ドクターサロン

池脇

本日は、肺癌に関係したすりガラス状結節で、どのように経過を見ていったらいいでしょうかという質問です。

今、肺癌は日本における癌死亡原因の第1位ということで、非常に重要な癌です。さて、すりガラス状結節ですが、これは胸部の単純のレントゲンの所見なのか、CTの所見なのか、どうなのでしょうか。

渡辺

すりガラス、ground-glassですけれども、CTで非常に淡い濃度の影で、レントゲンでは全く写りません。これはCTでの所見のことです。すりガラス状結節と最近呼ばれますが、最初のころはGGOと呼んでいました。Ground-glass opacityというのは、すりガラス濃度の陰影すべてを指し、炎症なども含まれます。その中で、明らかに腫瘍のような形のものを最近はすりガラス状結節と呼んでいます。ちょっと区別しないといけません。

ground-glass、すりガラスというのは、アメリカの放射線学会が最初に決めた定義です。高解像度のCTで見ると、普通の肺癌というのは、肺の中を走る、血管と同じような真っ白く写る濃度のものなのです。ところが、CTが発達してきて、早期の肺の腺癌という癌が淡い影からできてくるというのがわかってきました。

すりガラスというのは、腫瘍の中に血管が透けて見えるという意味なのです。普通の肺癌ですと、CTでは真っ白に写りますから、中に血管が入っていても全くわからないのですが、すりガラス状結節の場合は、腫瘍よりも濃度の濃い血管が中を走っているのがわかるというのがすりガラスと呼ばれるゆえんです。ぼんやり向こう側に血管が見えるということで、すりガラスと。

池脇

通常の進行した肺癌はすべて肺癌組織だけれども、すりガラス状結節はそこにまだ気管支とか血管が残っている。そういう感じなのですね。

渡辺

そのとおりです。だから巻き込まれてもいないし、腫瘍の中を血管が普通に走っている。それぐらい早期の、要するに肺胞と呼ばれる腔に、まだ空気が入って残っているぐらい早期のもの。この早期の腺癌を肺胞上皮置換性の癌というのですが、肺胞というところの空間の上皮が何層か癌に置き換わっているだけで、中に空気がまだ残っている。進行癌では癌細胞がぎっしり詰まってそんなことが全然ないのですけれども、それぐらい早期のものだということになります。

池脇

すりガラス状結節は1㎝未満の小さなものもありますが、CTそのものも高解像度でないと、きっちりとは見れないのでしょうか。

渡辺

そのとおりです。元々のすりガラス陰影と呼ばれるものの定義は、Thin Slice CT(薄切CT)という、薄く切ったCT、定義で言えば1~2㎜くらいの薄いスライスで腫瘍を切ったもの。それで初めてすりガラスかどうかがわかるということになります。

池脇

肺癌は非小細胞癌と小細胞癌、そして非小細胞癌の中に肺腺癌などがありますが、基本的にすりガラス状結節は肺腺癌ということでよいでしょうか。

渡辺

そうですね。ほとんどが肺腺癌です。たばこを吸っている方にできる小細胞癌とか、そういう悪い癌についてはCTでも白く写りますから、すりガラスの部分はほぼないです。これは主に腺癌の初期に見られる像ですね。

池脇

私も人間ドックの胸部CT検査で、すりガラス状陰影を見ますが、すりガラス状結節も時々見ます。日本人の頻度についてデータはあるのでしょうか。

渡辺

はっきりとしたデータはないですけれども、ある程度の年齢の方に胸部CTを撮影すると、すりガラス濃度の陰影を認めることをしばしば経験します。

池脇

なるほど。

渡辺

肺の中でどこかにはそういう影がおそらくあるのではないかなと思います。ただ、すりガラス陰影といっても2つあって、一つは肺癌の初期のもの。ほかに多くあるのは炎症の跡とか、そういうのがすりガラス陰影として写ります。

どういうふうにしてこれを見分けるか。小さいですし、生検とか気管支鏡をやっても診断はつきませんから、基本的には最初は様子を見ます。例えばすりガラス陰影で癌じゃないかと紹介されて、がんセンターでCTを撮ってみると、影が消えていたとか、小さくなっているという例は少なからずありますので、まずは2、3か月経ってからもう1回CTを撮って、それで癌か炎症かを見極めるという作業をします。だから、すりガラスを見ていきなり手術とか、いろいろなことをすることはなくて、まずは通常は経過観察ですね。

池脇

今回の質問は、CTでどういうふうにして経過を見るのか。これはおそらくサイズですとか、中の状況によって判断が分かれてくると思うのですけれども、具体的にはどういうふうにして経過を見られているのでしょう。

渡辺

先ほども申しましたが、2~3か月後にCTを撮って、影がもし小さくなったり消えたりしていなければ、癌の可能性があるということで、通常は、その後、多くは半年ごとぐらいに見ていきます。2、3年、半年ごとに見て、変わらなかったら1年に1回にするとか、そういうパターンが多いかなと思います。大きさの変化はThin Slice CTじゃないと比較が全然できませんので、必ずThin Sliceで撮るというのが条件ですね。

