳で聞こえる高音性の喘鳴はstridorと呼ばれ、epiglottitis「喉頭蓋炎」などupper airwayの閉塞によって生じるため、wheezesとは明確に区別されます。
そしてvesicular breath soundsが聞こえる領域ではcracklesと呼ばれる異常音が聴取されることがあります。これは肺胞由来の断続音で、かつてはrales(米国)やcrepitations(英国)とも呼ばれていましたが、現在の英語圏の臨床ではcracklesに統一されています。このcracklesのうち、吸気終末にfine popping soundsとして聞こえるものはfine cracklesと呼ばれ、pulmonary fibrosis「肺線維症」やatypical pneumonia「非定型肺炎」を示唆します。一方、吸気だけでなく呼気初期にもcoarse bubbling soundsが聴取される場合、それはcoarse cracklesと呼ばれ、left heart failure「左心不全」やtypical pneumonia「定型肺炎」を示唆します。日本ではralesを「ラ音」と呼び、rhonchiやwheezesを「連続性ラ音」と、fine cracklesやcoarse cracklesを「断続性ラ音」のように呼んでいましたが、今はこのような分類は推奨されていません。
最後に指摘しておきたいのがbreathとbreathingの違いです。前者は「一回の呼吸」というイメージで、後者はbreathe「呼吸する」という動詞から生じる「呼吸という動作」というイメージになります。ですから海外でも大人気の「鬼滅の刃」Demon Slayerの「蛇の呼吸」や「日の呼吸」の英語表現は、Serpent BreathやSun Breathではなく、Serpent BreathingやSun Breathingのようにbreathingを使ったものになります。混同しやすいので気をつけてくださいね。
ですから「胸部レントゲン写真」chest X-rayの撮影を行う際には、“Please take a deep breath. Hold it. Now relax.”のような声がけが定型表現として役に立ちます。この場合のbreathは可算名詞であり、take a breathには「息を吸う」以外にも「一息つく=落ち着く」という意味もあります。レントゲン撮影では「息を止めてください」と言うことも必要ですが、この場合にはhold your breathのようにholdを使います。ただhold your breathには「息を止めて待っている=期待して待つ」という意味にもなり、“Don’t hold your breath. He never shows up on time.”のようにも使われます。
breathにはtakeやhold以外にもcatch, waste, and saveのような動詞が使われます。catch one's breathには「息を整える」という意味があり、“Give me a second to catch my breath.”のように使われます。日本語には「無駄骨を折る」という表現がありますが、英語には同じような意味としてwaste one's breath「無駄な息をする」というものがあり、“You’re wasting your breath trying to convince him.”のように使われます。そしてその反対の意味がsave one's breathであり、“Save your breath. She’s already made up her mind.”のように使われます。
呼吸の問題と言えば「息切れ」が重要ですが、これを一般英語ではshortness of breathと言います。英語圏のカルテではこれをSOBのような略語を使って表現しますが、一般社会ではこのSOBは「ののしり言葉」swear words(またはcurse words)になりますので、患者さんの前では使わないように心がけましょう。
このshortness of breathの有無を確認する際には、“Do you have shortness of breath?”よりも“Are you feeling short of breath?”という表現のほうが一般的です。また「息が切れる」という動詞としてはget out of breathという表現があります。これを使って「労作時の息切れ」を尋ねたい場合、“Do you get out of breath when you exercise?”と言うと「しっかりとした運動をする場合」という意味になりますので、「日常動作を含めて身体に負荷がかかる場合」という意味の“Do you get out of breath when you exert yourself?”という表現のほうが、「労作時」という意味を正しく反映します。
「息切れ」がある場合、ほかにもbreathlessという形容詞が使われ、“I feel breathless.”のように表現されます。英語の曲にBreathlessというタイトルのものが複数ありますが、もちろんその意味は「息切れ」ではなく、「息をのむほどあなたに夢中になっている」というロマンティックなものになっています。
