池脇
重症のOSASでCPAP療法を導入している場合の一手としてのNPPV療法の適応や診療手順について、睡眠時無呼吸症候群(SAS)とNPPVのガイドライン委員長をされていた先生にSASに対する標準治療であるCPAPとNPPVの違いを含めて教えていただけますか。
陳
非侵襲的陽圧換気(non-invasive positive pressure ventilation:NPPV)と持続陽圧(continuous positive airway pressure:CPAP)はどこが違うかというと、CPAPはCPAPの圧力で気道を広げてあげるということ、NPPVはCPAPと同じように呼気圧のexpiratory positive airway pressure(EPAP)で気道を広げてあげて、さらに吸気圧のinspiratory positive airway pressure(IPAP)を決め、そのIPAP圧-EPAP圧を補助圧として換気補助するということです。基本的にはSASではなく、動脈血PCO2(PaCO2)値が高値の方に使用するのが一般的です。
したがって、NPPVの一般的な適応というのは、例えば肺機能が落ちてきた神経筋疾患の患者さんや、COPDのすごく重症のⅡ型呼吸不全の患者さん、今は少なくなりましたが結核後遺症の方で肺機能が非常に落ちてきた方などです。呼吸というのはPaCO2とPaO2、主にPaCO2値で調整されているのですが、PaO2、PaCO2値に対して反応がない方がいます。非常にまれですが、例えば小児で15万人に1人ぐらいでみられる難病の先天性中枢性肺胞低換気症候群の方で、寝ると換気が無呼吸ではなく、主に小さく(低換気に)なるので、そのため、適時、換気補助をする必要がある方がいます。
質問がおそらく重症OSASということであれば、高度な肥満などがあることを大前提にして考えると、肥満低換気症候群という病態があります。この定義はBMIが30㎏/㎡以上、覚醒中のPaCO2が45Torrを超えて、その原因が一般的なほかの病気ではっきりしないということです(表)。肥満低換気症候群の方の90%以上はObstructive sleep apnea syndrome(OSAS)という閉塞性睡眠時無呼吸症候群を合併するのですが、残り10%ぐらいの方は無呼吸ではなくて、換気量が少ないがゆえにPaCO2値が高値になるという病態があります。
池脇
先生の解説ですと、CPAPとNPPVの大きな違いは、CPAPはある一定の陽圧を吸気・呼気ともにかけているけれど、NPPVは呼気と吸気で調節ができるということですか。
陳
そうですね。
池脇
適応疾患は、CPAPはSASがメインだけれど、NPPVはCOPDやほかの呼吸器疾患の重症例なのですね。確かにOSASの重症例、肥満低換気症候群の場合にCPAP単独では管理できない例もあるということですが、その場合にはNPPVの適応について考える必要がありますね。
陳
CPAP圧についても、現在日本の80~90%は陽圧が患者さんの気道の閉塞状況に応じて変動するAuto CPAPが使用されています。欧米は費用の面もあって、一定圧の7㎝H2Oだったら、一晩中7㎝H2Oの状態が続きます。日本の場合、圧力が気道の閉塞によって上がったり下がったりして、しかも、そのデータを毎日モニタリングできますので、CPAP圧の調節、あるいはマスクの付け方の指導により、自身でCPAPの管理がうまくできているかどうかがわかります。
NPPVはEPAP圧によるCPAPのような気道の開存ばかりでなく、(IPAPEPAP)圧で換気補助ができるので、上昇したPaCO2値の改善には有効ですが、EPAP圧とIPAP圧の2つの圧の設定を行わなくてはならず、設定がやや複雑になり、患者さんの受け入れもCPAPより困難な場合が多いです。肥満低換気症候群で、例えばPaCO2が50Torr程度でも、いまだにCPAPがいいのかNPPVがいいのか、はっきり決まっていません。CPAPでPaCO2がすぐに下がってこなくても、徐々に下がってくることもあるといわれますが、例えばクリニックの外来にいらっしゃったときに肥満度が高く、重症のOSASで、SpO2が92%ぐらいあり、CPAP治療をしてもSpO2の値が改善してこないのであれば、外来で動脈血採血はたいへんですが、一度血液ガスを取り、PaCO2の値を見てください。50~55Torrを超えていれば、増悪したら危険なので、専門医療機関にいったん紹介して、その後安定した後に自院に転院させるのが安全かと思います。
池脇
確かにサチュレーションや酸素のモニターは比較的できますが、PaCO2となると一般の医師には難しいので、必要と判断されたら、専門医にお願いするのが安全だということですね。
陳
そうですね。日中にPaCO2が高いと夜間は少なくともそれ以上に高くなっています。PaCO2は血液ガスで取るか皮膚から測る経皮PCO2か、その他、呼気終末CO2の濃度はICUなどで測る器具はありますが、先生がおっしゃるように一般のクリニック、あるいはある程度大きな病院でも診療報酬の面などで経皮のPaCO2を持っているところはそれほど多くありません。自院に来院され、CPAPをしてもSpO2がなかなか上がってこないということであれば、例えば、その患者さんはCPAPのみでコントロールできるにしても、いったん専門医療機関に対診を出して、その医療機関との連携を取るのも一つであり、安全かと思います。
