ドクターサロン

池脇

本日は、特殊な動脈硬化性リポ蛋白の質問をいただきました。まず、確認です。今回のリポ蛋白、Lp(a)の呼び方ですけれども、「エルピーリトルエー」で間違いないでしょうか。

小倉

はい。いろいろな呼び方があるのですけれども、「エルピーリトルエー」でいいと思われます。

池脇

このLp(a)は以前からあるリポ蛋白ですが、特に最近になって、危険因子としてのエビデンスが蓄積されてきました。また、なかなか治療薬がなかったのが、期待できる治療薬も開発中ということです。まず、Lp(a)はどんなリポ蛋白でしょうか。

小倉

構造は、悪玉として知られるLDLのような粒子にapo(a)という特殊なアポ蛋白がくっ付いているもので、特に動脈硬化を進めるリポ蛋白として知られています。

数値はほとんど生まれつきといいますか、遺伝的にかなりのパーセンテージが決まっているのが特徴的です。

池脇

確かにapo(a)は、いわゆるプラスミノーゲンと相同性が高いとか、その中のクリングルⅣの繰り返し数と濃度が逆相関するとか、ほかのリポ蛋白、アポ蛋白とは違う性質がありますね。

小倉

そうなのですよね。おもしろいことに、かなり高度な霊長類にしかないみたいで、その理由も含めてまだわかっていないことも多いです。

池脇

Lp(a)の血中濃度は、正規分布ではないですね。

小倉

はい。ほとんどの方が低いのですけれども、かなりskewed、正規分布ではなく、データの山が左に偏ったような分布をしています。

池脇

Lp(a)がどうやって作られるのか、apo(a)として出てきてLDLに付くのか、細胞の中で付くのかさえもよくわからないし、体から消えていくときに腎臓の役割がありそうだな、くらいのところで、古い歴史があるけれども案外わからないところもまだけっこう残っていますよね。

小倉

はい。合成・分泌・排泄などもまだ全然わかっていないというのが正直なところです。

池脇

ただ、動脈硬化性のリポ蛋白としてのエビデンスは、「The New England Journal of Medicine」などの一流のジャーナルにけっこう載るようになってきましたね。

小倉

はい。遺伝学的なメンデルランダム化解析の結果から、Lp(a)値を下げると動脈硬化リスクは減るだろうと予測されています。LDLコレステロールをしっかり下げた後の残余リスクの最右翼として、今すごく注目されているところです。

池脇

確かにスタチンを始め、最近のPCSK9阻害薬で、LDLをぐっと下げるということに関しては、我々もある程度手段が豊富になった。そのポストLDLの時代で、残余リスクの中の一つがLp(a)ということなのですね。

小倉

そのとおりです。

池脇

先生が活動されている日本動脈硬化学会も、Lp(a)に関してはいろいろなことを検討されている中で、一つは、どのくらいでLp(a)をカットオフするかも今検討されているのでしょうか。

小倉

そうなのです。ただ、大きな課題というか問題がありまして、検査方法が標準化されていないのです。たぶん臨床で測られたことのある先生方は「㎎/dL」という単位、つまり重さを見ていると思いますが、Lp(a)は厄介なことに人それぞれ粒子のサイズが違います。したがってリスクとしてのLp(a)値はSI単位である「nmol/L(ナノモルパーリットル)」、すなわち粒子数で表したほうがいいのではないかということになっていて、今、標準化に向けて動いています。カットオフとして30㎎/dLなのか、50㎎/dLなのか、みたいな議論がされているのですけれども、本当はnmol/Lで議論しないとだめだよねみたいなことになっていて、まだ混迷を深めているような状況です。

池脇

日本だけではなく、海外でも同じようなディスカッションがされているのでしょうか。

小倉

そのとおりです。ただ、世界の中で日本がリードしていると思います。順天堂大学の三井田孝先生が標準化、国際ハーモナイゼーションという、かなり大きな論文を出されまして、各試薬の結果で出された㎎/dLからnmol/ Lに変換する式を作られていて、うまくいきそうな雰囲気になっています。

池脇

ちょっと話がずれるかもしれませんが、先生は「だいたい遺伝で決まっていますよ」とおっしゃいましたけれども、例えば炎症が起こると、上がってくるという、そういう性質もありますね。