池脇

大きさというファクターと、あと先生方は”芯”という言葉を使われて、いわゆるすりガラスよりもちょっと濃度の高い、充実性の中心部分が大きくなってくると癌を考えるということなのでしょうか。

渡辺

そうですね。2通りあって、全体のすりガラスが大きくなっていくパターンと、全体はそんな大きくならないのだけど中に芯みたいな部分ができる。CTでいえば真っ白い部分が出てくる。我々は「目玉焼き」などというのですけれども、目玉焼きの黄身の部分が出てきて大きくなってくる。これは要注意です。

CTで、すりガラスの部分というのは、非浸潤性といって転移したりすることはないのですが、真っ白く写る部分は癌としては悪い部分なのですね。リンパ管や血管に入り込み、転移する可能性があるので、一応CT検診ガイドラインでも中心の芯の部分が8㎜以上になったら手術を考えましょうということになっています。

池脇

そういう意味では芯の部分の8㎜以上、全体のサイズ、あとは場所ですとか、その方の年齢とか、いろいろな要因で手術をやるのかどうかということになるのでしょうか。

渡辺

おっしゃるとおりです。肺の端のほうにできれば取るのは簡単なのですが、肺の中心に近いと、取るときには肺葉切除とか、かなり大きく取らなければいけない場合もありますから、その場合はすりガラス陰影がかなり成長しないと手術をしないということもあります。端のほうにあれば、逆に簡単に取れるので手術をする場合もありますが、例えば85歳ぐらいの方がそういう中に芯もほとんどないようなすりガラス陰影で来られた場合は、通常は様子を見るというのが一般的だと思います。

池脇

患者さんとしたら、「先生、癌なのか、どうか診断をつけてくれませんか」という気持ちになると思うのですが、確定診断はなかなか難しそうですね。

渡辺

そうですね。癌の場合は通常、気管支鏡という内視鏡で診断をつけますが、すりガラス状結節については、内視鏡の相当高度なテクニックとか器具を使わないと無理ですし、気管支鏡検査そのものにリスクがあります。肺の中で感染を起こしたり、いろいろ合併症も起きうるので、通常は、すりガラス濃度だけの初期と思われるものについては積極的にはそういう検査はしないで、大きさや内部の濃度の変化を見るというのが一般的だと思います。様子を見ることで命を落とす危険性もほぼないですし。

池脇

先ほど先生との打ち合わせで、以前は積極的に手術をしていたのだと。今はむしろ、手術をしなくていい症例の選別をきちんとやれるようになったということに驚きました。

渡辺

昔は小さいものでも本当に日本全国でこぞって取っていたのですね。そういうものを取った後、顕微鏡で見た情報の積み重ねが現在ガイドラインとかに生きていて、例えば15㎜以下のすりガラスだけのものは取らなくていいとか、いろいろな基準があって、むしろこういうものは取らなくてもいいということが最近わかってきて、実践しているというところです。

池脇

最終的に手術しましょうということになったときに、できるだけ肺の機能を温存するような手術になっているのでしょうか。

渡辺

そうですね。早期癌で、リンパ節転移を起こしていないような癌ですから、基本は小さく取る。完全にすりガラスだけの陰影、あるいはそれに近い、芯の部分が小さい場合は部分切除でいいとされています。それよりちょっと芯の部分が大きいなと思われるようなものについては、区域切除といって、肺門部という、リンパ節まで一緒に取れるような手術が今は主流になってきています。

池脇

先ほど高齢の話が出ましたけれども、すりガラス状結節が出てくる方はたばこを吸わない、あるいは女性の方、肺癌とは無縁という方が多い。

渡辺

そうですね。

池脇

でも予後良好の肺癌なので、きちんと拾い上げるかが大事なのですね。

渡辺

肺癌というのは一般的には亡くなる方が一番多い癌なので、怖いイメージがありますけれども、すりガラス陰影の腺癌というのは若い女性の方に最近増えています。原因はわからないですね。非喫煙者の方でもたくさんできます。皆さん「私が肺癌ですか?」と驚かれるのですが、「ちまたでいう肺癌とは違うんです。これは、手術で取ればそれだけで完治して、抗がん剤も何もいりません」ということを話していますし、女性の方でもCTでの検診を受けられるのがお勧めかなと思います。毎年あるいは2年に1回ぐらいCTを撮っていれば、非喫煙者であれば肺癌で死ぬことはなかなかないのではないかなというのが私の意見ですね。

池脇

今回はすりガラス状結節、予後良好な肺腺癌ということで、できるだけ広く肺癌検診を受けていただくということでしょうか。

渡辺

そうですね。ただ、自治体でCT検診をやっているところは本当に少なくて、今のところは人間ドックのオプションでお金を払ってやるというのが必要なのですけれども、自分の命を守るという意味では、たばこを吸わないから大丈夫だと思わないで、ぜひCTを受けていただければと思います。

池脇

ありがとうございました。