池脇
実際にCPAPを導入して治療されている先生方がなかなかうまくいかないケースは、例えばCPAPの陽圧の圧がけっこう高く、患者さんがなかなか耐えられないとか、あるいはそのためにリークが多いなど、そういうケースも出てきますか。
陳
そうですね。まずCPAPが適切に使用されているかどうかも重要です。マスクからの空気漏れで処方圧に達していないことも多くあります。漏れがあまりひどいと、口が開かないようにchin strapなどを使用する手段もありますが、クリニックで行うことは困難な場合も多いです。特に肥満低換気症候群というのは、通常のOSASよりも心血管障害による死亡率が高いといわれており、安全を期すために、安定した状態まではいったん専門施設に診ていただくというのがよいかもしれません。
池脇
CPAPの次のNPPVという治療の適応は、肥満低換気症候群、非常に高度の肥満の方が多いというのも事実でしょうか。
陳
そうですね。日本の肥満低換気症候群のBMIの平均が36.7㎏/㎡で、さらにPaCO2が50Torr以上を超える症例は少なかったのですが、BMIの平均が38.5㎏/㎡でした。そういう方々の14人中、確か、12人はPaCO2値がCPAPだけで低下しましたが、2人の方はCPAPでは低下しなかった。しかも今、CPAPは80万~90万人に使用されていて、NPPVは最近1万2,000~1万5,000人ぐらいです。NPPV患者さんの中で一番多いのはCOPDの重症例や神経筋疾患ですので、重症SASでNPPVが必要な患者さんは、全体の中から考えると非常に少なく、診る機会も同様に少ないです。そのような患者さんの適正なNPPVの設定は外来では困難な場合も多いので、適正な機器設定ができない間に、Ⅱ型呼吸不全の重篤例のようになって救急受診することを避けるためには、先生方がまずCPAPが適正に使用されているかどうかを確認する。様々な要因で、適正に使用できないことも含めて、コントロールが困難ということだったら、いったん専門医療機関に紹介して、改善後、安定した状態で自院に戻ってきていただくことが安全な方法かと思います。
池脇
NPPVを導入する場合には、圧を決めたりなど専門医がされるのでしょうが、最終的には自宅で使うということですね。
陳
そうですね。NPPVでPaCO2が安定したら、またCPAPに戻すこともあります。CPAPは日本の8~9割はAuto CPAPで気道を広げる圧力が自動的に調節されます。NPPVにもそういう器具がありますが、この調節はなかなか困難なので、NPPVは結局EPAPという呼気圧と、IPAPの吸気圧の両方を決めなければいけない。その設定は、できればPaCO2が測定できる施設で、設定前後でPaCO2がどう変化するのかなどを調べたほうがよいかと思います。適正にNPPVが設定されていてもPaCO2は一気に下がってこないことも多いので、安定した状態になったら、できればCPAPでコントロールできてからクリニックで診るほうが安全だと思います。
池脇
NPPVも導入して、初期の設定から患者さんの状況が変わっていくと、また設定を調節することもあるということで、こまやかな調節が必要ですね。
陳
そうです。PaCO2値が正常域に戻ってきたときに、NPPVを施行すると、今度は過剰換気になるので、患者さんがそれに耐えられなくなります。ある時期になったらCPAPにしてもほとんどコントロールできるので、私どもの経験の中でも急性増悪で入ってきてNPPVが施行される方、さらに、症例としては肥満低換気症候群の方が治療されずに経過し、心不全を合併して緊急入院してきて、挿管、人工呼吸、抜管した後にNPPV、安定してきたらCPAPという状況も考えられます。
池脇
今の先生の説明ですと、NPPVが始まったらそのままずっとではなく、可能ならCPAPに戻すのを前提にということでしょうか。
陳
OSASだけがメインであれば、基本的には病態は気道が閉じるということですから、CPAPで気道が開けば改善します。頻度は高くないですが、呼吸の調節系の問題が大きい方、難治性の肥満低換気症候群の一部が、現在も厚生労働省の難病の中に入っています。このような方々は、単に肥満だけではなく、通常、PaCO2は40Torrや45Torr以内にセッティングされているのですが、少なくても当初は呼吸調節系自体のセッティングが障害されており、気道を広げただけでは夜間換気量が落ちた状態が続くという病態が起こりえます。このような状態は難病として考えられる病態であり、少なくとも当初のコントロールはなかなか困難な部分があるので、クリニック管理は安定した状態からにする。CPAPだけで管理できるようになってから診るほうが、患者さんを安全に管理できるかと思います。
池脇
CPAPの次の一手、NPPVという治療を解説いただきましたが、基本的には専門医による治療ですね。
陳
少なくとも当初は、そのようにしたほうが安全かと思います。
池脇
どうもありがとうございました。
文献1
米国睡眠学会(American Academy of Sleep Medicine:AASM)。睡眠障害国際分類第3版改訂版。監訳:日本睡眠学会診断分類委員会、ライフサイエンス出版、東京