ドクターサロン

池田

秀先生、本日は、よく我々も経験します蕁麻疹に対する治療ということで質問が来ているのですけれども、まず原因が特定できない蕁麻疹という質問なのですが、蕁麻疹というのは、どうして起こるのでしょうか。

秀

蕁麻疹というのは、皮膚にマスト細胞というアレルギーの中心になるような細胞があって、それが何かの刺激で激しく活性化されて、中にある物質、特にヒスタミンといわれるものが皮膚の中にぼっと出る。それに血管と神経が反応して起きるのが蕁麻疹の症状です。

池田

よくアレルギーで起こるのではないかというお話もありますよね。アレルギー以外にどのようなものがあるのでしょうか。

秀

蕁麻疹の原因というと、アレルギーはあるにはあるのだけど、ほんの一部なのです。いろいろな報告があるけど、10%以下。アレルギーでは蕁麻疹が出ることが多いのだけど、蕁麻疹の側からいうと、アレルギーで起こることはほんの一部です。しかも、毎日のように出る蕁麻疹がアレルギーで起きるということはほとんどないです。

では何で起きるのかという話ですよね。でも、そもそも蕁麻疹は、特定の刺激で起きる刺激誘発型と、特定の刺激も何もなくても毎日自然に、自発的に時限セットされたみたいに繰り返して起きる特発性に分けられます。基本的には毎日同じように起きるものを原因不明という意味で特発性の蕁麻疹といいます。

では特発の蕁麻疹の原因は何かということです。原因なくしてこのような病気が起きるはずはないので、原因はあると思うのですけど、今の医学で「これが原因です」と言えるほどの明確な仕組みはわかっていないのです。なので、特発性の蕁麻疹という名前でひとくくりにして呼ぼうということになっています。

池田

ではほとんどがいわゆる特発性といわれているものなのですね。

秀

はい、多くが特発性です。それから刺激誘発性というものの中にはアレルギー性のものもあるし、引っかいたところにだけ起きるとか、運動をして汗をかきそうになったら起きるとか、水に触れたら起きるとか、アレルギーとはいえない特定の刺激があって起きるものもあります。これがだいたい5分の1から4分の1ぐらいですかね。でもだいたい7割から4分の3ぐらいは明らかな原因とか誘因なく、自然に起きる蕁麻疹です。

この毎日起きるようなものに、今の我々がわかるような特定の原因があると思って追究するのは、大きな落とし穴への入口ですね。なのでその発想に基づいてアプローチすると、答えのないドツボといいますか、ルートの中に入っていきます。アレルギーの検査をしても引っかかることはまずないですから。でも患者さんは「検査をやったのだから」「それでわかるだろう」と期待を持ってしまい、ますます深みにはまっていきます。それでさらにいろいろ内臓の検査などをしてもわかることはないですね。なので、毎日同じように起きる蕁麻疹は、今の医学で特定できる原因はない、あるいは、わかっていないということは、最初に認識したほうがいいと思います。

池田

2つ目の質問です。第2世代のヒスタミンH1受容体拮抗薬を2種類処方する意味、あるいは、ヒスタミンH2受容体拮抗薬は適応はありませんが用いられています、効果はありますかという質問です。これはたぶんガイドラインの話になると思うのですけれども、蕁麻疹のガイドライン上、抗ヒスタミン薬の使い方というのはどのようになっているのでしょうか。

秀

日本のガイドラインと国際的なガイドラインで記述が少し違います。これには日本の医療保険制度が大きく影響しています。日本では、多くの抗ヒスタミン薬の電子添文には適宜増減という表現があり、慣習的に2倍までは保険での適用が得られます。

ところが、国際ガイドラインでは、抗ヒスタミン薬は通常量で効果がない場合、4倍量まで増量することが推奨されているのですね。実際、通常量で効果がないときに4倍量まで増量したほうが蕁麻疹のコントロールがよいというエビデンスがあるものだから、国際的なガイドラインではそれを推奨しています。

ところが、日本の保険医療制度では、一つの抗ヒスタミン薬を4倍量出したら、多くの県で査定されると思います。しかし、2種類の組み合わせだったら通してくれるというところが多いものですから、ある意味妥協で、異なる種類のものを組み合わせることを許容しています。

ただ、薬理学的には、異なるものを組み合わせるよりも一つのものを増したほうが効果が高く、実際、弱いですけどそういうエビデンスもあります。なので、本当は一つのものを増やしたほうが望ましいのですが、両者の違いがそれほど大きいわけではないので、実用的に2種類のものを組み合わせることも許容しているというのが現状ですね。

私自身は、2種類の標準量を組み合わせるというよりは、同じ種類のものを2倍量に増量するようにしています。

池田

ヒスタミンH2受容体拮抗薬の話もありますけれども、従来よくステロイドとかシクロスポリンも使われてきました。それと、最近出ているオマリズマブですかね、この辺の使い方はどのようになっているのでしょうか。

秀

実臨床においては、患者さんへの負担を考える必要があると思います。効果と患者さんへの負担のバランスです。症状を抑制するという点では、オマリズマブ、ステロイドは多くの場合高い効果があると思います。だけど、ステロイドは費用は安いけど副作用の問題があり、1、2週間ぐらいの短期間使う場合には副作用が問題になることはまずないと思いますけれども、それぐらいで蕁麻疹の活動性が治まることはあまりなく、長く使うと高い確率で副作用が現れます。ガイドラインでは、非常に症状が激しい場合に短期間だったらいいけれども、長く使うことはしないほうがいいということになっています。

