ドクターサロン

池田

新庄先生、溶連菌感染症について質問です。まずA群溶連菌感染症とはどのような疾患でしょうか。

新庄

A群溶連菌という菌による感染症ですが、主に急性扁桃炎・咽頭炎(以下咽頭炎)です。それから膿痂疹という皮膚の感染の原因菌があります。それだけで済めばいいのですが、中には耳鼻咽喉科的な少々重症な病気や、皮膚の深いところまで炎症がいったり、中には劇症型溶連菌という壊死性筋膜炎やショックなどを伴う感染症も起こしてしまうような菌です。

池田

この菌自体は、子どもたちには常在菌でついているものなのでしょうか。

新庄

子どもによっては常に確かに常在菌のように喉に住んでいることも報告されていて、報告によっては5%や15%の小児が保菌しているともいわれています。その子たちにとっては常在菌になっているのかもしれません。

池田

その子たちは特に症状がないのですね。

新庄

そうですね。

池田

これが感染症を起こした場合、どのような症状になるのでしょうか。

新庄

一番多いのは咽頭炎です。喉に炎症が起これば咽頭炎ですし、皮膚の傷があるところに感染を起こせば膿痂疹や蜂窩織炎が起こります。

池田

一般的に喉についた場合、例えばほかに鑑別としてウイルス感染症のようなものがありますね。それと見分けるところはどの辺でしょうか。

新庄

扁桃の白苔ですね。扁桃の白苔の付き方で区別をする医師もいますが、実際は難しくて、咽頭の迅速抗原検査で溶連菌かアデノウイルスかは区別が可能になっています。それ以外だと、EBウイルスや周期性発熱症候群などは小児でよく診るのですが、そういったものは咽頭の検査をしてもわかりません。

池田

咽頭のぬぐい液を通常のインフルエンザのようなキットで検査するのですか。

新庄

そうですね。あのようなキットです。

池田

症状はあるし、溶連菌が出た場合、先ほど、5%ぐらいのお子さんで常在菌的についているということですが、これはどのように考えるのでしょうか。

新庄

何らかの症状があった場合、本当にその溶連菌が原因なのかというのはなかなか見分けがつかなくて、実際にはほかの感染症を起こしているかもしれないと思います。ただ、熱があって咽頭痛があって溶連菌が出ているとなると、一応そちらはペニシリンで治療しておこうかと思います。例えばほかの感染を合併していたとしても、だいたいそれはウイルス感染で対症療法になるので、とりあえず溶連菌のほうはしっかり治療しておこうという考えになるかと思います。

池田

念のため、たたいておくというかたちですね。

新庄

そうですね。本当に保菌であれば、あまり意味はないのですけれども念のためですね。

池田

でも症状があるということですよね。

新庄

そうですね。症状があった場合は「本当の溶連菌感染症」と「保菌者のほかの感染症」と区別できませんので。

池田

あまり咳は出ないのですか。

新庄

はい。咳が出ないというのが溶連菌の特徴です。

池田

スコアリングシステムというのがあるのでしょうか。

新庄

首が腫れている、喉に膿がある、熱がある、陽性の基準のほかに咳がないというのが溶連菌を疑う所見になるので、そういったもので点数を付けて、溶連菌か、そうではないかを判断するスコアリングがあります。

