ドクターサロン

池田

駒形先生、本日は血管炎の診断と治療、そしてクリニックでできる検査はないかという質問ですけれども、血管炎といいましても、いろいろなものがあると思うのですが、最近の分類はどうなっているのでしょうか。

駒形

最近は、侵される血管のサイズによって分類するというのが一般的になっています。2012年にアメリカのノースカロライナ州のチャペルヒルというところで話し合いがあって、そこで罹患する血管のサイズで、大型の血管炎(大動脈と大動脈の分枝を中心とする大型血管炎)と、中型・小型の血管炎というふうに分類することになりました。中型だけというのはなかなか少ないです。小児の川崎病などもそうですけれども、一般的には中・小型という形で分類しています。大型血管炎と中・小型血管では、病態にも大きな違いがあるということで、そのような分類が一般的にされています。

池田

従来我々が習った病名と、少しイメージが湧かないのですけれども、まず大型にはどのようなものがあるのでしょうか。

駒形

大型は、大きく2つに分かれていまして、巨細胞性動脈炎と高安動脈炎、2つの疾患がメインです。巨細胞性動脈炎はかつて側頭動脈炎と呼ばれていた時期があって、大動脈の分枝、特に頭のほう(頭頸部)に行く血管、動脈がやられるわけですね。高齢の方に多くて、特に診断につながるのは側頭動脈が腫れて、外から触れても、皮膚の下に側頭動脈がモコモコと見えるような症状を呈します。

高安動脈炎は、今度は逆に比較的若い女性、若い人に出ます。やられる血管はやはり大動脈とその分枝ですけれども、特に目に行く眼動脈がやられて、ひどい場合には失明をきたす病気です。「高安」という名前はもともと日本の眼科の先生が最初に見つけて報告したということで、今は世界的にも「高安」という名前で通っています。昔は大動脈炎症候群とか、いろいろな名前が付いた時期もありますけれども、今は高安動脈炎で統一されている、そういう病気ですね。だから大型血管炎といえば、まず巨細胞性動脈炎と高安動脈炎の2つがメジャーな疾患です。

中・小型の中で一番メジャーな病気はANCA関連血管炎。ANCAというのは抗好中球細胞質抗体ですけれども、それが血液中で陽性になる疾患です。ANCA関連血管炎は大きく3つの疾患に分かれていまして、一つがMPA(microscopic polyangiitis)、顕微鏡的多発血管炎です。もう一つがGPAと言われる疾患で、多発血管炎性肉芽腫症。それも正式名称で、チャペルヒル分類でそのように定義されました。これはかつてウェゲナー肉芽腫症と呼ばれていた疾患です。余談ですが、チャペルヒル分類のときにアメリカでウェゲナー先生がナチスに与していたということで、ウェゲナーという名前を排除するのが一つの大きな目的で、そこでGPAという名前になりました。GPAはgranulo matosis with polyangiitisですね。

もう一つがEGPAという病気で、最初のEというのはeosinophilicで、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症という名前です。これはかつてチャーグ・ストラウス症候群と呼ばれていた疾患で、好酸球(eosinophil)が病態に非常に関与していて、実際、好酸球数もものすごく増えるという病気ですね。その3つがまとめてANCA関連血管炎と言われています。

池田

質問にもあるのですけれども、診断ということになりますが、例えば大型の血管炎はどのような症状でどういう方法で診断していくのでしょうか。

駒形

大型血管の場合には大動脈とその分枝なので、動脈の血流が途絶えることによる症状となるので、一番メインなのは目に行く血管が途絶えて、例えば視力低下をきたす、場合によっては失明をきたすというようなことが起こり得ます。それから、大動脈で例えば左右の上肢の動脈に差が出て、どちらかが狭窄をきたしたりすると、血圧の左右差、あるいは脈が右だけ取れないとか左だけ取れないという症状を呈することがあります。

あとは、例えば高安動脈炎だと若い女性がなることがありますので、そうすると、原因不明の発熱と倦怠感というような症状がずっと1か月以上続く。感染症では説明が付かない。でも、CRPが高いけど何でだろうということで長い期間診断が付かずに行くケースもありますね。やはり1か月以上続くような原因不明の発熱がある場合には、まずはそれを疑っていただいて、例えば造影検査、造影剤で血管を映してみると大動脈とその分枝に狭窄が見られる。もう一つは、PET検査をやると、大動脈に沿った炎症所見、あるいは大動脈の分枝に沿って見られるような所見が出れば、大型血管炎の診断につながっていくということですね。

池田

クリニックレベルだとなかなかその辺は難しいので、左右の血圧を測ってみるとか、左右の脈を測ってみる。そのぐらいですかね。

駒形

はい。

池田

次に中・小型の血管炎ですけれども、これはもちろん先ほどANCAの測定というのがあったのですけど、そのほかに検査で見ておかなければいけないものはありますか。

駒形

中・小型の場合にはどうしても血流が豊富な臓器に障害が来るので、一番最初はやはり腎臓に障害が来る。例えば、蛋白尿が出る、血尿が出る。そういった症状があって、場合によっては急速進行性の糸球体腎炎の症状を呈することがあります。その場合には当然eGFRやクレアチニンなどが急激に変化していく。

