ドクターサロン

山内

櫻井先生、よろしくお願いいたします。本日は、痛風と尿酸に関するかなりディープな話題でして、尿酸というものが善玉か悪玉かといったところも含めてというお話です。

まず、高尿酸血症で痛風発作が起こるメカニズムといったあたり、ごくかいつまんでご紹介願えますか。

櫻井

痛風は、教科書的にも結晶性関節炎ということになっていまして、結晶がどうして悪さをするのだという話になるのですけれども、結晶が自然免疫系を活性化して関節炎を起こすという話なのですね。小さい結晶が細胞にちょっと傷を付けると、細胞の中からDNAやATPがちょろちょろと漏れてくるわけです。漏れたものをDAMPsといいまして、細胞が傷害を受けたというシグナルになって、そういうものを、パターン認識のレセプターでつかまえた自然免疫系の細胞は「あれ?」と思って反応するわけですね。

炎症の準備みたいな形、プライミングといいますが、になって、それで準備が整ったところで「さあ」といって、そこら辺にある尿酸をぱくっと。水に溶けないものですから、このようなものが流血中にあるのはうれしくないので、食べてしまうわけです。食べると、細胞の膜を傷付けるのと同じように、食べた後のライソゾームも傷付きますから、そこからいろいろな消化酵素が出てきて、最初にDAMPsでプライミングされた免疫細胞の自然免疫の活性経路がフルに活性化してしまって、炎症が起こるということですね。

炎症活性化の主体はIL-1β。プライミングの段階でproの形なのだけど、尿酸を食べて、その分解酵素、カスパーゼが活性化されると、proが活性のあるIL-1βになってしまう。まとめると、尿酸結晶を食べる過程で免疫細胞の中にNLRP3インフラマソームという炎症蛋白の組み合わせのようなものができて、それでIL-1βが活性化されて炎症が起こるという仕組みだと言われています(図1)。ですから尿酸の結晶が関節炎の原因です。

山内

免疫細胞のある種の暴走的な感じと考えてよいので、やはりトリガーとしては尿酸があるからと。

櫻井

はい。尿酸結晶ですね。

山内

ここで少し臨床医が戸惑うのは、尿酸値が高いのに全然痛風を起こさない方がけっこういらっしゃるということで、ここでの齟齬といいますか、ここをどう説明したらいいのか、この辺りはいかがですか。

櫻井

私も確たる答えがあるわけではないですけれども、やはり結晶を作るというところが問題だろうと思うのですね。そのときのpHとか、ほかにあるものとか、そういうので本当は溶けないのだけど、昔の化学でやったかもしれないですが、過飽和みたいな状態になって、何とか液相に溶けているうちは悪さはしないのだろうと。

ただ、その尿酸が何かの拍子で溶けにくくなる。痛風発作が起こるのは親趾で、一番冷えているところですよね。温度がちょっと低いとか、そのような条件だと、溶解度が下がるということで出てくるのだろうと思います。おそらく局所のいろいろな環境で結晶ができやすくなったときに関節炎として出るのではないかと考えています。

山内

受け手の側といいますか、体の側のコンディションによるということで、それがある人にとっては有利に働いていると考えてよいのですね。

櫻井

そう思います。

山内

この質問にも関わってきますが、まず尿酸というのは抗酸化作用があるのではないかというご指摘で、そうすると、関節炎を起こしているので、関節に尿酸が集められてくるといいますか、抗酸化作用を持った尿酸を集めているのではないかと。こういう大胆なご指摘ですが、先生はどうお考えですか。

櫻井

まず尿酸に抗酸化作用があるという話は、1980年代ぐらいから言われていまして、例えば臨床的な観察研究で尿酸が高いほうが神経の変性疾患になりにくいとか、そんな話があります。挙げ句の果てには、脳卒中の急性期に血栓溶解療法と一緒に尿酸を投与したら治療になるのではないかという臨床研究も行われて、確か毒性はなかったのですけど、いいこともあまりなかったようなのですよね。

ただ、薬の立場から言うと、体の中にそれなりの濃度で存在するものですから、毒性試験が要りませんから、もしも尿酸が治療薬として使えればたいへんうれしかったのでしょうけれども。実際に測ってみても、抗酸化作用はある、それは事実です。

では、実際の関節炎で炎症が起きているときに尿酸が集まって来るといいのでしょうか。局所の濃度が上がって尿酸の結晶が析出する事態というのはうれしくないわけですから、そこに尿酸を集められると、抗酸化作用もあるかもしれないけど、燃料もまた投下するような形になりますので、おそらくそれはワークしないと思います。※体内における尿酸の作用を図2にまとめてみました。

