ドクターサロン

池脇

CKDのCGA分類は腎臓学会で出していて、これに基づいた診療をということで大事な分類です。まず、CKDのCGA分類を教えてください。

酒井

CKDという言葉が随分世の中に出てきまして、実地臨床の中で、あるいは国民にとってもいろいろな知識が広がりました。

さかのぼること1992年ごろ、透析患者さんのリスクを分類しようというところから始まり、これをもっと広げて腎臓病全体に広げていき、透析にならないようにという目的から始まった分類です。CKDをきちんと医療スタッフにも国民にも啓発しようということが各国で行われた理由は、透析患者さんが増えていくという現況の中で、自覚症状も乏しい腎臓病の進行過程をしっかりと分類をして、国民に周知をしたいというのが全世界的に始まったのがきっかけです。

CKD(Chronic Kidney Disease)は慢性腎臓病と訳します。これを、さらに分類してCGAとした理由は、原因(Cause:C)、腎機能(GFR:G)、最後のAはアルブミン尿(Albuminuria:A)の3つでいろいろなリスクが分類できるということがだんだんわかってきたからです。特にご存じのとおり、赤いヒートマップ、あるいは黄色いヒートマップは、それぞれ赤信号、黄色信号と分類して、紹介基準を作ってきました。特に赤い分類のところは腎機能がすでに悪い方。あるいは、悪くなくても蛋白尿が出ている方。その2つが赤に分類されているところとして着目すべき部分となっています。

池脇

確かに、ヒートマップの縦軸がGFR(eGFR)、横軸が蛋白尿の区分ですが、GFRは正確にはイヌリンクリアランスですが、臨床でやるのはとてもたいへんということで、eGFRで代表することによって、こういった分類が可能になったということですね。

酒井

はい。正確な腎機能を測るにはイヌリンという物質が必要です。詳しいことをいえば、尿細管で分泌も再吸収もされない、本当に純粋な排泄物質のイヌリンが、ある時間の中でどれだけ排泄ができるかということで正確な腎機能指標を測るわけですが、非常に煩雑です。それだったら血清クレアチニン値と年齢・性差で推算できる簡便なGFR(=eGFR)ということに変わってきました。それがだいたい、イヌリンで測るところのクリアランス、つまり正確な腎機能と相関することがわかってきました。

池脇

採血をしてクレアチニンを出すと、その方の年齢等々で自動的に数字が出てくるという意味では、我々も日常的にeGFRは親しみのある指標ですが、一方で、蛋白尿はアルブミンと通常の蛋白の定量の2つの方法があるのですか。

酒井

はい。特に糖尿病性腎症では、明らかな蛋白尿が出てくるときに、このアルブミン尿がとても重要な初期変化であることがわかっています。よく健康診断で行う試験紙法も別名アルブミスティックという名前が付いているぐらい、アルブミン尿を定性的に検出するという意味ではとても鋭敏な検査手法でした。それが今度は定量化しなくてはならないということで、ミリグラム/グラムクレアチニン(㎎/gCr)という数字で表す定量化がなされました(図1参照)。

池脇

そうすると、糖尿病をお持ちの方の場合には微量アルブミンを測れるけれども、そうでない場合には、もう一つの蛋白尿の定量で代用ということになるのでしょうか。

酒井

基本的にはそうなると思います。糖尿病以外では微量アルブミンは測れません。

池脇

蛋白尿の区分とeGFRでこの分類ができているということがわかりました。そのうえで今回の質問ですが、まず検診で尿蛋白が陽性で、高血圧等あれば、改めて尿蛋白とクレアチンを定量的に測定していますが、その結果が、最初の尿蛋白の結果と必ずしも相関しないとのことです。そういうことはあり得るのでしょうか。

