池脇
本日は過多月経、そしてそれに対する新しい治療なのでしょうか、マイクロ波子宮内膜アブレーションについての質問をいただきました。過多月経は、比較的若い方から更年期の方まで幅広い女性が抱える問題だと思うのですが、最近過多月経が多いのかどうか、どうでしょうか。
山本
過多月経自体は、多いのか少ないのかという数ははっきりわからないですね。過去から言われているとおり、アジア圏の女性、特に日本人女性は生理に関してあまり多く語らないということもあります。特に日本には非常に充実した生理用品があり、生理の多少で困っていても、海外の方が対応できないような状態もご自身で対応できてしまうということがあります。過多月経が増えているかというはっきりしたデータもありません。ただ、そういった形で生理の量で困っている方がいるということは、我々としても知っておかなければいけない部分かと思っています。
池脇
確かに他人の月経の量と比べるようなこともなければ、多少困っていてもこんなものだろうということで、医療機関までつなげる方は、日本人の特性としては多くないかもしれませんね。
山本
そうですね。診断には過多月経の定義が幾つかありまして、生理の量として150mLという基準が決められています。実際この量がどのくらいなのかと言われてもぱっとわからないかと思います。一つの目安として、多い日用のナプキンを使用していても日中にナプキンから溢れてしまうことを経験する、もしくは生理のたびにナプキンを1時間ごとに交換しなければいけない、もしくは生理のときに塊状のもの、例えばうずらの卵2個分、にわとりの卵の半分ぐらい以上のものが毎回出る方は、生理が多いと考えていただいたほうがいいかと思います。
池脇
今挙げられた条件以外に、例えば貧血を伴う、あるいは貧血の症状がある、これも過多月経の条件の一つに入るのでしょうか。
山本
そうですね。過多月経の結果として鉄欠乏性貧血になることがあります。日本人は特に鉄分の摂取が不足することが多いので、過多月経の症状として、内科の健診などで鉄欠乏性貧血として引っかかってくる方がいらっしゃいます。
池脇
生理に対する対処も、実はたいへんでもそれが普通だと思っている方もいらっしゃれば、それほどではないけれども自分は辛い。その方のとらえ方によっても過多月経かどうかというのは変わってくるのでしょうか。
山本
そうですね。過多月経の診断に際して、先ほど量の話をしましたけれども、量を量るという方はあまりいらっしゃらないと思います。過去、私は一人だけ、「毎月これぐらいのグラム数を」という表を持ってきた方がいらっしゃいましたが、それぐらいの頻度です。
過多月経というものは、医療者のほうでも勘違いはありますが、非常に主観的なものです。生理の量が多くて困っているという患者さんがいらっしゃれば、その方を過多月経と診断して、何らかの対処を考えるべきだと私は思っています。
池脇
今回の質問ですけれども、子宮筋腫や子宮内膜症がないにもかかわらず、過多月経ということですが、子宮の器質的疾患による過多月経と、そういうのがない機能性の疾患があると聞いていますけれども、その辺りを教えてください。
山本
過多月経も原因があるなしで分けられます。原因と呼ばれるものの多くは、子宮側の問題です。このようなものを器質性過多月経といい、先ほどお話に出ましたように、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、子宮内膜増殖症といった子宮側の問題による症状です。
それに対して、機能性過多月経といって、子宮には先のような問題がない。ただし、出血のコントロールにはいろいろな因子が関わってきます。よくあるのは卵巣の機能。生理不順などホルモンの不調が原因で生理の量が多くなっている。もしくは、内科の治療や、もともとご本人が持たれている血液の凝固の異常など、そういったものが関わって起こっている。つまり医原性であったり凝固因子の問題で起こる過多月経もありますね。ですから一概に「子宮に問題がないから、あなたは大丈夫だよ」と言ってしまうのは、ちょっと考えたほうがいいという部分があります。
池脇
今回は、子宮に問題がない過多月経の質問ですけれども、確認ですが、もし子宮に子宮筋腫等の器質性の疾患があれば、これはそれに対する治療ということになりますよね。
山本
そうですね。原因がある場合にはその原因を取り除くことが、医療としては一番かと思います。
池脇
過多月経に対してどう対処するか、マイクロ波子宮内膜アブレーションをお聞きなのですけれども、これまではどういう治療が行われてきたのでしょう。
