池脇
本日はたばこについての質問をいただきました。電子たばこ、加熱式たばこの2つを合わせて新型たばこというようですが、それぞれどういうものなのか、基本的なところから教えてください。
稲葉
まず、電子たばこと加熱式たばこの大きな違いは、たばこの葉っぱを使っているか、使っていないかです。たばこの葉っぱを装置で熱するのを加熱式たばこといいまして、電子たばこはたばこを使っていません。たばこを使わない代わりに、液体、リキッドの中にニコチンが含有されている液体を蒸気化して吸うものが電子たばこといわれています。
池脇
それは大きな違いですね。電子たばこはニコチンを含む液体ですが、日本ではニコチン入りは使えないと聞いたのですが、どうなのでしょう。
稲葉
おっしゃるとおりです。薬機法で、液体入りのニコチンの販売は禁止されていますので、日本ではほとんど電子たばこは普及していません。
池脇
たばこを吸う人は、ニコチンやタールを求めているので、それが入っていない電子たばこは、日本では受け入れられていないというか、普及はしていないのですね。
稲葉
そのとおりです。
池脇
もう一つは、紙巻きたばこは燃やすわけですけれども、加熱式で熱するということは、煙ではなくて蒸気になるということでしょうか。
稲葉
そこの点をよく聞かれるのですが、加熱式たばこというのは、たばこの葉っぱをおよそ240~350度の温度で加熱すると、蒸気というよりは薄い煙が出てきます。フィルターにたばこの煙を集めるのですが、薄茶色のタールは存在していると我々研究者は考えています。
池脇
すっかり違うというよりは、少し薄めの煙というイメージなのですね。
稲葉
おっしゃるとおりです。
池脇
この新しいたばこは、海外と日本で使われているタイプに特徴の違いがあるのですか。
稲葉
海外ではニコチン入りの電子たばこを販売できるので、電子たばこのほうが多く普及しています。一方で、たばこの葉っぱを使う加熱式たばこは、日本や韓国と限られた国でしか普及していないのが現状です。
池脇
従来の紙巻きのたばこから、こちらの新しいたばこに移るというか、単独で使用するのか、あるいは両方併用しているのか、どうなのでしょうか。
稲葉
国民健康栄養調査というのを厚生労働省で行っておりまして、喫煙者の使用しているたばこの製品の割合を見ています。男性だと60%が紙巻きたばこに対して、加熱式たばこが30%、残りの10%は紙巻きと加熱式の両方を使っている方がいます。
池脇
案外、併用する方も多いのですね。紙巻きと加熱式たばこの併用でしたが、紙巻きと電子たばこを併用する方もいるのでしょうか。
稲葉
そのとおりです。
池脇
これは、吸えない状況でたばこを吸いたいということで併用されているのでしょうか。
稲葉
おっしゃるとおりだと思います。
池脇
一方で、海外の場合は電子たばこはニコチンが含有できるので、どちらかというとそちらのほうが海外ではメインですか。
稲葉
はい。
池脇
日本を含めて幾つかの国では、どちらかというと加熱式のほうが多く使われているという違いがあることがわかりました。
今回の健康への影響に関しての質問ですが、まず電子たばこはニコチンが入っていなければOKかなという感じもするのですが、どうでしょう。
稲葉
電子たばこは難しいところがありまして、電子たばこはその装置によって性能が違います。出力の大きい電子たばこを使ってしまいますと、食品添加物で使われているプロピレングリコール、グリセロールが主成分で、90%ぐらい含んでいるのですが、これが熱分解によってホルムアルデヒドというようなカルボニル類に変換されてしまい、その曝露量が実は紙巻たばこよりも高くなる可能性があるので、製品の選び方によってリスクは大きく変動してしまいます。
池脇
高出力はそういう懸念があるのですね。一方で、低出力であればあまり考える必要がないともいえますか。
稲葉