先ほど痛風の関節炎が結晶だと申しましたけど、関節で結晶をつくるのは何も尿酸だけではなくて、偽痛風におけるピロリン酸カルシウムも結晶を作ります。免疫系からみれば、結晶という点では全く同じですので、先ほど言いましたとおり、自然免疫系の細胞、ないし滑膜細胞が活性化されて、NLRP3のインフラマソーム、IL-1βというこのカスケードは一緒ですから、偽痛風でも同じことが起こっているので、この医師の言われるとおりなら、その偽痛風の発作の場所に尿酸が集まらなければいけない。しかし、痛風では尿酸の結晶、偽痛風のときにはピロリン酸カルシウムの結晶、これで診断がつくわけで、偽痛風の関節に尿酸はありません。

しかも、尿酸自体は血中に均等に分布しているもので、痛風発作部に尿酸を集める機構というのは、尿酸の体内動態からは考えにくいのではないかと思います。

山内

あと、この質問でもう一つのほうですが、発作時に尿酸降下薬を使ったら、再発が誘発されるという有名な知見がありますが、これのメカニズムは何なのかということですが。

櫻井

ありますね。その医師が言われているように、実際にすごい炎症があると、その中でやはり活性酸素やフリーラジカルというのはできてきます。活性酸素は好中球の重要な武器です。痛風発作では活性酸素やフリーラジカルがやり過ぎているのだろう、暴走しているのだろうというのであれば、抗酸化作用を持つ物質で抑えられるというのは理論的にはある話なのです。しかし、私は急性期の尿酸降下は、抗酸化物質の欠如というより、結晶の不安定化をきたすことで、関節炎を増悪させると考えています。けれども血中尿酸濃度を降下させると、局所の尿酸の濃度がすごく動いてしまうでしょう。そういうことが起こると、結晶として、免疫細胞が食べられないような大きさだったものが小さくなって、食べられてしまうようなことが起きると、インフラマソームの活性化につながってしまうわけです。いったん炎症が起こってしまったら、尿酸の結晶には当たらず触らずがよいのです。そういう点で言うと、尿酸が集まってくるのもありがたくないですけれども、急に血中尿酸濃度を下げて、結晶が不安定化するのもありがたくないのです。私はそういうふうに考えています。

山内

これに絡んで、これは先生のご専門のようですが、尿酸はけっこう活発に再吸収されるから善玉なのではないかという説もありますが、これはいかがでしょうか。

櫻井

わかりますね。糸球体でろ過された後に要らないものなら再吸収せずに捨てればいいわけです。クレアチニンなんて捨てていますよね。ところが、尿酸は再吸収する。尿酸再吸収用のトランスポーター、URAT1というのが近位尿細管の管腔側にありますから(図3)、私はその絵を見ると、腎臓はというか、体は尿酸を戻したいのだなと思うわけで、おっしゃるとおりだと思います。

尿酸の大元の元がプリン体ですので、DNAなどの原料になることから、人体としてはそういうものを失いたくはなかったのではと推察します。

一方、尿酸が再吸収されたあと再利用できるかということになりますと、我々の体にとっては尿酸はプリン体代謝の最終産物です。ですから、再利用するということはできないのですね。ほかの動物ではウリカーゼ(尿酸分解酵素)という酵素がありまして、尿酸を酸化して、水に溶けやすくして排泄しています。尿酸の再吸収がウリカーゼを使って、尿酸をさらに代謝して排泄を促進する以上の意味があるのかというと、よくわかりません。少なくとも尿酸の代謝産物に生理活性があるという話は聞いたことがありません。

なので、実際、一生懸命再吸収はしているのだけど、何のためにやっているのかというのは疑問ではあるのです。そうなると、この医師の言われた抗酸化作用というのが浮かび上がってきますけれども、尿酸を再吸収するときに、腎臓の細胞が「こいつは抗酸化作用があるから取っておこう」と考えたかというと、非常に疑問ですね。現時点では謎ということにしておきましょう。

山内

本日は興味深い話をありがとうございました。

太古、地球を襲った飢餓に対して、ウリカーゼを失って、尿酸が高かった生物に生存のアドバンテージがあったのではないかと考えている人もいます。図2の細胞内尿酸の酸化ストレス惹起作用が、血圧を保ち、養分をためこむ反応に関与しているとの主張です。そう考えると腎臓が尿酸を保持するのは、飢餓への備えだったのかもしれません。