ドクターサロン

池脇

本日は膠原病の質問をいただきました。前回先生にドクターサロンに来ていただいたときには、巨細胞性動脈炎という具体的な疾患の質問をいただいたのですが、今回は膠原病診療について教えてくださいということです。

日常診療で診ている患者さんの中に膠原病の患者さんが埋もれている場合、どうやって拾い上げたらいいのかという質問です。

まず、基本的なところですが、膠原病はどういう疾患なのかから教えてください。

平野

まず、大きな捉え方で話をさせていただきます。膠原病は、炎症が長期にわたって全身的に波及しうる病気です。炎症ですから、発熱や関節痛、皮疹といったものから、内臓に至っては、腎臓、神経、筋肉、肺など、炎症による攻撃の対象はどこでもありうることをイメージします。でもこれだけですと漠然としてしまいますので、例えば骨びらんを伴った関節破壊の特徴を捉えて関節リウマチ、あるいは蝶形紅斑、血球減少、低補体、もろもろの特徴を捉えてSLEというように細かく分類がなされています。

池脇

そうすると、共通するのは全身性の慢性炎症が起こっているということですね。

平野

そうです。私たちも最初、熱や関節痛や皮疹があるとしても、発症からの経過を念頭に鑑別をしていきます。例えば、感染ですとおよそ1~2週間、長くても3週間ぐらいでしょうか、でも膠原病は月単位あるいは年単位といった長い経過で持続的あるいは断続的に続いていくのが、経過の上での大きな鑑別になります。

池脇

慢性というと、咳嗽でもありますよね。急性期でしたら感染症による咳ですが、8週間以上ではほかの疾患を考えるのと同じで、慢性炎症も、短期間であれば考えにくいけれども、続いている状態では膠原病を考えるということでしょうか。

平野

はい、おっしゃるとおりです。確かに膠原病でも、単周期型という短い期間で1回だけ起こるパターンもあるのですが、それはそれで、たとえ膠原病から来たものであってもそんなに恐れることはなく、経過観察ないしは対症療法でよいと思います。でも繰り返す場合、あるいは進行性に悪化するような場合は膠原病に対する本格的な治療の対象になってきます。

池脇

では、膠原病を診断する場合に、どういうポイントを疑ったらよいのでしょうか。

平野

かなり間口が広いので、なかなかコンパクトに申し上げるのは難しいのですが、膠原病を診断するプロセスにおいて、必ず私たちがやっていることは、膠原病とは疑ってはいながらも、感染あるいは腫瘍など、ほかの疾患カテゴリーも横目で見ながら鑑別を進めています。といいますのは、例えば感染や悪性腫瘍をきっかけに膠原病が発症することもありますし、治療においても、もしそういったものが併存していた場合は治療の内容も少し変えなくてはいけませんので、必ずその3つの疾患群を診た上で総合的に判断しています。

ただ、膠原病の診断を進めていく上での注意点である、特異抗体(いわゆる自己抗体)に関して、確かに感度・特異度が高いとか言われていますが、膠原病だから決まった抗体が必ずしも出ることはなく、あるいは逆に膠原病以外の疾患でも自己抗体が陽性になりうるということも念頭に置くことも必要かと思います。

つまり、特異抗体が陽性なので膠原病だろうと思っても、それからあえて離れて、膠原病以外の疾患の鑑別を必ず行っていくことが診断の上でとても大切かと思います。

池脇

私が膠原病を疑って専門医に依頼したときにも、採血のバイオマーカーが疑う根拠だけれども、診断はいろいろなものを加味するのだと同じことをいわれました。

平野

分類基準(診断基準)を見ますと、必ず身体所見とバイオマーカーが対になっていると思います。そういったことで、膠原病は大局的に見た上での総合的な判断も求められるかと思います。

池脇

膠原病の疾患によっても多少、年齢・性別の分布は違うにせよ、女性、特に若い女性に多いというイメージがあります。

平野

膠原病は一般的には若い女性、生理のある年代(初潮から閉経まで)に多いのですが、例えばANCA関連血管炎やリウマチ性多発筋痛症など、どちらかというと高齢の方に起こりやすいものもあります。膠原病も疾患によって、好発年齢は少し変わってくると思います。

池脇

そういう意味では、疑うべきポイントは、一般の医師も測れる血液のバイオマーカーを利用するのも大事ですが、疾患ごとに身体所見も含めてということなのでしょうか。

平野

はい、そうです。やはり付随した所見がないと、意外に違っていることが多いです。特異抗体がいろいろ出てきて、それに見合うだけの身体所見がなかった場合は、例えばリンパ腫などの悪性腫瘍や結核やウイルスといった感染など、ほかの疾患カテゴリーのものも一度検討する必要はあると思っています。

池脇

疑うポイントと多少重なるかもしれませんが、診断はどういうアプローチをしたらいいでしょうか。

平野

まずやはり経過が長い、あるいは繰り返すということ。あとは身体所見を見て多彩な像を見る。バイオマーカーも抗核抗体をはじめ、そういったものが陽性であった場合は、ぜひ一度ご相談くださればと思います。

池脇

実地医家が診断を含めてどこまで患者を診ていくのか、あまり深追いをするよりも、疑った時点で、専門医にお願いするのも一つの方法ということでしょうか。

平野

はい、そうです。ただ、やはりマーカーが陽性だった場合は、一つでもよいのでそれに見合う何らかの所見があるかどうかだけはチェックしていただきたいと思います。といいますのは、例えばリウマチ因子というのは確かに関節リウマチによく見られるのですが、もちろんシェーグレンやSLE(全身性エリテマトーデス)でも陽性になりますし、それ以外の感染性心内膜炎や結核などでもリウマチ因子は陽性になりますので、膠原病のマーカーに加えて身体所見をはじめとしたほかの所見があった場合はご相談されたほうがよりスムーズかと思います。

池脇

診断を実地医家が行うか、あるいは専門医が行うかは別にしても、診断のプロセスも、疾患によっては少しアプローチの仕方が違うということなのでしょうか。

平野

多少、少しずつは違ってくると思います。

池脇

実は、もともとの質問には成人発症スチル病があったのですが、一般の医師には難しい診断基準というような感じですね。

平野

よく使われる山口分類というものがあるのですが、大項目、小項目、鑑別というように3つの構成になっています。大項目と小項目を見ますと、サーモンピンク疹などは特徴的かもしれませんが、それ以外は高炎症、いわゆるサイトカインストームのことを捉えたまでのことなので、それだと何でもありになってしまいます。感染、腫瘍、そして膠原病の3つのカテゴリーにおいて該当する疾患はないかどうかを除外した上で、大項目、小項目に当てはめるという順序で進めたほうがより正確に判断できるのではないかと思います。

池脇

疾患によってでしょうけれども、その疾患に特異的な何かを見て、積極的にその疾患を診断していくというアプローチだけではなく、慎重に、除外診断を常に検討することが大切でしょうか。

平野

はい、大切なことと思います。これは膠原病に限らずほかの科の医師も同じだと思いますが、鑑別をどれだけ行うかがとても大切になってくると思います。

池脇

膠原病に関しての幅広い質問について解説をしていただきました。最後に、先生から重要だというポイントをいただければと思います。

平野

炎症を繰り返す、あるいは長期にわたって遷延するという場合は、一度膠原病を疑い、私たちのところへご相談いただければと思います。

池脇

どうもありがとうございました。