池脇
パーキンソン病の最近の知見を教えてくださいということですが、いかがでしょうか。
仙石
まず薬剤に関してはCOMT阻害薬という薬があります。それを以前は毎食後のように1日3回、4回内服していたのですが、1回で済む、長時間効くような徐放剤が最近上市されました。さらにドパミンアゴニスト製剤においては、貼付剤が上市されています。
池脇
何回も飲まなければいけなかったものが1日1回、あるいはデリバリーが経皮的ということで、患者さんにとっては負担軽減になりましたね。
仙石
はい、福音だと思います。
池脇
それ以外はどうでしょうか。
仙石
ほかにはデバイス補助療法(Device Aided Therapy)、略してDATというのですが、それに関しては、以前から脳深部刺激療法(DBS)というものがありました。それに加えてレボドパ・カルビドパ配合の経腸からの投与、それから先ほどの経皮からの投与ということで、日本では現在デバイス療法として3種類が存在します。
池脇
脳深部刺激療法ですが、侵襲的な治療でしょうか。
仙石
施設によって違いますが、まず剃毛をしなくてはいけないということと、脳の中に電極を留置しますので、かなり侵襲的なものになります。
池脇
この治療は、脳外科と脳神経内科医のどちらが行うのでしょうか。
仙石
基本的には脳外科と脳神経内科がチームでやることになっていまして、主に処置をするのは脳神経外科医、電極挿入部位などのアドバイスをするのは脳神経内科医となります。
池脇
これは侵襲的な治療法ですので、従来の薬物療法でなかなか管理できないような方が対象と考えてよいでしょうか。
仙石
はい、そのとおりです。ジスキネジアが非常に強く出てしまうとか、どうしても頻回投与になってしまう、レボドパ製剤の内服薬の投与が1日6回、7回と増えてしまうということで、5-2-1ルールというものがあります。指標といいますか、それに抵触した場合には、脳深部刺激療法なども考慮することになります。
池脇
脳深部刺激療法の効果はどの程度でしょうか。
仙石
非常に効果がある方もいますが、具体的には精神症状などの副作用が懸念されています。最近はリードという中に入れる電極がだいぶ改良されています。運動症状を改善させる部位に限局的に刺激を与えることができるようになってきていますので、うまくいけば運動症状を改善させることができます。
池脇
次に先生が言われた残り2つのDATは経腸と皮下注射ですが、それぞれどのような治療でしょうか。
仙石
まず経腸ですが、こちらは胃ろうから挿入したチューブを通して空腸に持続的にレボドパ製剤を投与することができます。2016年に承認されて、当時はチューブの場所がうまくいかなかったりすることがあったのですが、最近は、チューブの先端を270度に曲げると、胃カメラを使わないでうまくチューブが交換できることがわかり、そういったデバイスの改良等により、使いやすいものになりました。
もう一つの皮下注に関しては、皮下に持続的に投与することで、両方ともポンプをおなかに付けて24時間作用させることになっています。
池脇
経腸投与ですが、胃ろうを造設しているパーキンソンの患者さんに優先的に使う治療でしょうか。
仙石
いえ、胃ろうを作るようなやり方で行うという意味で、進行期の胃ろうを作ってしまった患者さんに適応ということではありません。
池脇
そういうことですか。治療のメリットを教えてください。
仙石
パーキンソン病の治療においては、CDS(continuous dopaminergic stimulation)といって、持続的にドパミン刺激を与えるのが良いことがかねて研究で示されてきましたが、内服すると、どうしても血中濃度がピークとフラットのときができてしまいます。CDSを実現するために、まず経腸や、経皮からの持続的な投与ということで開発されました。
実際、持続投与することで運動症状をかなり安定させることができることは示されましたが、副作用の問題が懸念事項として上がってきています。
池脇
通常の薬物治療ではウェアリング・オフやジスキネジアの問題が克服できないのに対し、このようなやり方では効果があるという理解でよいでしょうか。
仙石
はい、そのとおりです。
池脇
通常の薬物治療でコントロールできない患者さんに対して、こういった新しいDAT治療を積極的に行われているのでしょうか。
仙石
先生のおっしゃるとおりで、まずは内服薬でコントロールを試みることは大前提で、それでもやはり服薬回数増や、ジスキネジアの時間の延長というような場合にDATという選択肢を患者さんに提示して、同意が得られた場合には導入するというかたちです。
池脇
次に、パーキンソン病でiPS細胞の治療が行われたと聞いていますが、どうでしょうか。
仙石
2025年1月頃に京都大学からの報告があったと思いますが、治験が行われました。7人の患者さんに対して実施され、1人は安全性のみの確認で、実際に6人に対して実施されました。
50~69歳までの男女7人ということで、比較的若めの方が対象だったと思います。6人の中で2年間、前向きに見てきたのですが、その結果、まず大事だったのが、iPS細胞が癌化しないかどうかでした。とにかく安全性を見たところ、全員安全だったということが一つ確認されました。
その中で6人中4人は、臨床的なスコアがかなり改善したということが確認されています。中にはパーキンソン病の臨床運動スコアが、32ポイントも改善したという症例もあったということです。
一方、残り2人は数値が数ポイント悪化してしまったということも報告されています。
池脇
今までのパーキンソン治療では考えられない効果が、全員ではないにしても出たということは、先生方にとっても驚きだっただろうと思います。確認ですが、この治療は開頭して、脳にiPS細胞を移植するのですか。
仙石
はい、そのとおりです。今回の治験では1人当たり500万~1,000万個の細胞を脳に移植しました。
池脇
移植された細胞が適材適所に近いかたちで機能するようになって、それがパーキンソンの症状の改善につながるということでしょうか。
仙石
はい。ドパミンを産生する細胞が減ってしまうのがパーキンソン病の本体ですので、ドパミンを産生する細胞を移植する。つまり移植した結果、ドパミンが自分の脳内から分泌されるようになったということが今回確認されています。
池脇
いずれにしても画期的なデータが出た後、このiPS治療に関してはどういう展開になりそうでしょうか。
仙石
この後、今回の治験にかかわった製薬会社が国に対して承認を得るために動いていくことになると思います。
池脇
その場合には、iPS細胞を供給する製薬会社、そして開頭なので脳外科医の協力によって治療が実施されるのですね。
仙石
そのとおりだと思います。
池脇
新しい治療ですが、どこかで問題が起きて中止になることのないように大事に育ててほしいですね。
どうもありがとうございました。