多田
本日は、わが国で約80万人の方が罹患しており、国内では毎年約1 万5,000人の新たな発症がある関節リウマチをテーマに、その診断、治療目標に関して、昭和から令和への変化を、埼玉医大学長竹内勤先生にお話しいただきます。
先生もかつて示しておられるように、関節リウマチの診療体験は、ここ20年、そして直近の10年間で劇的に変貌を遂げたといわれます。現に2014年に初版として刊行された「関節リウマチ診療ガイドライン2014」も版を重ね、2024年は「関節リウマチ診療ガイドライン2024改訂」が策定されました。
先生、関節リウマチの最近の疾病概念と治療法の変遷を披露していただけますか。
竹内
病気の概念そのものは、古くから自己免疫疾患の中でもコモンディジーズだといわれていました。自己免疫現象がその病気の発症の基盤にあって、そして本体はその自己免疫によって活性化された滑膜細胞の増殖、免疫細胞の増殖によって、関節を構成する骨が壊れていく、免疫が関係する関節破壊性の病気です。
多田
破骨細胞が活発化するのですか。
竹内
そのとおりです。骨が壊れる過程で、正常な骨を破骨細胞で壊して新しい骨に作り変えていくのが本来の生理学的な意味の破骨細胞ですが、これが異常に活性化されてしまって、古くない骨も、新しい骨も壊してしまうのです。
同時に、破骨細胞を活性化するだけでなくて、様々なタンパク分解酵素を放出するので、軟骨細胞も溶けて骨と軟骨が壊れていきます。
多田
痛いと患者さんがおっしゃるので、いかに痛みを止めていくかということは非常に大切であるとは思っていますが、そうなると治療方針が全く変わってきたということでしょうか。
竹内
はい、そのとおりです。痛みは当然、患者さんの日常生活を制限して、最も患者さんがつらいことなので、これは止めなければいけないのですが、痛みだけを止めているとどうなるかというと、その背景にある今の骨が壊れる、関節が壊れるというメカニズムが続いてしまって、知らない間に、痛みは止まっているけれども、関節が壊れるために日常生活動作が極めて不自由になります。場合によっては、寝たきりになってしまうということが起こりました。
多田
私が卒業した頃はアスピリンがよく使われましたが、そういった治療法もまた変わってきたのでしょうか。その辺りの変遷を教えていただければと思います。
竹内
昔は痛みを止めることがまず一番重要だということで、アスピリンをはじめとした非ステロイド性抗炎症薬で痛みを止めていました。さらには、強く炎症を止めるためにその後グルココルチコイドという副腎皮質ステロイドが使われるようになって、その痛み止めプラス、グルココルチコイドで病気の進行を抑えていたのですが、それでも骨は壊れていました。
多田
それで驚いて、どうにかしなくてはいけないということで、世界中でいろいろな方策が出されてきたということですが、この辺りの治療法の変遷はいかがでしょうか。
竹内
そのとおりで、病気の自然歴である関節が壊れることを止めないと、痛みは止めても患者さんのQOLは救えないということで、疾患修飾性抗リウマチ薬、DMARDsと呼ばれる薬の開発が世界で始まりました。
ところが、全く新しいコンセプトでそれが行われたわけではなくて、昔からいろいろなことで、何かこういう薬は関節リウマチの関節に良さそうだ、あるいは関節の腫れを抑えられるという薬が幾つか知られていました。その代表がメトトレキサート(MTX)という、昔の抗がん剤です。今でも抗がん剤ですが、抗がん剤の一種を使い方を工夫して、抗がん剤とは違う少量パルス療法で使うというのがひとつのきっかけになったと思います。
多田
なるほど。MTXを間欠的に使っていく療法を今、専門医が行っているようですが、その辺りももう少し教えていただければと思います。
竹内
例えば、MTXを抗がん剤として使用するのは一度、大量にその薬剤を投与して、すべてのがん細胞を完全になくしてしまおうとするためです。最初は小児の急性リンパ性白血病に対して使われたようですが、この薬にリンパ球免疫系の細胞を殺す力があるのなら、それを少ない量で使ったら、免疫に関係している病気に効くのではないかという研究がされました。最初は乾癬という皮膚の病気に慎重に、1週間に1回だけ、少しだけ投与したところ、どうも効果があるらしいとなりました。その後、関節リウマチにも効果があるということがわかり、その治療法が広がったとされています。
多田
結局、そういった薬がどう作用して破骨細胞に効いたのですか。
竹内
免疫細胞に効くことで免疫細胞が活性化して破骨細胞の活性化が抑制される。また、滑膜細胞という関節を構成している細胞にもその薬が効いて、関節の腫れが治まるといったようなことで、いろいろなところに作用点があって、結果として効きました。
多田
今はMTXがアンカードラッグというか基盤の薬なのですか。