患者さんにshortness of breathがある場合、医学英語ではdyspnea「呼吸困難」と表現されます。そしてこのdyspneaは米国(特に東側)では「ディスニーア」のようにpを発音しませんが、それ以外の地域では「ディスプニーア」のようにpを弱く発音します。どちらが正しいというわけではないので、皆さんも自分なりにどちらかで発音するようにしてください。
「息を喘ぐ」という状態は、英語ではgasp for airのように表現されます。また運動などで「ハァハァと息をする」という状態は、pant for breathのように表現されます。これらを逆にしてgasp for breathやpant for airという表現は不自然になりますのでご注意を。
左心不全などで生じるorthopnea「起坐呼吸」ですが、この発音は「オーソプニーア」のようになります。この有無を尋ねる際には“Do you feel short of breath when you lie flat?”や“Do you need extra pillows to sleep?”のような質問をするとよいでしょう。
感染症の「百日咳」の医学英語はpertussisですが、この一般英語はwhooping coughです。このwhoopとは、咳発作のあとに息を吸い込む際に生じる高く鋭い吸気音を意味します。百日咳では激しい咳が連続した後、一気に息を吸い込もうとするため「ヒューッ」「ホーッ」と聞こえる独特の音が出ます。ですからpertussisはwhooping coughとも呼ばれるわけです。ただwhoopという動詞には「歓声を上げる」という意味もあり、“The crowd whooped with joy.”のようにも使われます。
成人のrespiratory rateの正常値は12-20/minですが、12未満のslow breathingをbradypnea「徐呼吸」と、そして20以上のfast(rapid)breathingをtachypnea「頻呼吸」と呼びます。前者は「ブラディプニーア」と、そして後者は「タキプニーア」のように発音します。これらは地域に関係なく、pもしっかりと発音されます。ただ呼吸が止まるapnea「無呼吸」の発音は「アプニーア」のようにアクセントが最初に来るので注意してください。
このtachypneaとよく混同されるのがhyperventilation「過呼吸」です。前者はrespiratory rateが増える状態を指すのに対し、後者は必要以上に換気してしまう状態を指します。速く呼吸していてもventilation自体が過剰でなければhyperventilationとは言えません。
呼吸の様式にも異常がありますが、その代表例がKussmaul breathingとCheyne-Stokes breathingです。Kussmaul breathingは、deep and fast breathing that stays steady and does not stopというもので、metabolic acidosis「代謝性アシドーシス」、特にdiabetic ketoacidosis(DKA)「糖尿病性ケトアシドーシス」で認められます。これに対してCheyne-Stokes breathingは、breathing that gets deeper, then shallower, with short pauses in betweenというもので、心不全や中枢神経系などでdelayed feedback in the respiratory control systemが生じる場合に認められます。
ではここからlung examination「肺の診察」における英語表現を見ていきましょう。
日本の診療ではあまり行われることがないtactile fremitusですが、これはどのような診察なのでしょうか。まず“I’m going to place my hands on your back.”と言って、患者さんの背中に両手を当てます。次に“Could you say ‘ninety-nine’ for me, please?”と声をかけ、低い声で“Ninety-nine, ninety-nine, ninety-nine...”と言い続けてもらいます。患者さんが“ninetynine”という低音を発すると、肺が振動します。この振動をfremitus「震盪」と呼び、それをtactile「触知」することで肺の状態を推察します。もしfremitusが強く触知されれば、肺の実質がsolidな状態になっていることが示唆されます。このように肺実質が硬化した状態をpulmonary consolidationと呼び、肺胞内に液体が貯留するtypical pneumonia「定型肺炎」や、left heart failure「左心不全」によるpulmonary edema「肺水腫」などでみられます。これに対してfremitusが弱くなれば、肺の外側に液体や空気が存在することが示唆され、pleural effusion「胸水」やpneumothorax「気胸」を考えます。そしてこのtactile fremitusは「発声によって生じる震盪」という意味から、vocal fremitus「声音震盪」とも呼ばれます。