酒井

実はこれは一般的にいわれる定性と定量の違いでありまして、定性というのは見て測る。日常診療や学校健診、あるいは会社健診で行うのは、試験紙法による定性試験です(図2参照)。あくまでも、尿を浸した後の着色で診断します。いうなれば、例えば±に相当するところは、A1に相当する蛋白尿。1+に相当する定性はA2に相当する蛋白尿。2+以上の定性だったらば、A3に相当する蛋白尿とはなるけれども、あくまで定性ですので、これを測ってみたところで、その数字がイコールg/gCrの数字と一致するかというのは非常に難しいところです。人の目で測りますので。どういう色でこれを判断するか。逆にいいますと、定性で拾って、定量でしっかり診断するという流れがむしろ大事だと考えます。

池脇

確かに私、最近、職場の健診で尿潜血が2+と出まして、自分で試験紙で測ってみましたが、試験紙の色が刻々と変化して判定が難しいなと思いました。そういう意味では、試験紙の定性と定量はある程度は相関するけれども、そうではないことも多々あるという理解でよいですか。

酒井

比色定量を目視しますので、どうしても誤差が生じるし、周辺の色と真ん中の色が違うこともあります。そういう呈色にムラがある場合には四角の真ん中の色を見なさいともいわれています。

池脇

尿蛋白の定量、そして血清クレアチニンからのeGFRで、先ほどのヒートマップの最終的な評価ということですね。

酒井

はい、そのとおりです。先ほどの血尿の話ですが、血尿の試験紙反応が出たらどうするかということに関しましては、定量という意味では尿沈渣が重要です。沈渣の中で赤血球が幾つあるかというところが、尿潜血の定量になりますので、いずれにしても、きちんとした尿沈渣、きちんとした尿蛋白定量(g/gCr)を見て、そしてeGFRを見ていく。それがこのヒートマップの元になるデータになると思います。

池脇

eGFRオンリーではなくて、蛋白尿の程度も重要なファクターというのがCGAの分類のポイントということですが、高齢の方だと、赤いところに来る方がいて、腎臓の専門医に紹介していいのかと心配をされているようです。この辺りはどう判断したらいいでしょうか。

酒井

CKDのキャンペーンと同様にいろいろな学会、協会においてでも眼のフレイルや聴力検査の推奨など、いろいろなことを早期に発見して予防していくという流れが全世界で始まっていて、その腎臓版がCGA分類になります。ところが、腎臓は40歳ぐらいをピークにだんだんと機能が落ちていきます。特に日本人は農耕民族で、欧米の大きな体格の方よりも、もともとあまり大きな腎機能のキャパシティがありません。40歳以降になると、血清クレアチニン値が0.8の人がやがて0.9になり、60歳になって1.0になり、70歳になって1.2になり、80歳になって1.3になり、それでも透析をしない一生でよかったねというのが、私たちの目指すところです。

池脇

ヒートマップで赤の高齢者を専門医に紹介するポイントはあるでしょうか。

酒井

まず、年齢による加齢現象による腎機能低下であるかどうかというのは、ワンポイントではなくてツーポイント、スリーポイントの継時のドットで経過を見ていくべきだと思います。ただし、その中でヒートマップを構成する一番の因子が蛋白尿ですから、蛋白尿が随伴して出る場合には、ファーストタッチで1回腎臓の専門医に紹介していただきたいということだと思います。血尿と蛋白尿がさらに一緒に出てきますと、これは腎炎としての要素が強くなりますので、やはりこれは紹介していただきたい。それだけに、尿所見はとても大事だといえると思います。

池脇

eGFR以外の糖尿病の方の場合には微量アルブミンがあるかどうか、そうでない場合の蛋白尿の定量で、ある一定以上の方の場合は、遠慮しないで専門医に紹介して評価を受けて、また逆紹介で診ていく。むしろ紹介しないままひどくなるよりは、いいということでしょうか。

酒井

はい。ファーストタッチで紹介していただいて、そして逆紹介をして診ていっていただいて、特に問題がなければ、1年後でよいかと思います。

池脇

そうしますと、遠慮しないで腎臓専門医に一度診てもらうというのは、むしろ先生方としても推奨しているということでよいでしょうか。

酒井

もちろんそのとおりです。生活習慣病等々の治療を継続して、そこに腎臓病の特殊な治療が必要かどうかをファーストタッチで診させていただきたいと思います。

池脇

どうもありがとうございました。