竹内
最も大切な薬だといわれています。
多田
それを基盤として投与しながら、ほかの薬も使っていくということでしょうか。MTXの効きが悪い場合はどうすればいいですか。
竹内
MTXは非常にいい薬ですけれども、量を増やしていくと副作用が出てくるという意味で制限があるのですね。当然、もともと効かない方もいます。そうすると、なぜ免疫が活性化しているのか、破骨細胞が活性化しているのかというメカニズムがわかってきまして、そこには炎症性サイトカインが非常に多く産生されて、それらが関わっているだろうということが発見されました。
1990年代の終わりぐらいから、炎症性サイトカインの中のTNFと、IL-6受容体に対する生物学的製剤が次々に開発されるようになり、2000年代からこれが世界的に広く使われ、今では標準ガイドラインの中に、MTXがだめだったら次に使う薬として位置づけられています。
多田
いわゆる生物学的抗リウマチ薬というのでしょうか、それらはピンポイントに効くのでしょうか。
竹内
そうです。
多田
では比較的使いやすいというか、副作用も少ないのでしょうか。
竹内
MTXと比べると、肝臓や腎臓に対する負担がありませんし、吐き気や胃腸障害というものも少ないですね。
ただし、それをピンポイントで抑えることによるデメリットとしては、本来TNFもIL-6も生体防御に関わる重要なサイトカインなので、それを抑えてしまうと、TNFの場合、結核をはじめとした感染症が起きやすくなります。IL-6も同じで、やはり感染症の副作用はある程度起こる可能性があります。
多田
そうすると使わなければいけない患者さんに対して、例えば慢性の感染症があるような患者さん、結核やウイルス性の肝障害など、患者さんの背景については前もって把握し、副作用の可能性を通達しておかなければいけないということですか。
竹内
そうですね。副作用チェックは必ずして、感染症があるのだったらまずそれを完全に治療する。コントロールした後にそういう生物学的製剤を使うようにします。
多田
開業医ならば、どの段階で専門医に相談すればよいでしょうか。
竹内
ひとつは、ご自身で使った経験があれば生物学的製剤、あるいは、生物学的製剤の後継品として、経口で同じような効果が出るJAK阻害薬がありますので、それのどちらかを使います。その経験がなければ、専門医にお願いして、安全性のスクリーニングを含めてやっていただくのがいいと思います。
多田
そのように随分治療内容とともに対処する方法も変わってきたということでしょうか。
竹内
そうです。しかも重要なのは、例えばMTXが効かないときに、1、2年それを続けるのではなくて、半年ごとにその効果を判定し、効かなければ次のステップに進むということが決まっていますので、紹介のタイミングは明確ですね。
多田
その効果がみられなければ、薬物の増量ということも我々は次に考えますが、増量しても効かない場合ということですか。
竹内
はい。MTXは4~6㎎、標準的には6~8㎎ぐらいからスタートして、最大用量が週16㎎なので、そこまで使った上で効果を判定するということになります。
多田
非常に高価な薬を用いるということもありますので、患者さんに対してはどのようなアプローチをしなければいけないのでしょうか。
竹内
基本的にはMTXで治療をします。これはそんなに高くないですが、その次のステップになると、やはり高価になりますね。すると医療費負担の問題など様々なことが出てきますので、多少の負担増になったとしてもなおかつメリットがあるということを十分説明していただく必要があると思います。
多田
関節リウマチそのものは難病指定はされていないので、国の補助はないけれども、高額療養費制度でカバーできるということですね。確定申告による医療費控除申請も可能ですね。
竹内
そのとおりです。
多田
そういったことのほかに、例えば関節が非常に変形してしまったような患者さんに対してほかの療法はあるのでしょうか。
竹内
大関節であれば、例えば膝などでは特に整形外科的な手術が非常に進歩しました。リウマチそのものでは比較的少ないですが、股関節に対しては人工関節置換術というものがあり、壊れてしまったら人工的な機能で補完するという方法があります。
さらに指の関節などの小関節にも手術的なアプローチが非常に発達しまして、指の関節にも人工関節が入れられるようになりました。足は足の骨の形を整えるような手術があって、今では、骨を切らずに上手に再建して、つま先立ちができるような関節形成術も進歩しましたので、様々な手術療法が進歩しています。
多田
では患者さんは悩むことは悩むわけですけれども、悩み切ることはないということでしょうか。
竹内
専門医に相談していただければと思います。
多田
本日は非常に貴重なお話をどうもありがとうございました。