ドクターサロン

山内

内服治療のアルゴリズム等は学会のものはネットにもありますので、詳しくはそちらを参考にしていただきたいと思います。本日は非専門の先生方が薬の導入の辺りから、何をどういうふうにしていったらいいのかといったことについて、少しわかりやすく説明していただければと思います。

まず、導入といっても、いろいろな薬剤も治療目標もあります。糖尿病の場合、いろいろありますが、まずHbA1cというところで、何%ぐらいを目標にするかということから教えていただけますか。

能登

まず糖尿病の治療の目的は合併症を予防することにつなげることですので、HbA1cは低いに越したことはないですけれども、下げ過ぎますと、低血糖のリスクが増え、逆に生命予後が悪化することも多々あります。ですので、一般にはHbA1cは7.0%未満を維持しておけば、糖尿病がない方と同程度の腎機能低下、心血管疾患リスクになりますので、7.0%未満が一般的でしょう。

山内

6%台に乗っていれば、患者さんがどこに行かれたとしても、医者としては一応胸を張っていられるというところですね。

能登

そうですね。一概に薬を増やして無理やり6.0%未満にする必要はあまりないと思いますね。

山内

治療を開始というと、すぐに薬という話になりがちですが、まず食事・運動療法があるというところですね。まずそれらを導入して、しばらくは様子を見てもいいかなというところでしょうか。

能登

そうですね。ただ、初回ですでに随時血糖値が300㎎/dL以上ですとか、HbA1cが10%以上の場合には、早期にインスリン導入が必要なこともあります。1型糖尿病が隠れていたということもありますので、そういった場合には、速やかに専門医、大病院に紹介されたほうがいいと思うのですが、HbA1cが9.0%ぐらいで若干高くても、症状もなく、通常の生活で元気に過ごされている方は、まず食事の見直し、可能であれば運動療法を併用していくということになりますね。

山内

最近はいろいろと薬が出てきて、私の感触でもかなり6%台に持ち込めるなというところがあると思いますので、非専門の先生方も一応そこを目標にしていただきたいとは思います。

ここで具体的にそこの方策になってきます。アルゴリズムを補うような形ですね。ガイドラインといっても、これも絶対的なものではなくて、国によっても違うぐらいですから、多少バリエーションはあると思います。そこのところで非専門の先生方がやりやすい方法でということで、まず第一選択薬。これも多少分かれるところはありますが、先生は何を第一選択薬として使われていますか。

能登

私はメトホルミンを第一選択としています。ただし、条件としては、腎機能低下の場合には使えませんので、必ずeGFRも確認して、30未満の場合には投与しない、禁忌となっていますね。

山内

メトホルミンは非常にいい薬で、単一の第一選択薬ではなくなったといいましても、今でも事実上の第一選択薬だと私も思っていますけれども、非専門の先生にとってはややハードルが高い薬のようでして、使いにくいということで、日本ですとDPP-4阻害薬、これが第一選択薬では圧倒的に多そうですね。

能登

まさにそうですね。

山内

この辺りは、こちらでもかまわないとみてよいのでしょうか。

能登

もちろんです。メトホルミンが禁忌の、例えばeGFRが30未満の方でも、DPP-4阻害薬はすべての薬剤が用量調整により投与可能です。服薬回数もメトホルミンは1日2~3回ですので、アドヒアランスを考えますと、1日1回とか週に1回で済むDPP-4阻害薬のほうが、特に高齢者、腎機能低下の方にはかえってアドヒアランス向上につながって、早いうちに血糖コントロールがつくということにもなると思いますね。

山内

DPP-4阻害薬は本当に縛りが少ない上に、副作用も少ないですから非常に使いやすいので、まずここから入っていただいてもいいかなと思いますね。

能登

私も問題ないと思います。

山内

ただ6%台になかなかいかないようなケースですね。DPP-4阻害薬は、一部には増量も可能な薬もありますが、あまり増量枠の幅がない薬が多いですね。

能登

はい。

山内

そのケースでは、次はやはりメトホルミンということでよいでしょうか。

能登

そうですね。腎機能が安定している限り、メトホルミン追加というのがいい組み合わせだと思います。

山内

先ほど少しハードルが高いと申し上げましたが、使い慣れていない先生にとっては、いろいろと副作用でうるさそうな感じがする、あるいは高齢者で使ってだめだとか、注意しろとか、禁忌というか少し騒がれ過ぎみたいなところもありますね。例えば造影剤の問題もありますので、少し嫌だなという感じはありますが、実際には長年使われてきた薬ですから、トータルで見ると、非常に安全性は高いと考えてよいですよね。

能登

そのとおりです。しかも、DPP4阻害薬との配合薬もありますので、そういった点でも、いわゆるポリファーマシーの回避ですとか、薬価削減の点でも優れていると思います。

山内

DPP-4阻害薬でいまひとつの場合、メトホルミンに切り替えるのか、併用するのか、この辺りはいかがでしょうか。

能登

副作用がない限り、併用のほうがいいと思います。といいますのも、DPP-4阻害薬は膵臓からインスリンの分泌を促進させる薬剤である一方、メトホルミンはインスリンの効果を増強する、すなわちインスリン抵抗性を改善する薬剤ですので、2面から血糖コントロールをアプローチできますから、非常に理にかなった組み合わせだと思いますね。

