山内
寺内先生、よろしくお願いいたします。まず、骨粗鬆症の重症度についてです。骨折と骨密度、この2つのファクターを見るというのは、これはこれで正しいでしょうか。
寺内
はい、そのとおりです。骨粗鬆症の骨折の場所はいろいろ考えられるのですけれども、非常に重要な骨折の場所として、椎体、脊椎、大腿骨、股関節のところがありますので、そちらのほうで骨折が見られ、しかも、その骨折が非常に弱い力で、立っている所から倒れただけでというような骨折が見られた場合には、直ちに治療が必要だと。
それ以外の場所でそのような弱い力によって骨折をした場合には、骨密度がある程度の低さであったときに治療の対象としようということです。また、どこにも骨折がなかったとしても、骨密度が非常に低かったら、治療の対象としようというのが原則的な考え方になっています。
山内
まず骨折のほうですけれども、椎体骨の骨折。よく猫背気味になる方で、ああいう圧迫骨折も代表的なものと考えてよいのでしょうか。
寺内
そうですね。ただ、よく言われることなのですが、痛いと思って病院に行って「ああ、ここは潰れましたね」という方が3分の1ぐらいで、残り3分の2のケースに関しましては、レントゲンを撮って初めてそこが変形しているのがわかると言われていますので、何かの拍子にレントゲンを撮ったら、背骨が潰れているのではないかということになると、そこで治療の対象になります。
山内
肋骨の骨折は日常でよく見られますが、肋骨骨折はあまり重要視はされていないわけでしょうか。
寺内
はい。ただ、肋骨の骨折も、車にはねられるとかではなくて、立っている所から転んだら肋骨が折れてしまって、そしてその骨密度が若い人の8割未満、少し少ないということになると、治療の対象になります。
山内
よく「これは骨折じゃない、ひび割れです」というのがありますね。これはいかがですか。
寺内
そうですね。ただ、この骨粗鬆症の領域での骨折というのは本当にバキッと真っ二つにという骨折だけではなくて、背中も少し変形があれば骨折と呼びますし、ひび割れも含めて骨折と考えています。
山内
あくまで骨折と骨密度の両方を見ながらということでよいのでしょうか。
寺内
おっしゃるとおりです。
山内
骨密度のほうですが、こちらの診断基準を教えていただきたいのですが、まずその前に、どういった形で測定するか教えていただけますか。
寺内
骨密度に関してはいろいろな測定の方法があるのですけれども、今最も信頼性が高いと考えられているのは二重エネルギーX線吸収法、DXA(デキサ)法というもので、それでもいろいろな場所を測れます。特に腰骨ですね、腰椎。それから大腿骨、股関節のところの骨密度を測る。これはX線の力を使って骨に含まれているリン酸カルシウムの量を測るわけですが、この量を測ったときに、若い人を基準としてそれを100点としたときに、8割未満というので一つ信号が黄色に変わり、7割未満というところで信号が赤になるということですので、先ほどの例でいうと、どこか腰椎、大腿骨以外の骨折があって黄色信号であれば治療の対象になりますし、そういうものがなくても、赤信号であれば治療の対象となるという考え方です。
山内
具体的にどういった単位がよく使われるのでしょうか。
寺内
骨密度そのものの値としてはg/㎠、平方センチメートル当たりのリン酸カルシウムの質量(g)ということになりますけど、実際にはその値を使って患者さんとお話をすることは少なくて。
山内
難しそうですね。
寺内
あくまで若い人を100点としたときの80点とか70点とか、日常臨床ではそういう言い方をするのが一般的かと思います。
山内
その値はすごくわかりやすいですが、逆に言うと、少し相対的なところもあるという感じも否めないわけでしょうか。
寺内
そうですね。ただ、よく患者さんとお話をしていて思うのが、同世代の人と比べてどうなのかということが気になる人が多いです。同世代の人と同じだったらいいというわけではありません、若い人と比べてどれぐらい低くなっているかが大事なんですよというお話をよくしますので、そういう意味で言うと、とてもわかりやすい基準なのかなと思います。
山内
逆に言いますと、先生方のご経験で、かなり高齢というか閉経後でも、わりに保たれている方もいらっしゃるのでしょうか。
寺内
そうですね。ここに関しては、本当に若いときのどのような因子が関係するかというのもいろいろ研究がありますけれども、第一にはやはり遺伝。お母さま、お父さまの骨の量、強さは遺伝することがわかっていますし、その方が若いときにどれぐらいきちんと栄養素を取り入れていたか、あるいは若いときにどれぐらい運動をしていたか。運動も、ハイインパクトエクササイズといって、足とか、そういうところに衝撃が加わるタイプの運動をされていれば、その分、骨が強くなるということもわかっていますし、幾つかの要素があります。
山内
さてこの質問ですが、40歳でも加療が必要でしょうかということですが。年齢の要素に関して少しうかがったのですが、原則的には何歳辺りで分けられると考えてよいのでしょうか。
寺内
骨粗鬆症になる方が多いのは閉経後ですので、50歳を過ぎ、60歳、70歳となっていけば、数として多くなっていくのですけれども、治療の基準に合致した場合には、40歳であっても30歳であっても治療するということになりますし、80歳の方でも骨がしっかりしていれば治療の対象とならない方もいるということで、年齢を加味して診断を変えるとか治療の開始基準を変えるということはありません。
