池脇
時々、深部静脈血栓症(DVT)の質問をいただきます。治療に関しての質問が多いのですが、DVTの易血栓性という背景に関しての検査の質問です。質問の内容は、検査するとコストが高くなるということですが、易血栓性の背景を調べる検査にはどういうものがあるのでしょう。
合田
血栓性素因はプロテインS欠損症、プロテインC欠損症、ループスアンチコアグラント病の病気を疑って血液検査をするのが、血栓性素因を調べる検査になります。
池脇
日本ではプロテインS欠損症が多いと聞いています。
合田
おっしゃるとおりで、プロテインS欠損症は日本人のDVT患者さんの22%ぐらいという報告があります。
池脇
それは日本人のDVTの患者さん総数の22%ですか。
合田
はい、そういう報告です。
池脇
けっこうな数ですね。
確認ですが、プロテインSやC欠損症は先天的な病気で、抗リン脂質抗体は後天的な疾患という理解でよいですか。
合田
はい、そのように分類されています。
池脇
質問では、検査のコストを気にされていますが、どうなのでしょうか。
合田
おっしゃるとおり、DVTの患者さんの数は多く、全員にこのような検査の実施は推奨されていません。
池脇
患者さんごとに、ここまで原因検索をしたほうがよいという指針があるのですか。
合田
ガイドラインで推奨されているのが、若年の静脈血栓症の方で、基準は40歳以下となっています。今は40代でも若年に入るかと思いますが、若い方ということです。あとは血栓症が再発性のもの、何度も起こされている方に加え、家族歴がある方は先天的な血栓性素因の可能性を疑うとよいと思います。
池脇
確かに後天的な抗リン脂質抗体症候群は別にして、若年発症や再発、家族歴がある場合には原因検索はコストにかかわらず必要と考えていいですね。
合田
はい。治療方針にも関わりますし、抗凝固療法を続ける際の指針にもなるので、調べる必要はあると思います。
池脇
最近は担癌患者さんのDVTも増えていますが、そういう場合の原因検索は、必ずしも要らないような気がしますが、どうでしょう。
合田
やはり年齢もありますし、高齢の担癌患者さんであれば、先天的なものは考えにくいので、必須ではないと思います。
池脇
質問の最後ですが、PT、APTTなどから原因疾患を絞れるのでしょうか。
合田
APTTが延長すると抗カルジオリピン抗体のループスアンチコアグラント症候群が疑われることもありますので、何も薬を使っていない状態でAPTTが延びていれば、そちらも疑う根拠になるかと思います。
池脇
そういう意味ではAPTTの値は、検査を進めるかどうかを考える大事な検査といえますね。
合田
おっしゃるとおりです。あとは女性ですと習慣性流産の既往があるなどの既往歴を聞いていただき、鑑別をして検査に進むことも必要かと思います。
池脇
質問の原因疾患を検索することに関してお答えいただいたように思いますが、DVTの診断にはDダイマーが一番大事な検査ですよね。
合田
おっしゃるとおりです。ガイドライン上でも、Dダイマーが陰性であればDVTは疑わない、その先の検査はしなくてよいと強く示されていますので、まずDVTを疑ったらDダイマーを測る習慣をつけておくとよいと思います。
池脇
確かに足が腫れたらDVTを疑って紹介したいというお気持ちもわかるのですが、Dダイマーを確認することで、正常であればDVTは否定されますので、患者さんにとっても、医療機関にとっても、そのほうがよいということですね。
合田
そうですね。そう思います。
池脇
質問から少し外れますが、DVTの抗凝固治療で、最近はDOACが使われていますが、どのぐらい使ったらいいのか迷うことがあります。新しいDVTのガイドラインが出ましたが、その辺りはどのように決まっているのでしょうか。
合田
患者さんがDVTを発症したリスクや、どのようなリスクで発症したかをまず考えて、リスクが高い方は生涯にわたって使いましょうとなっています。
先ほどお話しした血栓性素因のある方は高リスクになりますので、生涯にわたって薬を飲むかたちになります。また担癌患者さんや血栓性の誘因をずっと持たれている方も高リスクにあたりますので、生涯にわたって薬を飲む必要があります。
一方、低リスクというのは誘因が明らかであるエコノミークラス症候群などであり、その場合は3カ月でいったん中止してもよいとなっています。
池脇
今の先生のお話を聞いて、高リスク、実際には胆癌患者さんは経験したことがありますが、易血栓性の患者さんは経験したことがありません。他方で低リスク、長時間のフライト後で起こした方も多くなく、逆にいうと、なぜ起こしたのかわからない患者さんがけっこう多いと思います。このような患者さんの場合の治療の継続はどう判断したらよいでしょうか。
合田
一番そこが問題というか、悩ましいところです。臨床上でも悩ましいのですが、明らかな誘因がない方は中リスクにあたり、まずDOACで治療します。出血のリスクが高くない方はなるべく飲んでいただき、生涯にわたっての血栓症の再発を予防していく。DOACを使っていて出血のリスクが高い方は、3カ月で中止しても仕方ないというのが現在推奨されている状況です。
池脇
ご高齢の方で、フレイルがあって、転倒で出血のリスクもありそうだとなると、どこかでやめられないかという感じで治療していくことになります。そうではない場合は、ご本人の了解があれば続けておいたほうが安心ということですね。
合田
おっしゃるとおりで、そこはリスクとベネフィットを考慮したうえで、継続の判断をすることになるかと思います。
池脇
以前は中枢型のDVTで足がパンパンに腫れていると、入院してヘパリンでしたが、最近は最初から外来というケースも増えているのですか。
合田
はい。重症ではない、肺動脈塞栓症の方の場合は、外来でDOACを開始する治療も行えるようになっています。
池脇
外来でDOACを使った治療も、入院のヘパリン治療に劣らないぐらいの治療効果があるということでしょうか。
合田
そのとおりで、ヘパリンと比べてDOACは、治療効果が劣らなかったと示されております。
池脇
DVTの治療で抗凝固薬を処方されることもありますが、肺塞栓症(PE)を合併していないかどうかの確認はしたほうがいいですね。
合田
おっしゃるとおりです。DVTにはPEがつきものなので、合併の有無は、大きな病院で画像的に診断し、その後どうするかは専門の医師の意見を聞いて治療方針を決めるのが一番よいと思います。
池脇
先生は大学病院で肺塞栓症を合併した重症患者を治療されていますが、いかがでしょうか。
合田
PEになった方にも様々な重症度がありまして、心臓に負担がかかるぐらいのPEの方もいらっしゃるので、患者さんによって判断しなければならないことになります。あとは肺塞栓症が続いて、慢性化していく方もいらっしゃいますが、その場合は循環器内科の医師がきめ細かにフォローしていくことも必要になってくるのが肺塞栓症といえます。
池脇
PEまで進展しないような初期治療という意味で、適切な検査あるいは画像検査も含めて行っていただくのはとても大事ですね。
合田
そのとおりで、最初にDVTを疑ったら、PEも早く見つけることが重要です。
池脇
質問以外のことに関しても答えていただきました。ありがとうございました。