山本
子宮筋腫が一番わかりやすいのですけれども、子宮筋腫が原因となっているのであればその子宮筋腫を取る、子宮を残す必要がないのであれば子宮全摘するというのがゴールドスタンダードで、過去からずっと行われてきた治療です。手術以外にもホルモン治療で月経をコントロールして、症状を抑えるのが治療の基本です。
池脇
新しいアブレーションという治療があるけれども、手術以外の方法でコントロールできるのであれば、まずそれを最初にということなのでしょうか。
山本
基本的な流れとしてはそうですね。よほどの緊急性がなければ、手術以外の方法で管理する。ただ、どうしても管理ができない方には、手術療法を考えるというかたちになります。
池脇
以前は手術であったところにマイクロ波内膜アブレーションが最近登場してきたということなのでしょうか。
山本
子宮内膜アブレーションというものも、外来で日帰り手術でやられている施設もありますが、手術というかたちにはなります。
池脇
アブレーションというのは焼き切るという意味ですよね。具体的にどのような治療なのでしょう。
山本
子宮内膜と呼ばれる部分が脱落し、新しい子宮内膜が形成される、その間出血をするというのが、簡単な生理のメカニズムです。
子宮内膜がはがれたときに出血する、子宮内膜基底層という部分があります。子宮内に器具を入れ、その先端からマイクロ波を照射して熱を発生させて、子宮内膜基底層の部分、そして筋肉の部分を一部含めて、熱で壊します。壊してしまうことでホルモン等にも反応しなくなりますし、血液の流れもなくなるという形で、出血を抑えるという治療です。
池脇
アプリケーターを膣から子宮に挿入して焼くのはブラインドの操作になりますけれども、子宮の内膜全域をうまく焼き切ることができるのですね。
山本
はい。子宮の形に大きい変化がない方であれば可能です。手術中は子宮の中で、盲目的な操作を極力避けるために、超音波で子宮を観察しながら、器具の位置に問題がないかなどを確認しながら操作をしていきます。
一般的な流産の手術など、子宮の中を操作するというのは我々産婦人科医にとっては比較的慣れ親しんだ操作ですので、それほど難しい操作ではありません。なので子宮の中を隈なくマイクロ波で照射するというのは、理論的にはそれほど難しいことではないです。
池脇
そういうことを行うことによって、その効果や再発率はどのくらいでしょうか。
山本
そこは非常に難しいところで、対象の患者さんが若ければ若いほど、再発が多いとされています。治療効果としては、子宮に器質的な問題がない方であれば9割以上とされています。
池脇
9割以上というのは非常に高いですね。
山本
はい、非常に高いです。
池脇
内膜を焼き切るということは、もう妊娠、出産はできないと考えてよいですか。
山本
はい。基本的には子宮の最大の機能である妊娠という部分は、子宮の内膜を破壊することで失われてしまいます。しかし、まれに妊娠してしまうことが海外の報告等でも、類似したアブレーションの手術でありまして、その場合には命に関わるような周産期リスクが生じてしまいますので、この手術を受けられる方には、妊娠・避妊に関してはしっかり気をつけていただくように、こちらからも十分説明させていただいています。
池脇
アブレーションの適応に関して、注意すべきケースとして、子宮壁が薄い方は適応外とありますが、その辺りは事前に超音波で確認をしてということでしょうか。
山本
そうですね。超音波よりもMRIを使って子宮の形をしっかり評価しています。子宮の内膜から筋肉の外まで熱が及んでしまうと、子宮の周りには腸などがあって危険です。それを避けるために、子宮の形態をしっかり把握することを実施ガイドラインにおいて求めています。
池脇
マイクロ波の内膜アブレーションをやるようになったということは、逆に言うと、子宮摘出などの手術はあまりやられていないと考えてよいでしょうか。
山本
非常にそこは悩ましい質問なのですが、この手術は、先ほど申しましたように子宮の機能を損なう面があって、子宮全摘という手術の、子宮を残す版のようなイメージです。
選択肢として子宮を全摘するというのは根治的なかたちなのですね。子宮全摘は過多月経の治療として100%の効果を発揮しますが、それでもやっぱり子宮は取りたくないという患者さんのご希望はあります。その中で、可能であればこういった手段もあるというかたちで、選択肢の一つとして、マイクロ波子宮内膜アブレーションという治療を我々からも提示するようにしています。
池脇
本日は新しい治療法に関して詳しく解説をいただきました。ありがとうございました。