ドクターサロン

山内

村田先生、よろしくお願いいたします。

本日は血小板のみが軽度、10万/μL前後減少している例の鑑別診断や対応につきご教示願いますということです。この辺りは非常に一般臨床の現場でもよく出てくる問題なのですが、一つ我々が戸惑うのは、血小板は非常に正常域が広いですよね。これをいったいどこまでが正常、どこからが異常、病的と考えたらいいか、非常に悩むところなので、まずその辺りからご解説願います。

村田

血小板は、施設によって違いますけれども、基準範囲をだいたい15万~35万/μLという形でとっているところが多いかと思います。施設によっては下を13万ぐらいまで許容しているところもありますので、範囲が広いということがまず一つですが、それに加えて、基準範囲を外れたからといって即、血小板減少症であるとは考える必要がない。具体的に言いますと、血小板数が10万を割ったときには明らかな血小板減少症と捉えてよいと思います。

山内

その少し上辺りは病的と考える必要はないということですか。

村田

そうですね。基準値を外れてはいるけれども10万以上をキープしているというような場合には、必ずしも病的であると考えなくていいかなと思います。

山内

ある程度は経過観察でいいということですね。

村田

そうですね。ただ、落ちてくるスピードが速いとか、前回に比べて非常に下がったというときには、何かあるだろうということで積極的に検査をされる必要があるかなと思います。

山内

そうしますと10万を切ってきた段階で専門医への紹介を考えてよいのですね。

村田

そうですね。ただ、後でもお話ししますけれども、例えば明らかに肝硬変があるとか、原因疾患がそのほかにもあるとわかっている場合には、それぞれの専門のところでご覧になるのではないかなと思います。

山内

ということで、専門医に回す前に、一つ我々もチェックしておくべきだなと思うのが、有名な偽性血小板減少ですね。これに関しては、どういう検査がよいでしょうか。

村田

血小板減少をみたら、必ず偽性血小板減少症がないかどうかを確認していただきたいと思います。偽性血小板減少症はけっこうよくみられる状態でありまして、だいたい人口0.1%ぐらいにみられるとわかっていますので、これをまず除外していただきたい。

ご存じのように、体内では血小板数は正常なるも、試験管の中で採血後に血小板が凝集してしまって、その結果、機械にかけて血小板を測定すると、低値に出るという状態です。基本的にEDTAによる抗凝固剤を用いた場合に起こってくる現象だとわかっていますので、まずは検査室に問い合わせをして、スメアで血小板の凝集塊がないかどうかを見ていただく。そして、そこで凝集がありとなると、本当の血小板数を知るために、EDTAでない抗凝固剤の入った採血管で検査する。具体的に言うと、クエン酸採血になると思いますけれども、そういった方法で真の値を確かめるのがいいのではないかなというところです。

山内

これは時間が経つと、どんどん減っていくと考えてよいですか。

村田

はい。時間依存的に減っていきますので、できる限り早く検査室で測定していただく。これができない場合には、クエン酸採血をするということになると思います。

山内

目の前で処理できたら、それも一つの検査方法ということですか。

村田

はい。それが一番理想的です。抗凝固剤を使わず採血をして、その場で目の前で機械にかけて検査すると真の値が得られると思います。

山内

わかりました。ということでもう一つ、我々が悩むのがITPですね。これも非常に有名ですけれども、なかなか一般医は見慣れないわけです。しかも、これは除外診断ということで、診断にも手を焼くわけですが、何かコツがありますか。

村田

未だに除外診断がメインになっています。ただ、最近、血中のトロンボポエチンというホルモン、血小板造血のホルモンを測るとか、あるいは網状血小板というものを測ることで、積極的に診断しようという診断基準もできてきてはいるのですが、ただ特殊なところでしかできないとか、保険が通っていないということもあって、なかなか難しいかなと思います。

基本は、やはりITPの診断というのは、血小板以外に末梢血所見で異常がない、つまり白血球数も正常だし、白血球の百分率も正常である、貧血がない。鉄欠乏性貧血はあってもいいのですけれども、それ以外の貧血があってはいけないということが前提になります。骨髄穿刺をやって骨髄にも異常がない、巨核球は増えているか、あるいは正常というような条件で決まってきます。

山内

なかなかその辺りになってくると、専門的になると思いますけれども、その前に、非専門の医師が押さえておいたほうがいい検査項目、これをやっていただいたら専門家も助かるなといったものがありましたらご紹介を願います。

