ドクターサロン

池田

帯状疱疹罹患後にどのぐらいの間隔を空けてワクチン接種をしたらよいかという質問です。まず、なぜ帯状疱疹は発症するのでしょうか。

渡辺

帯状疱疹の原因は水痘帯状疱疹ウイルス、ヒトヘルペスウイルス3型です。このウイルスは子どもに感染すると、いわゆる水ぼうそう、水痘を発症します。水痘は体に水ぶくれがたくさんできますが、水疱の中にウイルスがいて、一部のウイルスが知覚神経を通って、三叉神経や脊髄の後根神経節に潜伏感染します。これが50歳を超えたり、免疫低下、大きな病気をするなどのイベントがあると、ある一つの神経節からウイルスが再活性化に成功して、皮膚に痛みを伴う帯状の水疱などの病変をつくる。これが帯状疱疹ということになります。

池田

なぜ一部の神経節だけ罹患するのでしょうか。

渡辺

基本的にはすべての神経節にウイルスは潜伏しているのですが、どこか一つからの再活性化が成功すると、体の中の免疫は早めに立ち上がって、ほかの神経節からの再活性化をブロックしているのではないかと思います。ごくまれに、2カ所、3カ所同時に再発する複発性帯状疱疹というのがありますが、非常にまれな病態です。多くの人は1カ所出ると、体の免疫が立ち上がってほかの所から出るのをブロックしているのではないかと思います。

池田

抗原が曝露されて、瞬時に免疫が立ち上がってくるということですね。

渡辺

一度そのウイルスに感染しているので、ある程度の免疫は維持されている、いわゆる免疫記憶はあるので、すぐ立ち上がることになると思います。

池田

免疫に関して、抗体などの液性免疫、細胞性免疫はどのように発症に関与しているのでしょうか。

渡辺

帯状疱疹は体の中のウイルスが再活性化して出ると言いましたが、それに一番関係しているのがメモリーT細胞、細胞性免疫です。免疫記憶というのが非常に大きいとされています。

一方で、抗体価に関しては、2025年3月に出た日本皮膚科学会のガイドラインにも書いてありますが、帯状疱疹の発症の予測因子にはならないことがわかっていますので、抗体価を測っても残念ながら帯状疱疹になりやすい、なりにくいというのはわからないのが今のコンセンサスだと思います。

池田

抗体がたくさんあるから私は大丈夫だと、よく新型コロナウイルスに対する抗体で言っていましたが、それは帯状疱疹には当てはまらないのですね。

渡辺

そうですね。帯状疱疹はあくまでも体の中からの再活性化なので、それを見張っているのがメモリーT細胞ということになると思います。

池田

逆に、細胞性免疫を測ることは、今できるのでしょうか。

渡辺

昔は皮内抗原液というのが売られていて、それを皮内に打つことで、ツベルクリン反応のように紅斑の大きさなどである程度把握できたのですが、残念ながら今は発売中止になっているので、臨床の場で簡単に帯状疱疹になりやすいか、なりにくいかを測るのは難しいのではないかと思います。

池田

もう一つ、最近帯状疱疹に罹患する患者数が増えているという話を聞いたのですが、本当なのでしょうか。

渡辺

高齢化社会で、どうしても年齢が上がると帯状疱疹になりやすいのですが、もう一つのファクターとして、10年ぐらい前から子どもの水ぼうそうの予防接種が定期接種化されて、水ぼうそうはかなり減ってきているのです。今まで我々大人は、周りの子どもが水ぼうそうになるとウイルスが排出され、それを吸い込んだりすることによって免疫が維持される、ブースター効果があったのですが、今、水ぼうそうの子どもが減ってしまって、ブースター効果が得られなくなってしまった。その結果、子育て世代の20~40代の若年者の帯状疱疹も増えてきているという報告があります。

池田

皮肉なものですね。

渡辺

ただ、ワクチンを打った子どもは帯状疱疹になりにくいという報告もあるので、将来的には帯状疱疹は減ってくるのではないかと思います。

池田

帯状疱疹のワクチンの話に移りますが、2種類あるのでしょうか。

渡辺

生ワクチンと不活化ワクチン(サブユニットワクチン)の2種類があります。生ワクチンは、子どもの水ぼうそう予防に使っているのとまったく同じワクチンで、弱毒化されたウイルスをそのまま打つ方法です。サブユニットワクチンは人工的にウイルスの抗原部分のタンパクを合成して、それとアジュバント(免疫増強剤)を混ぜたものを体に打つのです。これはウイルスそのものではないので、感染が起こらない、広い意味での不活化ワクチンに入ると思います。

池田

それぞれ特徴はあるのでしょうか。

渡辺

生ワクチンの場合は30年、40年前から使われていて非常に安全性が担保されています。ただ生ワクチンは弱毒化とはいえ増殖力があるので、帯状疱疹予防の場合は免疫が非常に落ちている人や癌になっている人には接種してはいけないことになっています。

一方、サブユニットワクチンは増殖しないので、基礎疾患がある人、特に膠原病などがある18歳以上で打てます。通常50歳以上が適応なのですが、リスクの高い人は18歳から接種可能です。それと免疫増強剤が入っているので効果も高くなるのですが、その分、局所の腫れや痛み、全身倦怠感や頭痛などの副反応も少し出やすいのがサブユニットワクチンの特徴だと思います。