日本の場合はそうかもしれません。一方で、海外だと大麻入りの電子たばこが普及している国もありますので、使い方によって気をつけなくてはいけない。日本はそういうのは守られているので、今は安全だと考えています。
池脇
電子たばこはニコチンフリーだったらOKかなと思ったのですけれども、高出力はそうでもないということですね。
次に加熱式たばこですが、これはたばこの葉を使っていますので、健康とはいえないような気がしますが、どうでしょう。
稲葉
加熱式たばこの一番の特徴は、低い温度帯でたばこの葉っぱを加熱しているので、燃焼による一酸化炭素などの有害化学物質の発生量が抑えられると一般的に考えられています。
事実、そういった部分もありますが、まず1点目として、たばこの葉っぱに含まれているニコチンは実は150度で葉っぱから主流煙に移ります。加熱式たばこもニコチン量は紙巻たばこと同等と考えてよいかと思っています。
池脇
ニコチンが少ないのが売りなのかなと思ったのですが、そうではないということですね。
稲葉
おっしゃるとおりです。もうひとつは、発がん性物質のたばこ特異的ニトロソアミンというのがたばこには必ず含まれています。加熱式たばこと紙巻たばこはそれを90%削減しているといいますが、昨年度私たちが日本で販売している加熱式たばこ60製品以上を調査したところ、銘柄によっては、紙巻たばこと変わらないぐらいの主流煙の量になっているというのが煙の成分分析からもわかってきました。
池脇
先生方が独自に調べると、実際の宣伝文句とは必ずしも一致しない、むしろ健康被害を及ぼす可能性があるというデータが出てきたわけですね。
稲葉
はい。使っている製品の比較によって、大きく変動するので、一概に加熱式たばこが紙巻たばこよりも有害性が低いとはいい切れない状況になっています。
池脇
健康に対する影響、健康被害をいうにあたっては、新型たばこは日本に入ってきてそれほど長くないので、有害性を証明するだけの十分な時間がない、逆にいうと有害だということも言いにくい気がします。
稲葉
本当に先生のおっしゃるとおりです。なぜかといいますと、日本人の喫煙者は喫煙歴が20年以上と長いのです。そうすると加熱式たばこは販売されてから約10年がたっていますので、加熱式たばこだけを10年間吸っている人の健康を調査するというのがなかなか難しい。今、加熱式たばこを吸っている人も、その前は紙巻たばこを5年、10年吸っている方もいますので、どちらの影響なのかが今はみえない部分があります。
池脇
禁煙しようという方で、一気に禁煙するのは自信がないから、こういう新型たばこを利用してという方もいるようですが、どうでしょう。
稲葉
実は、喫煙者の方に研究にご協力いただいて、加熱式たばこ、紙巻たばこの喫煙者の方の生体中のニコチンの代謝物の量を比較しました。その結果、残念なことに有意差はない。要するにニコチンの曝露量は加熱式たばこであっても変わらないので、おそらく禁煙というのは加熱式たばこに切り替えても難しいのではないかと考えています。
池脇
やはり意を決して禁煙というのが正解ですね。
稲葉
そう思います。
池脇
たばこは特定の場所でしか吸えませんが、新型たばこを吸える場所は比較的広くあるのでしょうか。
稲葉
改正健康増進法というのが2020年4月から施行されておりまして、その中で加熱式たばこ専用室という枠組みがつくられておりますので、比較的加熱式たばこを吸う環境というのは、屋内で整えられているのが日本の現状です。
池脇
とはいっても、受動喫煙の心配があるので、非喫煙者と一緒の空間で吸うのはやるべきではないということでしょうか。
稲葉
そう思っています。
池脇
本日は新しいたばこに関してお話しいただきました。日本では特に加熱式たばこになりますが、先生方は、業界に対して危険性を提示するという立場で、今後ともその活動を続けて、できれば禁煙社会を実現できればと思います。どうもありがとうございました。