ドクターサロン

山内

耳鳴りというと、普通、シーンとかキーンという感じですが、この心拍音、ドックンドックンというような音が実際に聞こえる耳鳴りはあるのですか。

大島

はい。ドクドクとか、シュッシュッという耳鳴りを訴えてくる患者さんは実際にいらっしゃいます。我々はそれを拍動性耳鳴(じめい)あるいは拍動性耳鳴りといいますが、そういう訴えのある患者さんを診たときに最初に気をつけなければならないのは、それが本当に心拍と同期しているかどうかだと思います。

ほかにもシュッシュッやズーズーなど、拍動のような音は、体内の呼吸音、それから筋肉の動きに伴うものがあります。筋肉の動きに伴うものは筋性耳鳴(耳鳴り)といって、中耳ミオクローヌスあるいは口蓋ミオクローヌスといった耳の近くの筋肉の不随意運動によって起きる音で、心拍とは全然関係ないものになります。

また、呼吸音に同期する耳鳴りというのは、耳管開放症で、呼吸の音が耳管を介して直接耳に入ってしまい、音が聞こえてしまう。患者さんによっては呼吸音も、場合によっては心臓の音、拍動性の耳鳴りだと訴えてしまうことがあるので、訴えている耳鳴りが本当に心臓の拍動と同期しているのかどうかは最初にチェックするべきだと思います。

山内

この耳鳴りには音源があると考えてよいのですか。

大島

多くの耳鳴りでは音は実際には存在しないのですが、拍動性の耳鳴りは、患者さんが聞いている音が実際に存在していることがほとんどだと思います。

山内

心拍と同期しているというのはわかるのですが、同期していない場合もありますか。

大島

同期していないものは心拍と関係ないといえます。

山内

それでも、心拍のように聞こえるのですね。

大島

そうですね。それは患者さんの表現になります。

山内

それはどこかから拾ってきているという感じですか。

大島

シューシューシューというものでも、患者さんは心拍だと考えてしまいますが、そういったときに私は患者さんに表現してもらいます。その音を「どんな感じ?」と言って表現してもらって、そのときに患者さんの心拍を測りながら、それと一致するかどうかを確認したりします。

山内

音源があるということは、例えば聴診器などで実際に聞こえることはあるのでしょうか。

大島

理論的には聞こえることはあるのですが、実際には音が非常に小さいので、聞こえないことのほうが多いです。ただ聴診器は耳、頸部あるいは眼球などに当ててみてもいいと思います。

あと、拍動性耳鳴りとは違いますが、口蓋ミオクローヌスの場合には、カチッカチッというクリック音が非常に大きな音で聞こえるので、ちょっと離れていても聞き取ることができます。

山内

ただ耳鳴りは、私たちも静かな部屋にいると聞こえることもありますので、これもある程度気になるかどうかが病的な境になると考えてよいですか。

大島

そうですね。気になる、気にならないというのは大事なポイントです。ただ、拍動性耳鳴りの場合は音が実際に存在して、その音はどこから来るのかというと、原因の7割は血管由来だといわれており、それは血流の乱れ、乱流によるものです。例えば動脈の狭窄、あるいは動脈の乖離、それから動静脈瘻などがあるので、それらは一応除外できるようにしたほうがいいと思います。

山内

血管系の病気は注意したほうがいいということですね。こういった耳鳴りの場合、片側性、両側性がありますが、耳鳴りとしてはどちらが多いのでしょうか。

大島

耳鳴りは、片側性も両側性もありますが、どちらかというと両側性のほうが多いのではないかと思います。ただ、拍動性耳鳴りについては、音源があると、音源に近いほうの耳で強く聞き取るので、左右差が出ると思います。

全身的な原因によって起きているものでは、あまり左右差を感じない場合もあるかもしれません。

山内

実際には客観的になかなか証明しづらいと思いますので、丁寧な問診が必要と考えてよいでしょうか。

大島

はい。問診が基本だと思います。まず患者さんの言葉で耳鳴りの音を表現してもらう。それによってどういう音なのか、その性状、低い音なのか、高い音なのかがわかるので、ぜひとも聞き取っていただきたいと思います。

山内

次のステップとしては、耳鼻科的な検査を行って、それから隠れている疾患を探していくかたちになりますか。

大島

はい、そのとおりです。まずは耳鼻科的な検査で、鼓膜所見は必須です。例えば拍動性耳鳴りをきたす腫瘍性疾患としてグロームス腫瘍というものがあります。それは鼓膜の裏側に赤い腫瘤として見えることが多く、拍動性耳鳴りを初発症状として来ることも珍しくありませんので、まずは耳鼻科的には鼓膜所見を診ることと、聴力検査が必須だと思います。

山内

やはり難聴があると、いろいろな疾患が出てくるのですね。

大島

そうです。先ほど、血管系の原因が7割とお話ししましたが、耳由来のものを除外する、原因を除外するという意味でも、最初は耳鼻科的な検査は行うべきだと思います。

山内

耳以外、特に血管系が多いということですが、これにはいろいろな病気があるのでしょうか。

大島

動脈性の原因、あるいは静脈性の原因に分かれます。動脈の狭窄、走行異常とか動脈瘤。静脈系では、耳の近くには頸静脈球や、S状静脈洞といったものがありますので、そういったところが原因となって拍動性の耳鳴りが起こることがよく知られています。

山内

この耳鳴りがあった場合は、原則的に耳鼻科的な問題がなければ血管系、例えば血管や脳血管系の専門医によって、造影検査的なものが必要だとお考えですね。

大島

はい。まずは耳鼻科的に調べて、それで原因がはっきりしない場合は、一度は血管系の検索、まずはMRアンギオは行ってみてもいいかと思います。

山内

この病気は、原則的に改善はするものなのでしょうか。

大島

原因がわかってそれに対処することができれば、耳鳴りは消失すると思います。

山内

ただし、原因がわからないケースに関しては難治性と考えてよいですか。

大島

もし原因がわからない場合は、通常、保存的に経過を見ていくことになると思います。

山内

最後ですが、この病気は、耳鳴りの中のどのぐらいの割合、頻度でしょうか。

大島

拍動性耳鳴りというのは、耳鳴りの中で5~10%ぐらいあるといわれています。

山内

私たちは「耳鳴りがします」と言いますと、「ああ、そうですか」というか、それでもう「耳鼻科に行ってください」くらいで終わりますが、そのぐらいのパーセンテージになると、内科医も少し注意してみたほうがいいということですね。

大島

はい。内科医もぜひ耳鳴りに注意をしていただければと思います。特に拍動性耳鳴りというのは背景に重大な疾患が潜んでいる可能性があるので、ぜひ、そこは耳鼻科、脳神経外科と連携して、患者さんをみていただくことが大事だと思っています。

山内

どうもありがとうございました。