ドクターサロン

 「初診外来」の英語表現はfirst visitではなく、initial visitとなります。そして「再診外来」の英語表現はre-visitではなく、follow-up visitとなります。日本語の「再診」には「再び診る」というイメージがありますが、英語のfollow-upには「前回の続きを行う」というイメージがあります。
 英語圏のfollow-up visitでは、その冒頭で“How have things been since I last saw you?”「前回お会いしてからの調子はいかがですか?」という表現をよく使います。このthingsには症状だけでなく、「生活全般」という意味があり、“How have things been going?”のようにも使えます。そしてこのthingsは特定の症状やトピックに焦点を当てて使うこともでき、“How are things with your back?”「腰の具合はいかがですか?」や“How are things with your blood pressure?”「血圧の具合はいかがですか?」のように使うこともできます。
 患者の主観に焦点を当てた表現としてsenseというものもよく使われます。これには「実感」や「手応え」といったイメージがあり、先ほどのthingsと組み合わせて“What’s your sense of how things are going?”「ご自身としては最近の調子どう感じていますか?」のように表現することができます。そして呼吸器の問題を抱えている患者に対しては“What’s your sense of your breathing?”のように、精神的な問題を抱えている患者に対しては“What’s your sense of your mood?”のようにも使うことができます。このようにfollow-up visitの冒頭では、客観的指標よりも患者の主観に焦点を当てた表現を使うことが一般的です。
 「高血圧hypertensionや「糖尿病diabetes mellitusのような疾患の場合、自宅で計測した数値を確認する必要があります。そのような場合、いきなり数値を尋ねるよりも“Have you been checking your blood pressure at home?”や“Have you been checking your sugars at home?”のようにcheckという動詞を使い、まずは自宅で計測しているかを確認する質問から始めるのがよいでしょう。
 具体的な数値を尋ねる際には、“What kind of numbers have you been getting?”のようにkind ofという表現を使うことで、厳密な数値を尋ねるような印象を回避することができます。血圧の数値に関してはreadingsという表現もよく使われるので、“What kind of readings have you been getting?”という表現がよく使われます。また“Any readings you were worried about?”「気になった数値はありましたか?」のように、患者の主観に焦点を当てた表現もよく使われます。
 血糖値に関しては、「数値の推移」に着目した“How have your sugars been running?”という表現がよく使われます。このrunには「推移する」や「流れる」というイメージがあるので、runny nose鼻水」やthe runs下痢」といった表現でも使われます。また血糖値に関しては、“Any big swings?”「大きな変動はありましたか?」や“Any hypos at all?”「低血糖はありましたか?」のほか、“Have they been all over the place?”「ばらつきがありましたか?」のような定型表現もありますので、これを機会に覚えておきましょう。
 患者が数値の記録を持参している場合には、“Let’s have a look at your logbook.”と言いましょう。そして数値を確認する際には数値そのものではなく、その変化に着目した表現を使います。ヘモグロビンA1cの数値が上昇している場合には、“Your HbA1c has crept up slightly.”のようにcreep up気づかれずに上昇する」という表現がよく使われます。小児科で「ハイハイする」という場合、お腹を地面につけるものはcrawlと言いますが、お腹を地面から浮かすものはcreepといいます。ここからcreepには「忍び寄る」というイメージがあり、creep upには「知らないうちに上がっている」という意味があります。数値が下がっている場合にはcreep downという表現も使われるのですが、その場合にはよりポジティブな“Your HbA1c has improved slightly.”のような表現のほうがよく使われます。そして数値の変化に関してよく使われるのがheadという動詞です。ですから数値が悪くなっている際は、“It’s heading in the wrong direction.”と、そして良くなっている際は、“It’s heading in the right direction.”と表現します。
 病状を尋ねる際にも、変化に着目した表現が多く使われます。回復が期待されているfollow-up visitでよく使われる質問表現として、“Any setbacks?”「調子を崩したことは?」というものがあります。このsetbackはsetとbackから成る語で、「後ろに置かれること」、すなわち「回復が後戻りすること」を意味します。再診外来では頻回に使われる表現ですのでぜひ覚えておいてください。喘息やCOPDの「増悪」はexacerbationと表現されますが、膠原病などの「増悪」ではflare-upという表現のほうが一般的です。そしてこのflare-upは会話では「(症状の)ぶり返し」という意味でもよく使われますので、「症状がぶり返したことはありますか?」と聞きたい場合には“Any flare-ups?”という表現が使われます。ただし、ここではflare-upsのように複数形になることに注意してください。
 この“Any...?”という簡潔な質問表現は、follow-up visitでは特によく使われます。長い文章を使って丁寧に尋ねる初診とは異なり、再診ではすでに共有された前提の上で会話が進むため、軽やかなリズムで“Any coughs?”や“Any breathlessness?”のような簡潔な質問表現が多用されます。