オマリズマブはIgEに対する中和抗体で、高い効果が確認されています。ただ、抗体医薬ですので、けっこう費用が高く、注射薬ですから、飲み薬に比べると身体的な負担があります。一方、H2ブロッカーは、費用的にも身体的にも患者さんへの負担が少ない。また、モンテルカスト(抗ロイコトリエン薬)もH2ブロッカーと同列の補助的治療薬として位置付けられています。これらの薬剤には弱いながらエビデンスがあります。しかし、保険適用がありません。なので、症状がそれほど激しくはなくて、治療効果が得られるまでに、まだ少し待てる余裕があるときに試してもよいとされています。

一方、症状が非常に激しい、あるいはそれらの薬を試してみたけど効果がないという場合には、先生が今言われたオマリズマブとかステロイド、シクロスポリンが第3ステップの候補に挙がってきます。

IL-4、IL-13のレセプターに対する抗体のデュピルマブという薬がありますが、これが一昨年の2024年の春に、アトピー性皮膚炎や喘息に加えて慢性蕁麻疹に対しても適用が拡大されました。そのため、このクラスには、オマリズマブとステロイド、デュピルマブが並ぶことになります。

ただし、ステロイドは長期使用は推奨されませんから、あくまでも一時的に使ってみて、症状が軽くなっていくようであったら漸減するという前提で認められます。

池田

オマリズマブの使い方というのはどのようになっているのでしょうか。

秀

オマリズマブは、4週間に1回300㎎を皮下注射する薬です。喘息で広く使われていたのが、慢性蕁麻疹にも適用が拡大されました。ガイドライン上は、皮膚科やアレルギー専門医、あるいは、それらと連携が取れる施設で使うことが推奨されています。頻度は非常に低いのですけど、アナフィラキシーの報告があり、アメリカではかなり高いレベルの注意喚起がされているものですから、ちょっとハードルが高いのですね。注射薬はいずれもそうですけど、打ったときにかえって蕁麻疹が出たり、アナフィラキシーのような症状が出たり、一時的に悪くなったりする例がまれにあります。特に初期に使うときは、それなりの経験がある、あるいは、それなりの施設で導入されるのが良いと思います。

しかし、治療成績は良好であり、多くの人に何らかの効果が感じられますし、高い効果が実感できる人も比較的多い印象があります。ただし、一部効果のない人もいますので、その点は留意してください。

池田

オマリズマブの効果ですけれども、判定時期はいつごろなのでしょうか。

秀

これが人によってけっこう開きがあります。いい人は、打って2、3日で劇的に症状が緩和します。次の日から出ないという人もいるぐらい。そこまで効果が高い人は10人に1人ぐらいで、多くの人は1、2週間で効果が感じられます。

また、その効き方についても、人によってかなり差があります。注射なので、血中濃度がいったんガーッと上がり、1週間目ぐらいで最高になって、まただんだん落ちてきます。そして4週間後ぐらいでだいぶ低くなるので次の注射を打つという使い方をします。1回目より2回目のほうが体内での濃度の上がり方が少し高く、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目ぐらいまではだんだん効果が高くなってくる可能性があります。だから私はこの注射をするときには、3回まではやろうねとお話ししています。

3回打って全く効果がない人に、それ以上続けた場合、少しは効果が出てくる可能性はあります。また、海外のエキスパートは、6回ぐらいまで打ってみたほうがいいと言う人が多いです。つまり6か月ですね。しかし、実臨床では、3回注射して全然効果がなかった人にさらに続けるというのは薬価が高いこともあり、けっこう辛い面があります。なので私は、3回は注射するということで患者さんにお話ししています。

池田

逆に、3回ぐらいはやってくれそうな人に治療に入ってもらうということですね。

秀

そうです。オマリズマブは、発売当初は3割負担で2万7,000円ぐらいでした。診療を受けて初めて費用のことを聞いたら使用を逡巡される患者の方も多かったです。でも、だんだん薬価が改定されて安くなり、今1万2,000~3,000円になって、希望される人が多くなりました。

それにしても3回分で4万円近くにはなりますので、合計それくらいかかるということはお話しした上で始めるようにしています。

池田

なるほど。少しお話をうかがうと、言い方は悪いのですけれども、たかが蕁麻疹と言われた時代から、だんだん新薬も出てきて、かなり専門性の高い分野になりつつあるということですね。

秀

はい、そう思います。蕁麻疹の治療は、本当に長い間抗ヒスタミン薬しかなかったと思います。その中で、第1世代と第2世代で眠気が強いとか弱いとかいったことしか言えない時代が長く続きました。どの薬が効くかというのは個人差があるから予測できません。だけど、今は治療薬が増えてきましたし、まだ厳密にはわからないけど、ある程度、各薬の性質というか、タイプによって、こういう人にはこの薬がより効果がありそうだということが少しずつわかりつつあります。蕁麻疹治療は今どんどん変わりつつあるということを感じています。

池田

どうもありがとうございました。