腎臓の障害は何から来ているのかということで、一番有用な検査は腎生検ですけれども、皆さんに腎生検というわけにはなかなかいかないので、まずは尿所見で蛋白尿、血尿が急速に出てきて、クレアチニンクリアランスなどが急速に落ちていく、いわゆる急性の腎障害が起きてきた場合には一つ、血管炎を疑って、血液検査でANCAを調べていただくというのが非常に重要です。MPAもGPAも同じように腎障害が来るので、腎障害が比較的高齢の方に急速に来た場合には、一つはANCA関連血管炎を疑っていただきたいと思います。

EGPAに関しては、GPA、MPAと違う側面があって、GPAとMPAはANCAがほぼ100%近く陽性になりますけれども、EGPAの場合にはANCAが陽性の患者さんは4割前後と言われていますので、EGPAの場合はまずは好酸球数を測定して、好酸球がすごく増えていないかどうか。もう一つ、診断基準に成人発症の喘息が項目として入っていますので、もともと重症の喘息を持っている方が急に腎障害をきたすとか、あるいは末梢神経障害をきたすということになれば、EGPAを疑っていただきたいと思います。

池田

とにかく疑うことがまず第一ですね。

駒形

ただANCA関連血管炎に関してはANCAを測定するのが非常に重要なことです。なかなかそれを測定しようというところにいかないのですけれども、呼吸器内科の先生で、重症の喘息の患者さんがいる場合には、そういう方が急に例えば末梢神経障害をきたしてきたと言ったら、すぐANCAを測ってくださいと私も呼吸器内科の先生に言っていますので、そういったところで早期に見つけて治療していくということが重要だと思います。

池田

最近の治療はどのようになっているのでしょうか。

駒形

大型と中・小型でだいぶ違うのですけれども、いずれにしてもステロイド治療が原則になります。大型血管炎の場合も、急速に進んでくる場合はまずステロイドパルス療法を行って、それでも炎症を十分抑えられないということであれば、最近はIL-6レセプター抗体、トシリズマブなどを積極的に使っていくというのが大型血管炎の最近の治療法ですね。

中・小型に関しても同じでステロイドパルス療法、これも急速進行性の糸球体腎炎のような、腎障害が急に進んでいるような場合にはステロイドパルス療法を行って、その後で免疫抑制剤の治療になるのですけれども、かつてはシクロホスファミドが免疫抑制剤としてはメインだったのですが、いろいろ副作用の問題もあって、12~13年ぐらい前にB細胞をdepleteするリツキシマブが登場してからは、リツキシマブにその治療のメインのところが移行しつつあるというのが現実です。

リツキシマブも非常によく効くのですけれども、ごく一部効かない例、あるいはものすごく重症の肺胞出血などを起こしているような例では、先にシクロホスファミドのパルス療法を行ったりすることもあります。ただ、原則としては、今はリツキシマブを使ってB細胞をdepleteするというのがメインの治療になっています。

さらにここ1~2年、また別の治療薬もいろいろと出てきて、MPA、GPAに関してはリツキシマブの治療に加えて、補体系を抑える治療薬としてアバコパンという薬が出てきているので、今はアバコパンをどういうふうに使うのが一番いいのかというのを全国の施設が手探りで行っているところですね。

先ほども申し上げたように、GPAとMPAの2つは比較的治療は近いのですけれども、EGPAだけは好酸球が非常に重要な役割を果たしているので、パルス療法は行うにしても、その後の治療をどうするかというところがなかなか難しいところですね。不幸なことにというか、日本はEGPAに対してリツキシマブの保険適用がないので、どうしてもステロイドパルスの後、好酸球を抑える治療をしないといけないので、好酸球を抑える治療としてIL-5。IL-5は好酸球の増殖因子でもあるし、刺激因子でもあるので、IL-5を抑えることによって、EGPAの治療につなげていくと。今IL-5抗体とIL-5レセプター抗体の2種類の治療薬が出てきていますので、それを使って好酸球を抑える治療をするというのがEGPAの治療です。

ただ、ANCAが陽性のEGPAと、ANCAが陰性のEGPAではかなり病態が違うのではないかという話もあって、ANCAが陽性のEGPAは比較的MPA、GPAに近い治療をする。ANCAが陰性のものは好酸球がメインだから、IL5とかIL-5レセプター抗体をメインに行くというような治療の違いが、ケースバイケースですけれどもありますので、そういったところを考えながら治療していくということですね。

池田

病態解明と、それに対する新しい治療法がどんどん出てきて、なかなか難しい状態ですね。

駒形

まだ病態に関しては100%解明されていないですから、海外の学会に行くたびに刻々と治療が変わっていっているというのが現実です。ただ、好酸球が悪さをしているという状態では、早く好酸球を抑えないと。好酸球というのは非常に細胞障害性が強くて、私の患者さんでもあっという間に、3日4日で好酸球が眼神経に浸潤して失明したというケースも経験していますので、とにかく好酸球が、例えば実数レベルで1万とか、そういったところに達しているようなケースの場合には、すぐに好酸球を下げてあげないといけない。ステロイドパルスでかなり下がりますけれども、ステロイド抵抗性のEGPAの患者さんもかなりいるので、そういう方にはなるべく早くIL-5あるいはIL-5レセプターの抗体を使って、好酸球を下げていくということが非常に重要な治療の戦略になります。

池田

どうもありがとうございました。