ドクターサロン

山内

健康診断等々で、小球性低色素性貧血が軽度レベルで見つかるケースが非常に多いので、その辺りへの対応から教えていただけますか。

疾患は頻度が大事ですので、やはり小球性低色素性貧血を認めた場合には、鉄欠乏性貧血をまず鑑別に挙げて、血清鉄、TIBC、フェリチンの測定を出し、鉄欠乏のパターンかどうかを確認するのが最初のステップとして必要かと思います。

もし、鉄、フェリチンの低下があるようであれば、鉄欠乏に伴う貧血が出現してきていると考えるのが一般的だと思います。

山内

鉄とフェリチン、特にフェリチンは基準値の幅が広いですが、少しずつ基準値の下限付近のところで、小球性低色素性貧血などが起こるものでしょうか。

厳密な意味での正常値でみると、下限に近い状態でもヘモグロビンが少し下がってきている方もいると思います。

山内

検診や通常の診療でヘモグロビンが低値だった場合は、鉄欠乏性貧血があるかもしれないと、患者さんに伝えてもかまわないのでしょうか。

まず検査に出すうえでも、患者さんへの説明はそれでよいかと思います。

山内

時々高齢者で、少し悩むときがあるのですが、鉄欠乏性と思われる軽度の貧血が出てくる場合は、加療の対象になると考えてよいでしょうか。

同じように血清フェリチンの低値などがあった場合には、高齢者の場合でも鉄欠乏がベースにあるということなので、検査、そして必要に応じた治療の対象になると思います。若い方も含めて、頻度的には消化器がんが隠れている可能性があるので、胃がんのスクリーニングや便潜血、あるいは下部消化管のスクリーニングはしておくべきかと思います。

山内

スクリーニングが陰性だった場合、高齢者への治療をどのあたりから行ったほうがいいのでしょうか。

血清鉄やフェリチンが低い鉄欠乏のパターンであれば、少量の鉄剤を内服し、鉄欠乏の状態を改善することは重要かと思います。ヘモグロビンを正常化すること以外にも、筋肉や生体の働きに鉄が重要であることはわかってきていますので、鉄分の補充は重要かと思います。

ただ、消化管から出血していないのに、なぜ鉄欠乏になったのかに関しては、食事での摂取量が十分ではないからかもしれません。必要な食事指導も並行して行うことは、長期の管理の意味でも必要かと思います。

山内

高齢者の場合、鉄欠乏性貧血が改善すると元気になるということは見られますか。

高齢者はもともとアクティビティがそれほど高くないので、どれぐらい改善するかわかりにくいかもしれませんが、若い女性の方で慢性の鉄欠乏性貧血がある方は、鉄剤を補充するととても元気になったという方はよく経験します。やはり鉄分の慢性的な欠乏は、生体の働きにとってよくないことを実際の患者さんで経験しています。

山内

ここで鉄欠乏から離れて、ほかの血液疾患での血球の異常状態の出方について教えていただきたいのですが、まず再生不良性貧血の初期は、鑑別上いかがでしょうか。

再生不良性貧血の病初期を捉えると、軽度な貧血で発症する方もいるので、鑑別に挙がるかと思います。ただ、再生不良性貧血は小球性貧血にはならず、正球性、あるいは軽度な大球性貧血になることが多いので、小球性貧血の鑑別に高い順位で挙げないかと思います。

もう一つは、白血球、好中球や血小板の数値がどうかという点で、もしほかの2系統にも低下がみられるようであれば、再生不良性貧血を鑑別に挙げる順位は高くなるかと思います。

山内

次に溶血の影響ですが、これは内因性の溶血性貧血と、外に取り出してからの溶血の両方があると思いますが、教えていただけますか。

溶血性貧血は自己免疫性溶血性貧血がおそらく日常診療で出会う可能性のあるものだと思います。もし貧血があって溶血性貧血を鑑別に挙げるときには、まず網状赤血球を検査項目に追加し、貧血があって網状赤血球が高い場合に溶血性貧血の可能性が出てきます。その場合には特殊な検査としてクームステストを追加していただき、血清LDHが高い、総ビリルビンが高値などの溶血の所見がないかどうかを見る必要があるかと思います。

山内

検査室のレベルで、溶血を起こしていたらいかがでしょうか。

時々、採血結果に「溶血検体」という注意のアラートがつけられてくることがありますが、これは生化学の検査を出す場合に、血清が溶血によって赤みを帯びている、つまりヘモグロビンが溶け出して赤みを帯びているときに、検査科が溶血検体という注意を出してくる場合です。血算を測定する際の抗凝固薬(EDTA)が入ったスピッツで起きることではありません。つまり溶血検体では生化学検査項目のLDHが高い、カリウムが高いといった項目が参考値扱いとなります。

山内

最後に、教科書的にはサラセミアと鉄芽球性貧血という2つの貧血がありますが、入り口のところを少し教えてください。とりあえずサラセミアを疑うレベルというのは、貧血がかなり高度と考えてよいでしょうか。

一般の検診等で引っかかってくるサラセミアの場合は、おそらく日本だとごく軽症なサラセミアで、無症状な方が大部分です。ごく軽度なヘモグロビン低下であり、そういった方はごく軽度な貧血として来るかと思います。

山内

確か、サラセミアの軽症のほうが実は頻度が高いということですが、そのわりには見かけないのは、見逃していると考えてよいでしょうか。

そうですね。ごく軽度なヘモグロビン低下なので、検診でこの程度は正常範囲の軽い逸脱とされ、また来年経過を見ましょうというかたちになると思います。翌年もほぼ同じ数値で、年単位で変わらなければ、検診センターの先生方も、積極的に病院に紹介しようとはお考えにならないと思います。1,000人あるいは数千人に1人いるといわれる軽症のサラセミアは、おそらく検診でスルーされているのではないかと思います。

山内

サラセミアの確定診断の前に、スクリーニング的に有用な検査があるようですが、ご紹介願えますか。

サラセミアインデックスといいまして、赤血球数を分母に、MCV(赤血球容積)を分子にして、割り算をしたときのインデックスが13よりも下回っている場合、赤血球の数が多いけれども、MCVつまり赤血球の一個一個の大きさが小さいパターンが見られた場合には、サラセミアを積極的に疑いましょうというインデックスです。

山内

その場合は専門医にコンサルをかけてもよいでしょうか。

そうですね。しかしごく軽症なサラセミアをコンサルテーションしても、おそらく軽症のサラセミアなのでこのまま様子をみていていいですよというのが専門医の見解として返ってくると思います。もちろん先生方が、確証がなく、十分な説明が患者さんにできないときには、ぜひ血液内科の専門外来にご紹介いただき、専門医からごく軽症なサラセミアは問題ないので、様子見でよいという説明をする対応がよいと思います。

山内

ありがとうございました。