 薬について尋ねる際、特に有用なのが、“How are you getting on with the medication?”という表現です。このget on withは本来人間関係に使われる動詞ですが、「薬とうまく付き合っていますか?」というニュアンスで使われています。「この薬は副作用が少ないです」は、英語では“This medication is well tolerated.”のようにtolerateを使って表現しますが、これを使った“Are you tolerating the new medication?”や“Any trouble tolerating it?”という表現もよく使われます。また患者がしっかりと服薬しているかどうかを英語ではmedication adherenceと呼びますが、これを確認する際にはどのような英語表現が使われるのでしょうか。様々な表現がありますが、“Many people find it hard to take tablets every day. How's it been for you?”のように尋ねると、患者さんへの心理的負荷が少なくなると考えられます。
 検査結果を説明した後、「今お話しした内容は、これまで感じていたことと合っていますか?」のように質問して、検査結果と患者の実感をすり合わせる必要が生じますが、この場合には“Does that line up with what you’ve been experiencing?”のようにline up with一致する」という動詞を使ってみましょう。
 患者さんに検査や治療を提案する際には、命令形ではなく協働型の表現が好まれます。例えば検査結果を確認した後には、まず“Let's have a look at where we are.”とLet'sを使って切り出します。そして数値に変化が見られる場合には、“There's enough here for me to justify doing it.”と根拠を示し、次に“I'm going to adjust the dose slightly.”と方向性を示します。さらに一方的に決めるのではなく、“That sounds like a reasonable plan, doesn’t it?”のように合意を確認します。そして最後に“Let’s see how you get on.”と続けることで、その後の経過へと自然につなげます。
 生活習慣に関する助言では、どのような表現が使われるのでしょうか。例えば体重管理が課題となっている場合、まずは“If I'm being honest,”と前置きしてから“The number one thing you can do is lose some weight.”のように伝えて優先度の高さを伝えます。この“If I’m being honest,”という表現によって、率直さを伝えることができます。
 慢性疾患の再診外来では、身体症状だけでなく心理面にも配慮が必要です。“Living with a long-term illness can be tough.”「慢性疾患と付き合うのはたいへんですよね」のような表現も、自然に言えるようにしておくとよいでしょう。また血糖値のコントロールがうまくいっていない患者さんに対しては“Stress and blood sugar are closely linked.”や“Stress can push your sugars up.”のような表現を使うことで、患者さんへの心理的負荷を下げることができます。
 心理的負荷の程度を確認する際には、“Are you coping?”や“Are you bearing up?”といった表現を使いましょう。また“Has it been getting on top of you?”という表現は、「手に負えなくなっていませんか?」というニュアンスを持つ自然な質問です。
 行動変容を促す場面で役に立つのが“Sooner rather than later.”という表現です。これは「緊急ではないが、早めに対応したほうがよい」という含みを持つ非常に便利な表現です。そして実際に緊急の対応が必要な際には、“This could cause serious problems if untreated.”や“We need to get on top of this quickly.”のような表現を使い、緊急性を明確に伝えるようにしましょう。
 患者さんに安心感を与える英語表現も幾つか知っておきましょう。“We'll keep an eye on it.”や“Let's monitor it for now.”は、どちらも「様子を見ましょう」を意味するとても便利な表現です。
 英国では、外来診療の多くをgeneral practitioner(GP)が担っています。そして英国のGP文化を語るうえで欠かせない概念の一つがsocial prescribingというものです。これは薬そのものを処方するのではなく、「社会的資源を処方する」という発想を指す表現で、英国ではGPのあいだで広く共有されている概念です。
 実際には“Sometimes tablets aren’t the only answer.”“There may be other ways to support you.”“We can look beyond medication.”といった表現を使って導入してから、“You might benefit from...”という表現を用いて社会的資源を提案します。具体的には“You might benefit from joining a community exercise class.”や“You might benefit from meeting others in a support group.”のように続けるのです。もちろんこういった提案が押し付けにならないように、“It's just an option.”や“It's up to you.”といった一言を添えることも大切です。
 こうした英国のGP文化に興味を持たれた方は、BBCが制作している“GPs: Behind the Closed Doors”というYouTubeチャンネルを視聴されることをお勧めします。ここでは英国のGPによる実際の診察の様子を視聴することができます。いわば英国での「本物」の診療英会話ですので、リスニング教材としては決して易しくはありません。しかしYouTubeにはtranscript機能があり、“Show transcript”をクリックすると画面右側に発話内容がテキストで表示されます。リスニングに自信のない方でも、テキストを参照しながら理解を深めることができます。本日ご紹介したようなfollow-up visitで役立つ英語表現の宝庫ですので、ぜひ活用してみてくださいね。