池田

それは便利ですね。

3歳以下の乳幼児も罹患するのでしょうか。

新庄

2023年の国立感染症研究所のデータでは、溶連菌全体に占める3歳以下の割合が20%ぐらいと報告されています。

池田

けっこう高いですね。成人あるいは大きな学童はどうなのでしょうか。

新庄

そのデータによりますと、全体の5%ぐらいが15歳以上と報告されています。

池田

けっこうあるのですね。子どもの病気のようなイメージがありますが、中学生以上になってもあり得るということですね。

新庄

咽頭炎はありますね。

池田

高校生になっても、咽頭炎がある場合は溶連菌感染も疑わないといけないということですね。

新庄

そうですね。ほかの菌によることもあるようですが、溶連菌も鑑別のひとつになります。

池田

それからもうひとつの質問で、8月に感染が少ないのはなぜでしょうか。

新庄

おそらく8月は学校や幼稚園がお休みで、子どもたち同士がそこまで濃厚に接触しないからだと考えられます。

池田

なるほど。この感染経路は何ですか。

新庄

飛沫だと思います。たぶん咳はあまりしないのですが、一緒にいるとうつりやすいです。

池田

近くにいて、じゃれあったり、しゃべったりして飛沫で感染していくということですね。それで8月は夏休みがあるから感染が少なくなるのですね。

新庄

あくまで流行曲線からみた推論ですが、そのように考えるのが妥当かなと思います。

池田

ほかの月は感染が比較的多いですよね。

新庄

秋から冬にかけて多くて、春も夏前も多いという感じです。

池田

次に腎炎に対する質問です。実際に先生が腎炎患者を診る状況はどのような状況なのでしょうか。

新庄

溶連菌の腎炎は有名ですが、実際には先にむくみや蛋白尿などで見つかって、後で溶連菌があったのかどうかを調べるケースのほうが多く、溶連菌の人を診ていたら腎炎になったということは経験的にはあまりありません。

池田

腎炎になる年齢というのはどのくらいですか。

新庄

だいたい2~12歳と教科書的にはいわれています。

池田

ある程度、自我が目覚めて、自分で訴えることができるようになる年齢ということですね。

新庄

そうですね。

池田

採尿が難しい年齢の小児にはどうしたらいいですか。

新庄

その年齢で腎炎は少ないですが腎炎や尿路感染症が疑われて尿検査というのは必須になると思うので、その場合は男の子用か女の子用の尿バッグをつけて、1回分でいいので尿をためてもらって出すという感じになります。

池田

尿バッグをつけておいて、遊んでもらって水を飲んでもらったりしておいて、おしっこが出たら検査するということですね。

新庄

そうですね。そうしないと、なかなか小さなお子さんも訴えることができません。

池田

腎炎に対する治療法はどのようにされるのですか。

新庄

腎炎は対症療法なので、水分や塩分、血圧の管理といったものが主な治療になります。その頃には溶連菌がいることはあまりないので、いれば治療しますけれども、いない場合は抗菌薬を使うことはないと思います。

池田

病歴を聞いてわかることになると思いますが、腎炎になるのは感染してから何日ぐらいなのでしょうか。

新庄

これも教科書的には10日ぐらいといわれていますが、幅があります。咽頭炎の後は10日ぐらいで、例えば皮膚の感染症を起こした後は3週間ぐらいといわれています。

池田

間が空くのでこれはよけいにわかりづらいですね。

新庄

そうですね。

池田

最後の質問です。ペニシリン系よりもセフェム系のほうが投薬期間は短いのに、なぜペニシリン系が第一選択薬になっているのでしょうか。

新庄

ペニシリンのほうが昔から使われていて、エビデンスもあって、リウマチ熱を予防する効果もいわれているので、そちらが第一選択になります。セファロスポリン系のほうが除菌率は高いとは思いますが、どのぐらいリウマチ熱を予防するかのデータはあまりないので、皆さん好んでペニシリンを使うようです。実際、リウマチ熱はほとんど見なくなってしまったので、どこまでリウマチ熱を重視したらいいかはわかっていません。

池田

先ほどのガイドラインでもペニシリンが第一選択なのでしょうか。

新庄

そうですね。

池田

もしペニシリンに対するアレルギーがある場合はどのように対処されるのでしょうか。

新庄

感受性がよさそうであれば、マクロライド系やまったく別の系統の薬を使いますが、あまり強いアレルギーでなければ、別のセファロスポリン系、β -ラクタム薬を使うことが多いかと思います。

池田

やはりマクロライド系よりはこちらのほうが切れがいいということですよね。

新庄

そうですね。

池田

静菌的なものと殺菌的なものということになるのですね。

もうひとつお聞きしたいのは、これは免疫がついて、生涯感染しないものでしょうか。

新庄

そんなことはありません。いろいろな型があるので、何回も感染することがあります。

池田

ほかの溶連菌の型のものに感染するのですか。

新庄

そうですね。

池田

最近、高齢者に特に多い劇症の溶連菌に感染したとありますね。あのような方たちは小さい頃に溶連菌にもなっているかもしれないけれども、また感染しているのですね。

新庄

もちろんなっていると思います。

池田

免疫がついていない、あるいはできないので、また感染してしまうということなのでしょうか。

新庄

そこはなかなか難しいのですが、昔かかったのと同じ型なのかといったものはデータとしてはないと思います。A群だけではなくて、G群などほかの型の溶連菌でも起こるので、昔の溶連菌の既往がどうだったかというところはまた別の問題があると思います。

池田

ありがとうございました。