山内
本日はコルヒチンのある意味適応外での使用に関しての質問です。
最初にこの質問は、心臓のアブレーション術後にコルヒチンが処方されてきた方がいますということからなのですが、心膜炎、地中海熱など痛風以外でもコルヒチンを用いる場合があると思います。こういった術後の心房細動抑制といった辺りの有用性はあるのでしょうかということですが、まず先生、これをお聞きになっていかがですか。
益田
心血管は私の専門外にはなるのですが、私の知っている限りでお答えすると、質問にあるように、心血管関係だと心膜炎に対して急性心膜炎や慢性の心膜炎、あるいは再発性の心膜炎に対してコルヒチンを用いるということはガイドラインにも載っているという話は聞いたことがあります。エビデンスも幾つか出ていまして、開心術後の心膜炎予防や開心術後の弁置換やCABGなどの後に術後の心房細動が有意に低下したという研究結果はあります。
アブレーション後(開心術後ではなくて)の心房細動の再発予防目的でのコルヒチン使用というのも論文が幾つかありまして、やはり研究されています。コルヒチンが直接の心房細動予防になるか、心房細動再発を抑制する効果があるかどうかについては症例数の問題もあり、RCT(二重盲検での研究前向き比較)などのエビデンスの高いものではないのですが、アブレーション後の炎症性の心膜反応を抑えるので、心房細動の再発を抑制する効果があるかもという示唆というかたちでの研究論文はあるようです。
山内
荒唐無稽な話ではなくて、一応そういったトライはされているということですね。
益田
そうだと思います。
山内
例えば昔からベーチェット病や皮膚疾患にも使われているようですし、地中海熱の辺りも、ある程度経験的には有効だったと見てよいのでしょうか。
益田
そうですね。私は膠原病、リウマチが専門ですが、自然免疫系の炎症性疾患である家族性地中海熱、あるいはベーチェット病も白血球が有意に炎症に影響するといわれています。ベーチェット病でも皮疹や関節炎に関してコルヒチンを使い、有効な場合があるといわれています。地中海熱の治療では診断・治療でのコルヒチンの有効性というのはいわれています。
山内
2番目の質問ですが、それらに対してどのような機序を期待して使われているのでしょうか。まず、これは抗炎症なのか、あるいはほかの何かなのか何をねらっているのでしょうか。
益田
抗炎症といってもいろいろな段階がありますが、特に好中球が関わる、あるいはそれから先の、好中球が関わってくるインフラマソームの活性を抑えたり、その結果、炎症のカスケード、IL-1βなどの産生を抑えたりすることを期待しているのだと思います。好中球の遊走や脱顆粒の抑制についてもコルヒチンの作用といわれています。
山内
3番目の質問では、コルヒチンの作用機序として、微小管重合阻害による白血球遊走阻害というものがありますが、具体的にどういったことでしょうかということです。
益田
けっこう難しい質問ですね。微小管というのはレールみたいなもので、白血球が微小管をつたって、細胞内で形態変化したり、移動していくようなものだと思っていただくといいと思います。コルヒチンが微小管に重合してしまって、それを止める、すなわち白血球が動けなくなってしまう。コルヒチンの作用は当然それだけではないと思います。ですが、簡単にいえば、そこで炎症の先に行くのを止めてしまうことがあるのだと思います。
山内
ある意味、白血球が動けなくなるということですね。
益田
本当に簡単にいえばということです。
山内
白血球の機能を抑えているということはないのでしょうか。
益田
機能を抑えることもあると思います。
山内
サイトカインの一部に、というかたちですね。
益田
そうですね。
山内
その辺りはある程度今までわかっていることなのですね。4番目の質問は、白血球の機能を阻害してしまっている場合には感染症系の炎症に用いるのはよくないのではないかということです。これはそうなりますか。
益田
もちろんそうだと思います。やはり白血球の遊走貪食という作用は感染症に対しての防御反応として必要なものですから、これは阻害しないほうがいいですよね。ですから感染による炎症に対しては使わないということなのではないでしょうか。
山内
ある意味、感染ではないものの炎症を抑える、そういう力が実はあるような気がしますが、そのわりには広くは使われていないようです。例えば炎症性腸疾患などへの使用は可能性があるのではないかということですが、この質問についてはいかがでしょうか。
益田
コルヒチンの主たる副作用は下痢です。今までの心血管病変での研究でも副作用として下痢が一番多いです。であれば炎症性腸疾患で下痢を起こすようなことはしたくないでしょうし、抗炎症効果というのは本当に限局的かなという気もします。あとは炎症性腸疾患の主要な炎症の経路であるTNFやIL-17やIL-23などが関わってくるというと、コルヒチンが働くところとは少々違うのかなと感じます。
山内
例えば感染でない炎症として、普通によく骨格筋とか、整形外科関連方面で使えそうな気もしますがこの辺りはいかがなのでしょうか。
益田
整形外科関連といえば、変形性関節症、変形性膝関節症に対してコルヒチンを使った研究があります。結局のところRCTで有意差がなく結論が出なかったと思います。なぜかというと、変形性膝関節症とかで、最初の炎症期というのはIL-1βがけっこう上がっているという病態があるので、それをブロックしようとしてコルヒチンはどうかという話があったのですが、結局アウトカムを何にするかと、炎症期かどうかというのも関係しているのか、理由はわからないのですが明確な結果が出なかったらしいです。
山内
そうですか。
最後に、コルヒチン本来の、昔からの痛風への使い方ですね。現在、痛風に対しては直接的に第一選択薬としては使われていないと考えてよいですか。
益田
第一選択薬はもう少し強い抗炎症鎮痛作用があるNSAIDだと思います。ただ、コルヒチンとグルココルチコイド、NSAIDを加えたこの3つは急性の痛風発作に使うというか、どれか使ってもいいし、組み合わせて使ってもいいというガイドラインになっています。
私の印象としては、コルヒチンは痛風の発作が早い時期でないと炎症を抑えきれないですね。今のコルヒチンの痛風発作に対しての治療といいますと、なるべく早い時期に2錠、そして1時間後に1錠という飲み方で終わりです。これを5錠も6錠も使ったら下痢でたいへんなことになってしまいます。3錠使うものでも下痢になる人はいます。あるいは尿酸値を下げる治療初期の発作予防で、毎日1錠を尿酸降下薬と併用して使うとか、予兆時といって、ちょっとちくちくとして「あ、起こりそうだ」というときに、散らすという意味で1錠を頓服で飲んでもらって発作に至らないようにするという使い方をしています。
山内
どうもありがとうございました。