ドクターサロン

池田

本日はちょっと悩ましい質問なのですけれども、アトピー性皮膚炎の小学生に水いぼができてしまいましたという質問です。水いぼはよく聞くのですけれども、正式名は何という疾患なのでしょうか。

吉田

正式名は伝染性軟属腫といいまして、伝染性軟属腫のウイルスによる皮膚の感染症です。それが俗に水いぼと呼ばれています。小児で多くて、特に乳幼児から学童期ぐらいのお子さんに多い疾患になっています。

池田

水いぼは、一般のウイルス性疣贅(ゆうぜい)のいぼに比べて、少し盛り上がっていて、白っぽく見えるということを意味しているのでしょうか。

吉田

そうですね。普通のいぼはガサガサしている感じもありますけれども、そうではなくて、つるっとした感じで表面に光沢があって、丸みを帯びているようなものです。

池田

その水いぼなのですが、どのような方に移りやすいのか、あるいは、どのような感染経路なのでしょうか。

吉田

皮膚にウイルスが接触して移るという経皮感染なので、皮膚のバリアが弱っている方とか、免疫自体が落ちている方に移りやすいです。皮膚のバリアが弱っている方としては、ご質問にあるとおりアトピー性皮膚炎の方とか、免疫を抑える薬を飲んでいる方、先天的・後天的に免疫不全がある方とか。大人では少ないですけれども、例えばHIV感染症の方などで広範囲にみられたりもしますね。

池田

人から人への接触感染なのでしょうか。

吉田

主には皮膚と皮膚の直接接触ですけれども、例えばプールでビート板とか、タオルとか、そういうものを介して移ることもあると言われています。家族内でほかにも水いぼのお子さんがいらして一緒にお風呂に入って、濃厚接触したりタオルを共用していたりすると移ってしまうので、もし家族にもいれば、一緒に治療したほうがいいという病気です。

池田

では、もちろん人と人の皮膚が接触するというのもあるのですけれども、間に介在するタオルやビート板、場合によっては腕浮き輪みたいなものも仲介することがあるということなのですかね。

吉田

あるとは言われています。今はプールへの参加自体は禁止されていませんが、タオルやビート板などは共有しない、などの配慮が求められます。

池田

水いぼができて、特にアトピー性皮膚炎のお子さんですと、やっぱり痒いと引っ搔いてしまいますよね。それでほかの皮膚に移っていくということになるのでしょうか。

吉田

そうですね。できてしまってからは、ほかの人から移るというよりは、自分の中で搔いて広がっていくというほうが多いですね。水いぼを引っ搔いて、またほかの場所を引っ搔くと、水いぼが移って、広がってしまうということになります。

池田

そういう意味でも、この質問にもありますけれども、ステロイド外用剤を中止してしまったらアトピー性皮膚炎が悪化して、痒みも強くなりましたと。その場合はまたそこを搔いてしまいますよね。そうすると、またその手でほかの皮膚部分を搔くとまた移ってしまう。じゃあ水いぼに対して、皮膚はやっぱり悪化させてはいけないのですよね。

吉田

そうですね。アトピー性皮膚炎のコントロールは水いぼ対策としても重要です。

池田

先生、水いぼに対してステロイド外用剤は避けたほうがいいのかという質問なのですけれども。

吉田

これは非常に悩ましい問題なのですが、ステロイド自体は免疫を下げる方向に働いてしまうので、水いぼそのものを治す目的にステロイド外用剤を使うことはありません。

ただ、搔いてしまうと、また水いぼが広がってしまうということはあるので、アトピーのコントロールのために全く治療をやめてしまうというのはやめたほうがよくて、もし水いぼがある1か所にとどまっているのでしたら、そこを避けてステロイド外用剤をしっかり塗ってもらいます。全身にあって、それはなかなか難しいということであれば、ステロイド外用剤を使用してアトピー性皮膚炎をしっかり治療しながら、水いぼの治療を行います。あとは、アトピー性皮膚炎には今ステロイド外用剤以外にもいろいろな塗り薬の選択肢がありますので、そういうものを使っていただくというのも選択肢です。

池田

非ステロイド系の外用薬ということですね。どのようなものがあるのでしょうか。

吉田

具体的な名前ですと、ジファミラスト軟膏やデルゴシチニブ軟膏、タクロリムス軟膏というものがあります。免疫を抑えてしまうものもありますが、適切に使用すれば炎症と痒みを抑えられ、搔破による水いぼの拡大を防ぐ効果が期待できるので、併用してもらうのがいいのかと思います。