小倉

はい。後天的に決まるものとしてはそういうこともありますし、腎臓が悪い方はおそらく排泄障害で高くなったり、逆に肝臓が悪い人は低くなったり、甲状腺機能低下症でも高くなるとか、後天的な要素は少しだけあります。おもしろいことに妊娠中も高くなります。

池脇

そういう意味では、nmolや標準化の問題は、先生方を中心に進めていただいていますので、それはそれできちんとしたコンセンサスが得られた時点でということですけれども、Lp(a)を測っても、なかなか下げる薬がなかった中で、最近、非常に期待できる治療薬が開発中ですね。

小倉

今、最も開発が進んでいるのが核酸医薬という注射薬です。apo(a)が肝臓から作り出されるのを邪魔するような薬になります。

一つだけ、apo(a)がLDLに付くところを邪魔するという飲み薬も今、治験が進んでいる状況です。

池脇

確かに核酸医薬というと、アンチセンスオリゴ、あるいはsiRNAですが、論文などを見ると、下げ方が半端ないですね。

小倉

そうですね。90%の低下率とか、すごいことになっています。

池脇

Lp(a)の不思議なところの一つですけれども、LDLにapo(a)が付いたのだから、LDLを下げるスタチンは効きそうじゃないかと思いますが、効かないですよね。

小倉

効かないのですよ。むしろ、ほんの少しだけ上げるという報告もあって、Lp(a)がどうやって代謝されていくのか、実はまだ解決できていないというのが本当におもしろいところですね。

池脇

スタチンは効かないよと。でも、同じくLDLを下げるPCSK9阻害薬はちょっと下げるし、HDLの薬のCETP阻害薬も下げる。ますますわからないですね。

小倉

そうですね。スタチンとPCSK9阻害薬に共通のLDL受容体を活性化させるところは、Lp(a)の低下にあまり関係しないのではないかと。CETP阻害薬やPCSK9阻害薬は肝臓での合成のほうに効いているのかな、という推察が今されています。

池脇

さて、今後、日常診療でどう活用すべきかということですが、私は初診時にLp(a)を測るようにしていますが、本日お聞きの先生方に、まずはどういうふうにしてLp(a)を使っていくのか。どうでしょう。

小倉

池脇先生がおっしゃったとおりで、ぜひ生活習慣病患者さんの初診時、もしくは気がついたときに測っていただきたいですね。多くは遺伝的に数値が決まっていますので、簡単に言うと、一生に1回測ればいい検査ということ。それで高ければ、この方はリスクが高い患者さんだという評価ができて、動脈硬化の画像の検査をしたり、ほかのリスクをしっかり下げたり、そういうことができると思うのですね。

大きな問題として、最近出た論文では、レセプトベースでLDLコレステロールを測った70万人を対象にどれぐらいの人がLp(a)を測られたかというと、日本ではたった0.4%しか測っていなかったということです。現在、学会を挙げて、ぜひLp(a)を測ってくださいというキャンペーンをしているところです。

池脇

確かにLp(a)が動脈硬化惹起性のリポ蛋白であるというエビデンスが蓄積されてきて、まずLp(a)が高いとリスクが高いということになるし、リスクが高い人で、今まで測ってなかったら、Lp(a)も測っていただくという、そういうかたちでまずは測っていただくということになりますね。先ほど言われた治療薬の開発状況はどうでしょうか。

小倉

そうですね。一番早い第Ⅲ相試験、つまり心臓血管イベントを抑制できるかという結果が出るのが今年の後半くらいという情報ですので、そこで一つ大きな方向性が見えるのではないかと思っています。

今は薬がないのですが、高かったときに、例えば血圧やコレステロール、糖尿病など、ほかのリスクをしっかり管理することでリスクを下げられたというエビデンスもあるのですね。なので、ぜひ測っていただいて、リスク管理に役立てていただきたいなと思っています。

池脇

遺伝で規定されるとおっしゃっていましたけれども、高い方がいらしたときに、ファミリーのLp(a)も測るべきでしょうか。

小倉

はい。そのとおりです。海外の論文も含めて、家族スクリーニングに役立ててくださいということを推奨しています。

池脇

先生はFH(家族性高コレステロール血症)のスペシャリストで、ファミリースクリーニングが重要とのことですが、Lp(a)も同じようにということですね。

小倉

はい、そのとおりです。

池脇

本日お聞きの先生方は、日常診療でまずLp(a)を1回測っていただくということを強調したいと思います()。どうもありがとうございました。