tactile fremitusと同様に、日本ではあまり行われない身体診察としてegophonyがあります。これは“I’m going to listen to various points of your chest. Could you say ‘E’ for me, please?”と指示して行う聴診です。正常な肺であれば、患者さんが“E”と発声すると、聴診器を通してもそのまま“E”と聞こえます。しかし、肺実質が硬くなったpulmonary consolidationの状態では、この“E”が“A”のように聞こえるのが特徴です。動物で「エー」と鳴くのはgoat「ヤギ」であることから、この診察をgoat soundを意味するegophonyと呼び、日本語では「ヤギ音」と呼んでいます。
呼吸音を聴診するlung auscultationでは、患者さんに“I’m going to listen to various points of your chest. Could you breathe deeply through your mouth, please?”と説明し、口から大きく呼吸してもらいます。ただし小児科で小さな子どもに同じ指示をしても、うまく聴診できないことがあります。そのような場合には、“Let’s pretend there’s a birthday cake with lots of candles in front of you. Please blow out all the candles for me.”といった表現を使うと、自然に深呼吸をしてもらうことができます。
また聴診ではbronchial breathingという表現もありますが、皆さんはこの意味がわかりますか? trachea「気管」からbronchus / bronchi「気管支」にかけてのupper airway「上気道」では、inspiration / inhalation「吸気」 expiration / exhalation「呼気」の強さと長さがほぼ同じで、両者の間に短いgapが生じるbronchial breath soundsが聴取されます。これに対してbronchioles「細気管支」からalveoli「肺胞」にかけての領域では、吸気が呼気より強く長く、かつ吸気と呼気の間にgapが生じないvesicular breath soundsが聴取されます。本来vesicular breath soundsが聞こえるべき領域で、bronchial breath soundsが聴取された場合、それをbronchial breathingと呼び、肺実質の異常が示唆されます。
bronchial breath soundsが聞こえる領域で、low-pitched rattling soundsが聴取された場合、それはrhonchiと呼ばれます。これはbronchitis「気管支炎」などで、痰が気管支内に付着することで吸気・呼気の両方で聴取され、日本語では「いびき音」と呼ばれます。
これに対してvesicular breath soundsが聞こえる領域で、high-pitched whistling soundsが聴取された場合、それはwheezes「喘鳴」と呼ばれます。これはCOPDやasthmaのようなlower airway「下気道」の閉塞によって生じ、吸気・呼気の両方で聞こえる連続性の音です。
ここで注意したいのがこのwheezesと、一般英語で使われる動詞としてのwheezeの違いです。wheezesはあくまで聴診器を通して医師が聴取する所見名であるのに対し、動詞のwheezeは患者さん自身が“I’m wheezing.”「ゼーゼーしている」と自覚症状を表現する際に使われます。また聴診器を使わずに耳で聞こえる高音性の喘鳴はstridorと呼ばれ、epiglottitis「喉頭蓋炎」などupper airwayの閉塞によって生じるため、wheezesとは明確に区別されます。
そしてvesicular breath soundsが聞こえる領域ではcracklesと呼ばれる異常音が聴取されることがあります。これは肺胞由来の断続音で、かつてはrales(米国)やcrepitations(英国)とも呼ばれていましたが、現在の英語圏の臨床ではcracklesに統一されています。このcracklesのうち、吸気終末にfine popping soundsとして聞こえるものはfine cracklesと呼ばれ、pulmonary fibrosis「肺線維症」やatypical pneumonia「非定型肺炎」を示唆します。一方、吸気だけでなく呼気初期にもcoarse bubbling soundsが聴取される場合、それはcoarse cracklesと呼ばれ、left heart failure「左心不全」やtypical pneumonia「定型肺炎」を示唆します。日本ではralesを「ラ音」と呼び、rhonchiやwheezesを「連続性ラ音」と、fine cracklesやcoarse cracklesを「断続性ラ音」のように呼んでいましたが、今はこのような分類は推奨されていません。
最後に指摘しておきたいのがbreathとbreathingの違いです。前者は「一回の呼吸」というイメージで、後者はbreathe「呼吸する」という動詞から生じる「呼吸という動作」というイメージになります。ですから海外でも大人気の「鬼滅の刃」Demon Slayerの「蛇の呼吸」や「日の呼吸」の英語表現は、Serpent BreathやSun Breathではなく、Serpent BreathingやSun Breathingのようにbreathingを使ったものになります。混同しやすいので気をつけてくださいね。