池田

それぞれのワクチンの投与スケジュールはどうなっているのでしょうか。

渡辺

先ほど申し上げましたように両方とも50歳以上が基本的には適応ですが、生ワクチンは基礎疾患がある、免疫が落ちている人には打てない。それからサブユニットワクチンのほうは逆に免疫が落ちているような、基礎疾患がある18歳以上の人も対象になります。

投与スケジュールは、生ワクチンは皮下注1回、サブユニットワクチンは筋注2回で、基本2カ月間隔、最大6カ月まで許容範囲があります。

池田

政府のほうで定期接種の対象者は決まっているとうかがいましたが、何歳でしょうか。

池田

2025年4月から定期接種が始まりました。基本的には65歳になる人に接種のお知らせが届いて接種できます。そして、すでに65歳を超えている人には2025年から5年間は5歳刻みで、70、75、80、85、90、95、100歳以上の人にも接種券が来ます。これは時限措置として、65歳以上の人をすべてカバーしようということになります。5年後以降は基本的には一生に1回、65歳のときに接種券が届くと思っていただくといいと思います。

池田

帯状疱疹罹患後のワクチン接種の質問の前に、帯状疱疹に罹患して、もう一度帯状疱疹になる人はけっこういらっしゃるのでしょうか。

渡辺

これには宮崎県の疫学研究、宮崎スタディというものがあるのですが、それによると免疫機能が正常な方で、帯状疱疹の再発率はだいたい6.4%ぐらいといわれていて、それほど少ない数ではないと思います。

池田

その場合、罹患後の再罹患はどのぐらいの期間が空くのでしょうか。

渡辺

幅はあるのですが、中央値でいうと8~10年ぐらいだったと思いますので、それぐらい経つと再発リスクが高まるのではないかと考えてください。寿命が長くなった分、再発の人も増えているのではないかと思います。

池田

先生のご経験も含めて、帯状疱疹になった後、どのぐらい空けてワクチンを打つかについてはいかがされていますか。

渡辺

これについてのコンセンサスはありません。ただ、アメリカやイギリスだと急性期後から、要は抗ウイルス薬で治療して、帯状疱疹が治ったら、いつ打ってもいいという方針が出ていたと思います。カナダやオーストラリアなどでは1年待ってから打ちましょうとなっていますし、世界的にもこれが正解というのはない状況です。日本でも今のところ帯状疱疹になった後にいつ打てばいいというコンセンサスはない状態だと思います。

私の個人的な意見ですと、生ワクチンを打っても、だいたい8年弱ぐらいで効果が切れてしまいます。サブユニットワクチンは十何年、それ以上もつのではないかといわれています。再発のときもだいたい8年弱ぐらいで出てしまうことを考えると、1回帯状疱疹になって、二度となりたくないと思った方は、数年以内、2、3年以内には打ったほうがいいのではないかというお話をしています。

池田

そのときに2つのワクチンのうち、先生はどちらをお勧めするのですか。

渡辺

どうしても年齢というファクターがあります。生ワクチンはアメリカの研究を見ていると70歳を超えると効きがかなり悪くなってしまいます。そういったことを考えると、値段は高いのですが、サブユニットワクチンを選択したほうが、阻止効果は高いのではないかと思います。

池田

帯状疱疹に罹患してもしなくてもワクチンを打つとして、その次はいつ打つのでしょうか。

渡辺

これも正解がないというか、生ワクチンは統計学的に8年弱ぐらいで効果がなくなってしまうといわれています。サブユニットワクチンは十数年目まで見ていて、12、13年は十分に阻止率はあるのですが、サブユニットワクチンを20年後にもう1回打ちましょうというスタディも世の中に存在しないのです。今のところワクチンの再接種については誰も正解を知らないのではないかと思います。

池田

帯状疱疹に罹患した後、数年にはという話がありますが、先生が考えられるベストはやはり数年なのでしょうか。

渡辺

そうですね。サブユニットワクチンに関してはもう少し長持ちしますし、今も追跡スタディをされているので、結果を見てから考えてもいいのかなと思います。あとはアメリカで2017年から接種がスタートしていることから今後、再発率がリアルワールドで出てくると思われます。あと10年ぐらい追跡してから正解が出てくるのではないかと思いますが、正直、今のところ私もよくわかりません。

池田

データの蓄積がまだ足りないということですが、もう一つ、重症の帯状疱疹で特に痛みが残った方に帯状疱疹のワクチンを打つというのは何か意義があるのでしょうか。

渡辺

再発阻止効果はあるのですが、帯状疱疹後に神経痛が残った人にワクチンを打ったら痛みが消えるかというと、その効果は残念ながらありません。

池田

帯状疱疹になって、サブユニットワクチンを比較的早い時期に打ってしまうと、副反応が強く出るとか、そういうデータはあるのでしょうか。

渡辺

副反応の強い・弱いは個人差があるのですが、ベースの免疫がどうだったかという研究は正直されていないと思います。一方、副反応が強い人も弱い人もワクチン効果自体はそれほど変わらないという報告はありますので、そこは何とも言えないところだと思います。

池田

とてもひどいめにあったという記憶がある人は比較的早く打つだろうし、そうでもない方はまだいいか、という感じになりますよね。その辺のことも加味しながら、次のワクチン接種を考えられているのでしょうか。

渡辺

そうですね。最終的には個人の選択ということになると思います。

池田

ありがとうございました。