山内

具体的な使い方、ここがなかなか難しいと思われている先生が多いのですが、まずスタートラインから教えていただけますか。

能登

日本では徐放剤が承認されていませんので、まずは1日2回から始めるのが一般的です。最小量の1錠250㎎ですが、それを1日2回、つまり500㎎を分2で開始する。そして様子を見ながら増やしていくことになります。

山内

増やし方のステップはいかがでしょうか。

能登

もちろんHbA1cが順調に下がっていれば、慌てて増やす必要はないと思うのですけれども、増やす場合には2通りあると思います。一つは、少しずつ増やすのが理想的ですので、750㎎を分3、つまり1日3回に分けてみる。ただ、それですと、昼間がなかなか飲みにくい、1日2回のほうが飲みやすいという方も多くいらっしゃるかと思いますので、そういう場合には倍量の1,000㎎、分2というのも、逆にアドヒアランス向上の点ではいいかと思いますね。

山内

昼や夕方は日中でもあるので忘れる方が多くて、ここはメトホルミンの非常に大きな問題点だと思いますが、対処としては、例えば投薬するタイミングを変えるといったことはいかがでしょうか。

能登

それも十分ありだと思います。ですからまず患者さんのライフスタイルとか、飲みやすいかをしっかりよく聞いて、例えば1日分3した場合には「昼飲み忘れたら、それを夜にまわしてもいいですよ」というのも一つの手でしょうし、夜はなかなか外食が多くて飲みにくいという方は、朝昼の分2という手もありますね。

山内

だいたい3時間ぐらい離せばいい薬ですよね。

能登

十分それでいいですし、食事を抜いても問題なく飲める薬ですので、昼ご飯はどうしても抜くことが多いという場合でも「食事を摂れなくても薬だけは飲んでください。そのほうが安定しますよ」という説明をしますね。

山内

さて、次に1,000㎎でいまひとつの場合、これは増量するか、ほかの薬を導入するか、ここはいかがでしょうか。

能登

まず増量のほうが好ましいと思います。もちろん第3薬を追加するという手もなくはありませんが、新たに追加していきますと、また飲み合わせ、副作用の問題が出ることもありますので、増やせるだけ、つまり、メトホルミンを1日1,500㎎、分2もしくは分3にしてみて、そこまで増やしたから、次の第3ステップ、第3剤を追加というほうがよいかと思いますね。

山内

それでもだめな場合は、次に3番目が出てきますが、この辺りはいかがでしょう。

能登

SGLT2阻害薬が腎保護、心保護作用もありますので、3剤目としては一般に勧められます。

山内

SGLT2阻害薬に関しましては、今少し使われ過ぎみたいなところもありますので、注意点としてはどういったところでしょうか。

能登

まずは尿糖が増えますので、特に女性の場合、膀胱炎を繰り返しているような方ですと、事実上、禁忌に近いと思います。それがきっかけで腎盂腎炎、敗血症になって入院したという方も少なくはないので、その点に気をつけなければいけません。

また、糖尿病がなくても、一部のSGLT2阻害薬は心不全やCKD(慢性腎臓病)に対する保険適用があるものもありますので、ほかの科でそういったものが出されていないかどうか、必ずお薬手帳、あるいは電子カルテなどを見て確認しておくことが重要になります。

山内

あと、痩せ型高齢者で使うのは少し注意したほうがいいと思いますが。

能登

はい。体重を落とす作用もありますので、栄養失調やサルコペニアなどにもなりやすいことが懸念されます。

山内

その辺りのところまで行って、なお次のステップになりますと、例えば痩せ型でSU薬が出てきたり、肥満者では最近出てきましたGLP-1受容体作動薬、この辺りが出てくると考えてよいですね。

能登

そうですね。GLP-1受容体作動薬の経口薬を使用する際には、注射薬もそうですけれども、DPP-4阻害薬との併用ができませんので、DPP4阻害薬を使っている場合には切り替えるという形になります。

山内

やはり肥満の方が対象になりますね。

能登

はい。体重を落とす効果もありますし、食欲を落とす作用もありますので。まれに食欲も落ちない、体重も変わらないという方もいるのですが、そういった方でも血糖や脂質代謝などの点で効果が出ることがあります。

山内

先生の場合ですと、何剤目辺りでしょうか。

能登

4剤目、5剤目ぐらいですかね。

山内

太った方が来たときにすぐ使うというところにはまだ至っていないのですね。

能登

まだ薬価ですとか、服薬のタイミングですよね、朝一に起床時、空腹時に飲まなければいけないなどがありますので、この辺りは患者さんの価値観やライフスタイルなど希望をよく聞いて、とにかく体重を早く落としたいのだという方であれば、ライフスタイル上、適応していれば、早めに出すこともあります。

山内

ありがとうございました。