村田

まず、専門に来る前に通常のスクリーニング検査をしていただいて、血小板減少を説明できるような疾患がないかどうかを確かめる必要があります。一つは、末梢血検査、CBCですね。こちらで貧血がないかどうか、あるいは白血球数や白血球分画が正常であること。それからスクリーニング検査としては、まず肝機能検査があります。肝臓の機能障害に伴う血小板減少はこれで見つけていくことが必要ですし、よく膠原病と合併しますので、膠原病に関する検査。特に、通常は抗核抗体であるとか、抗リン脂質抗体であるとか、そういったものをまず測定していかれるのが必要だと思います。

あとは炎症に伴うものであるとか、炎症にもいろいろありますけれども、先行感染があって、ウイルス性の血小板減少症というのもありますので、これを押さえておくこと。それからもう一つは薬剤。これはとても重要なポイントになります。薬剤性の血小板減少症というのは免疫学的な機序で起こる場合と、抗癌剤等の骨髄毒性を持った薬剤が原因となっていることもありますので、ぜひこれを押さえておいていただきたいと思います。

山内

そこは問診が大事ということで、血小板が急速に減少しているときと、何かの薬のスタートが一致しているかどうかのチェックが必要ということですね。

村田

おっしゃるとおりです。時々、家族性の血小板減少症というのもありますので、問診は非常に重要になるかと思います。

最後に、スクリーニング検査でもう一つ重要なのは凝固検査です。これはAPTTやPT、フィブリノゲン、FDPなど、ごく一般的なものでけっこうですので、ぜひこれをやってみていただいて、DICでないかどうかというのはルールアウトしておかないと、とんでもないことになりますので、重要なポイントかなと思います。

山内

ちなみに、ヘリコバクター・ピロリ除菌で血小板が回復するメカニズムは何なのでしょう。

村田

これは、ITPのときにピロリ菌の感染によってピロリに対する抗体が血小板のある蛋白と交差反応するといわれていまして、おそらくそれが原因で血小板減少が起きてくると考えられています。日本の場合は、ピロリ菌による血小板減少症も一応ITPの一亜型として捉えられていますので、ITPの中にピロリ菌依存性のものもあるというふうに考えていただいていいかなと思います。

山内

あとはもう一つ、フォローアップのところなのですが、血小板6万から8、9万といった辺りは無症状という、こういったケースをそのまま放置といいますか、経過観察してしまった場合の問題点はありますか。

村田

患者さんの年齢等にも関係してくると思います。造血器疾患が隠れている可能性がありますので。具体的に言いますと、多いのは骨髄異形成症候群と再生不良性貧血で、特に初期でまだ貧血が目立たない、スメア上もそんなに白血球にも異常がないという場合で放置しておくとまずいことになりますので、そういったことが隠れている場合があるので、やはり6万~8万など、コンスタントに10万を切っているような状況の場合には血液内科にコンサルトして、骨髄穿刺で血液疾患がないかどうかを確認される必要があります。

山内

血液専門医がいない地域もけっこうあると思うので、そこはなかなか難しいところかもしれませんね。

村田

そうですね。ただ、軽症のITPで、結果的には5万を切らない、あるいは5万を切っても出血症状がないような場合には治療せず、経過観察になります。もしITPであったとすれば、6、7万で放置されたというのは結果オーライにはなるのですけれども、別の疾患が隠れている可能性がありますので、ぜひ。

山内

少し慎重にフォローアップしたほうがいいということですね。

村田

そうですね。10万を切っている場合は、診断をつけたほうがいいと思います。

山内

最後に、これも我々また悩むわけですが、肝硬変に絡む血小板減少です。最近、例のMASLDで肥満型の方に出てくる肝硬変、あれはトランスアミナーゼが正常のことも多くて血小板だけ下がっていますけれども、画像で肝硬変や脾腫がなかなか見つからないケースもあるように思います。この辺りは、先生方はどう捉えていますか。

村田

血小板減少の程度は、肝臓の機能に必ずしも比例しないといいますか、まちまちですので、メカニズムはいろいろあると思います。例えば肝機能が低下することで肝臓が作る血小板増加ホルモン、トロンボポエチンが低下してきているような場合もあります。あるいは、門脈圧の亢進で非常に脾腫があって、そこで血小板が溜まってしまっているということもありますので、まちまちだと考えられたほうがいいと思います。

山内

脾腫は画像で捉えることが最近できるようになりましたが、今トロンボポエチンですが、これは測る価値がありそうですね。保険は大丈夫なのでしょうか。

村田

測ることはできるのですけれども、残念ながら保険が通っていない。ただし、肝硬変などで観血的な手技をする場合にはトロンボポエチンの製剤が適応になっていますので、これを使って、一時的に血小板を上げて観血的な処置をすることは可能かなと思います。

山内

ありがとうございました。