山内
あくまで先ほどの診断基準に沿ってということでしょうか。
寺内
そういうことになります。
山内
女性の場合ですと、例えば卵巣の摘出をした方もいらっしゃると思いますが、こういった方は当然早まるというふうな。
寺内
おっしゃるとおりです。自然閉経というのはだいたい51~52歳と考えられていますが、自然閉経の方は比較的その前後から緩やかに骨の密度は低下していきます。一方、手術、例えば悪性腫瘍などで卵巣を摘出した結果、閉経状態になることを外科的閉経と呼んでいますが、外科的閉経の場合には急速にエストロジェンが低下することもあって、骨密度も非常に鋭く減っていくことが知られていますので、若い方でも卵巣摘出をすると急速に骨が減り、このような治療開始の対象となることも考えられます。
山内
一般的には、閉経して例えば何年ぐらいで先ほど言った黄色信号の辺りになると考えてよいでしょうか。
寺内
ここは65歳というような話をされる先生もいらっしゃいます。どれぐらいの割合の方を拾うかという話になってくるのでなかなか難しいですけれども、例えばアメリカなど、骨密度の検査は65歳以降にしましょうと言っているところもあります。ただ65歳になったところで初めて検査をして、ものすごく低いということがわかって、そこから治療では少し遅いということもありますので、少し早めに検査をしていくということ自体は決して間違ってはいないと思います。
山内
ほかのリスク因子として少し念頭においたほうがいい、例えば糖尿病でも骨密度といいますか骨減少があるようですが、そういったものや遺伝といったものは、ある程度目配りは必要でしょうか。
寺内
例えば糖尿病の場合、特に2型糖尿病の場合には、骨密度はそれほど減っていなくても骨折のリスクが上がるということが知られています。最近、例えばこういう病気があったら気をつけようというのは関節リウマチやCOPD、そういったものに関しては骨粗鬆症を合併しやすいということが知られていますので、それら疾患にも目配りは必要だと思います。
また私たちの領域でいうと、先ほど卵巣摘出のお話もありましたけれども、月経が早く止まってしまった方は当然ながらリスクを抱えているということになります。
山内
あともう一つはこの質問のケースですが、相当痩せていらっしゃいますね。痩せ型はやはり栄養バランスを失って、カルシウムが少ないとか、運動不足もあるでしょうけれども、こちらへの配慮はいかがなのでしょうか。
寺内
ここが今非常に大きな問題となっていて、日本は世界でも特異的に若い女性の痩せが多いと言われています。痩せている方はなかなか摂食が十分ではない方が多く、必要な栄養素、カルシウム、ビタミンD、ビタミンKといったものがとれていないケースもあります。今お話があったように、運動もあまりしていない方が多いので、体に負荷がかからない、骨が減る。あるいは、ビタミンDは皮膚で紫外線によって作られるわけですけれども、痩せている方は、外出して日光を浴びる、紫外線を浴びるというようなことも少ない方が多いので、ビタミンDも作られにくい。
そして何よりも痩せているということで月経不順や無月経になりますので、私たちの領域でいうと、痩せ、月経不順、無月経は骨密度を低下させる大きな要因であるということがわかっています。この方は非常に痩せていらっしゃる、BMIでいうと16.5ということになりますので、何重にも、若いときから低骨密度、骨折のリスクという意味で言えば、危険因子をたくさん持っていた方だと思います。それがためにこのような年齢でも治療が必要になったという可能性は十分にあるのではないかと思っています。
山内
この場合の治療ですが、普通の治療とまた異なると考えてよいのですか。
寺内
閉経前と書いてありまして、この方の月経の状態がどうかによって大きく話が変わってきます。この方がもし本当にものすごくきちんと月経があるということになると、ホルモン、エストロジェンを補うことの意味合いはあまりなくなっていくということになりますが、閉経前と書いてあるけれども、例えば希発月経といってたまにしか月経が来ないとか、そのような方であればホルモンを補うことに意味があるかもしれないとか、そのような幾つかの要素を考えて治療の方針を決めていくことになります。
あるいは、先ほどお話ししたような摂食の問題で栄養素が足りないということもあるかもしれない。その場合にはそこから手をつけていくことになるかなと思います。
山内
栄養バランスの改善が優先されることもあるということですね。
寺内
十分にあり得ると思います。
山内
最後に、予防的治療という概念はあるのでしょうか。
寺内
そうですね。私たちの分野、あるいはこの症例を特に考えると、もしかしたら若いときから痩せていて、月経も不順、あるいは栄養素の摂取が非常にバランスが悪かったということもあったかもしれません。そのような方に栄養指導、あるいは月経が不順、無月経という方にエストロジェン、女性ホルモンを補っていくというようなことは、高齢者の閉経後骨粗鬆症の治療とはまた違った意味での予防的な介入ということになるかなと思います。
山内
ありがとうございました。