ドクターサロン

池脇

高血圧の質問をいただきました。具体的には高血圧患者さんの血圧変動で、日内変動から、もう少し周期のゆったりとした季節変動など、治療を調整する必要がある場合にコントロールするのに、特に日内変動は管理するのが難しい印象があります。まず日内変動はどういう変動でしょうか。

畔上

まず、我々が一番目につきやすい変動というのは、1回ごとの血圧の変化や、朝晩の血圧の変化だと思います。

もう一歩踏み込んで考えると、24時間のABPMで測定するような場合、15分ないしは30分おきに測るので、最も変動という意味では捉えやすいと感じています。

池脇

そもそも高血圧に限らず血圧というのは生理的に変動するのですね。就寝時が少し低く、起床時から活動時が高く、夜に向けて下がっていく流れはある意味、生理的であるということですね。

畔上

おっしゃるとおりです。このような生理的変化はある意味自然の変化ですので、むしろそういう変化がない人は心血管イベントのリスクがあります。有名なところでいうとnon-dipper(ノン・ディッパー)といって、夜間に十分に血圧が下がらないタイプは、心血管イベントのリスクだと広く知れ渡っているかと思います。

池脇

確かに夜間の血圧も下がらないnon-dipper、あるいは下がり過ぎるextreme-dipperなど、変動しないのも変動しすぎるのもあまりよくないということでしょうか。

畔上

おっしゃるとおりです。研究レベルでそういった方々の予後を追っていくと、下がらない方や下がりすぎる方、ないしはむしろ上がってしまう方は、リスクであるということが明らかになっています。

池脇

患者さんに自己測定はお願いしていますが、夜間の血圧はわかりにくいですよね。

畔上

おっしゃるとおりですね。やはりABPMをしない限りは夜間の血圧を正確に捉えることは難しいと思います。朝の血圧と夜の血圧、特に朝に極端に上がってしまうような方は、もしかしたら夜間の血圧がうまくコントロールできていない可能性があります。

池脇

そういう意味では夜間の血圧変動の異常が、早朝高血圧の背景になっていたりするのですか。

畔上

おっしゃるとおりですね。

池脇

早朝高血圧も将来のリスクになると言われていますので、ご自身が測定可能な時間帯だけでも変動を認知することで、その人のリスクをある程度推測することはできるのですね。

畔上

おっしゃるとおりです。

池脇

いろいろな日内変動のパターンがあるので対処の方法も変わってくるのでしょうか。

畔上

やはり明け方にすごく血圧が高くなる方に関しては、薬の飲み方を朝から夜に変えるというのは、皆さんよく行う方法だと思います。実際にその方法で血圧が下がることは多くの研究で証明されています。

一方で気を付けなければいけないことは、それが果たしてその人の血圧の、さらに奥にある心血管イベントにどう作用するかということは、おそらく明確な回答が得られていないことが現状かと思います。

池脇

時々血圧の話をして、診察で測るとすごく高いが、家だと110~120㎜Hg台で問題ないといわれることがあります。いろいろな精神的な要因も血圧に影響してくると思います。それも結果的には血圧の変動を起こすので、将来的なリスクの上昇と関係するのか、あるいはそうでもないのかという点に関して、何か知見はあるのでしょうか。

畔上

なかなか精神状態を捉えるのが難しいので、精神面による変動なのか、睡眠不足や、仕事の影響による変動なのか、変動の原因を捉えることは困難です。ただ全体として変動が大きい方は心血管予後がよくないことは明らかです。例えば受診間ごとの診察室血圧の変動が大きい人ほど脳卒中が起こりやすいことはエビデンスとしてわかっています。

池脇

今の先生の言葉を聞くと、血糖や、脂質も変動が大きすぎることは体にとって負担になるということでしょうか。

畔上

おっしゃるとおりだと思います。ただその一方で、適切に変動することも大事ですので、まったく変動しないことも何らかのリスクではないかと思います。

池脇

話を元に戻させていただきますが、例えば夜間、通常のdipperではなくて、non-dipperであったり、extremedipperだということが24時間の血圧測定でわかった場合に、先生方はそれをどう対処されているのでしょうか。

畔上

やはり下げたいところのターゲットに向かって、血圧の薬の量を少し調整したりということはよくやっています。ただ、それが果たして心血管予後に対してどれだけ改善するかに関しては未知数です。

池脇

血圧そのものが異常なのか、睡眠の質が要因でnon-dipperだったり、extreme-dipperになったとすれば、睡眠のほうの介入が必要になりますよね。

畔上

そうですね。おそらく原因を取り除かない限りは根本の解決にはならないと思います。

池脇

日内変動は、皆さん苦労されていると思います。質問の途中にありますが、日内の変動がある方は服用したり、やめたりと、あまりよくない印象があるようです。そのようなことをするときもあるのでしょうか。

畔上

私はどちらかというと長期的な変化で捉えることが多いので、日内変動で、1日ごとに変える必要はないと思っています。

池脇

季節的な変動での投薬量の調整はするが、日内レベルではお勧めできないということですね。

畔上

どちらかというと日間変動に関してはあまり介入しないことが多くて、日内のほう、例えば明け方高い方には就寝前や夕食後に服用していただくことはしています。

池脇

確かに薬を飲むタイミングが変わることで、変動のパターンが是正されることがあるように思います。服用タイミングを調整する以外に、例えば薬の種類、クラスを変えることもあるのでしょうか。

畔上

薬のクラスを変える前に、どちらかというと飲み方を変えるほうが多いかと思います。

一方で、これはおそらく個別医療ではなくて全体のポピュレーションの中で、飲んでいる薬を朝から夜に置き換えたらどうかという研究が盛んに実施されています。最初の研究では、夜に飲む行為が心血管イベントを劇的に下げるという研究成果が出ました。一方で、その後の研究では、その効果は否定されています。おそらく個別ではなく、トータルなポピュレーションで実施してもあまり意味がないと思います。やはり明け方だけ高いなど、そういうポピュレーションに絞って実施する分には、もしかしたらいい効果が期待できるのではないかと思いながら治療をしています。

池脇

日内変動が生理的な変動から少し外れてくるのは、若い方よりも高齢の方が多いと思っていますが、先生はどう思われますか。

畔上

実感としては、高齢者のほうがそのような傾向は大きいと思います。

池脇

そうですよね。高齢の方に薬を大胆に調整するのは難しい気がしますが、高齢者の日内変動にはどう対処されていますか。

畔上

特に低血圧で転倒してしまうようなリスクの高そうな方に関しては、少し緩めになってしまうことは多いかもしれないです。

池脇

質問の最後に「エビデンスがありましたら」ということですが、なかなかエビデンスを構築するのは難しそうな気がします。

畔上

そうですね。例えば長期に関していうと、診察ごとの血圧に関しては、カルシウム拮抗薬や利尿薬のほうがむしろ変動が少なくて、ACE阻害薬、ARB、βブロッカーは変動が大きいというエビデンスはありますが、もちろんそれがもしかしたら間接的に脳卒中のリスクを減らすことは挙げられていたかと思います。長期に関してはその辺りかと思います。

池脇

どうもありがとうございました。