あとは、痒みをコントロールするために抗アレルギー薬、飲み薬の痒み止めを併用していただくのも一つかなと思います。

池田

なるほど。まずはアトピー性皮膚炎の痒みと搔破、それから皮膚の悪化を防ぎながら、水いぼに対処していくということになると思うのですけれども、具体的には水いぼの摘除方法というのはどのようなことをされるのですか。

吉田

具体的には、水いぼの膨らみの根元から鑷子(せっし)でつまんで、水いぼ自体をつまみ取って摘除する治療なのですけれども、つまみ取るというか、むしり取るという感じなので、やはり痛みを伴ってしまいます。ですので、その水いぼの部分に局所麻酔のテープなどを貼って、しばらく置いてからそれをつまんで取るというのが一般的ですね。

池田

ということは、ある程度ステロイド、非ステロイド外用薬を使って皮膚を良くしておいて、そこで痛み止めのテープを貼って、それでしばらくしてまたつまみ取る。そういう形なのですね。逆に言うと、やっぱり皮膚がきれいでないと、ブドウ球菌とかほかの感染症も混じってしまいそうなイメージですが、それもある程度皮膚をきれいにすることによって防いでいくという考えでしょうか。

吉田

はい。

池田

アトピー性皮膚炎の皮疹部で重症な方というのはブドウ球菌が付いているとか、そういうのがありましたよね。だからそういうものもある程度防いでおかないと、水いぼを取った後の二次感染もまた考えられるということなのでしょうね。

アトピー性皮膚炎の方は、そういったいぼも含めて感染しやすいようなイメージがあるのですけれども、これは単純にバリア機能が落ちているということだけなのでしょうか。

吉田

バリア機能が落ちているのと、免疫反応が普通の方と少し違うということも影響しているかもしれないですね。

池田

よくタイプ2炎症と言われまして、アレルギー応答が中心になっているところというと、普通のタイプ1の炎症、いわゆる細胞性免疫とかそういうのが落ちているのではないかと考えられていますが、こういったこともある程度は影響があるのでしょうか。

吉田

あるのかなと思います。

池田

そういう意味でも、ある程度アトピー性皮膚炎の皮疹を抑えておかないと、免疫学的にも水いぼが増えやすい状態になっているのかなと私は思っていたわけです。

水いぼの対処法はもう麻酔の貼り薬を使って、あとで取ってしまうという、これしかないのでしょうか。

吉田

水いぼは自然治癒することもあるので、経過観察することもあります。保険適用のあるものは基本的に水いぼ摘除です。保険適用外では、ヨクイニンやシメチジン内服が用いられる場合もありますが、エビデンスは限られます。

あとは、2026年2月に発売されたカンタリジンというものがあります。海外でも以前より使われていますけれども、虫から取ったものを塗って、水いぼのところに水疱、水ぶくれを作って取れるというような薬が発売されました。

池田

それはいいですね。イメージとしてはどのような治療スケジュールになるのでしょうか。

吉田

3週ごとに医療機関で外用するのが一般的なスケジュールです。薬を塗った後、乾くまで5分ぐらい、しばらく待っていてもらわないといけません。あとは外用した部位を触らないようにしなければいけないということで、暴れてしまうようなお子さんには難しいかもしれないというところが難点ですけれども、痛みがなく、外用で治療できるというのがメリットなのかなと。

池田

では塗るだけで、クリニックや病院で受けなければいけないという制約はありますけれども、3週ごとに塗っていくということですね。それは画期的ですね。

吉田

そうですね。

池田

ちょっと前までは麻酔薬も使わないでむしり取っているだけでしたよね。子どもさんたちも泣き叫んでたいへんだったのですけれども、それでリドカインテープ剤とかを貼ってだいぶ楽になりましたが、つけるだけになったら、さらに楽ですよね。

吉田

そうですね。特に数が多い方とか、動かないでじっとしていられる方には、塗るだけというのは大きいと思いますね。

池田

そうですよね。それはもう隔世の感があって、だいたい水いぼの数が増えてきたら、皮膚科医へ行けということになって、皮膚科医がずっと悪者になっていますよね。その雰囲気がなくなるのは、本当に皮膚科医の精神状態にもいいのかなと思ってうかがっていました。どうもありがとうございました。