ドクターサロン

池田

塚本先生、本日はサイバーナイフについて質問が来ているのですけれども、サイバーナイフというのはいつ頃からあって、なぜサイバーナイフというふうになったのでしょうか。

塚本

サイバーナイフは、いわゆるピンポイント治療を行う放射線治療装置です。ピンポイント照射を専門的には定位照射と呼び、位置を定めると書いて「定位」です。英語のstereotacticを日本語で「定位」と訳して使っています。

定位照射は頭から始まり、1980年代ぐらいから普及し始めました。ガンマナイフと言われる装置をご存じでしょうか。頭の中の病気だけをガンマ線で治療する装置です。日本では1996年4月から保険適用になっています。定位照射はその後、頭だけでなく首から下、いわゆる体幹部と呼んでいる部分にできるようになりまして、これが2004年4月から保険適用になっています。それで体幹部定位照射ということになりまして、22年の歴史となります。サイバーナイフはもちろん頭蓋内もできますが、体幹部に適した代表的な装置となっています。

池田

定位照射と放射線治療というのはどんなふうに違うのでしょうか。

塚本

放射線治療はもちろん病気のところに放射線を当てるわけですけれども、体内の病巣は外から見えませんので、そこにどういうふうに当てていくかが非常に重要になります。見えない病巣にいかに照射をするかということで、昔は体の姿勢を完全に再現しながら、あらかじめ決めたところに合わせるリニアック装置という、たいへん大きな機械を使っていました。コンクリートに固定されてしまって、装置は全く動かないようなものです。その寝台に寝た患者さんを動かして、患者さんの中にある病巣を装置の下に持っていって、そこに放射線を当てるという仕組みだけでやっていました。

ところが、サイバーナイフはこれと全く違って、ロボットアームの先に放射線の治療装置がついていまして、ロボットアームは勝手にいろいろな方向に動く、そういう仕組みになっています。ですから病巣がどこにあるかということをX線の目で見て、それでどこにあるかということを探って、そこにロボットアームで狙う、そんな仕組みになっています。

ですから、昔はあくまで姿勢を再現して、そこに患者さんを動かして装置の真ん中に持っていって治療するということでしたので、5㎜程度の誤差はしょうがないとなっていたのですけど、サイバーナイフ装置になってからは1㎜以内の誤差で、病巣に当てることができるようになってきました。

サイバーナイフのもう一つの大きな利点は、病巣が患者さんの体の中で呼吸で動くことも多々あるのですけれども、それも動いている様子をロボットが追いかけてぴったり狙うということもできます。ですからサイバーナイフというのは、特に胸腹部の、呼吸性移動のある病巣に適した装置になります。結局、患者さんを動かして病巣を機械の下に持っていくのか、あるいはX線の目で病巣の位置を確認してそこをロボットで狙うのか、この違いによって大きな照射精度の差が生まれていることになります。

池田

簡単に言うと、ロボットが病巣を追いつつやるので患者さんは自然に横になっていればいいということなのですね。

塚本

はい、そのとおりです。患者さんは自由に呼吸してもらっていいです。なるべくじっと寝てもらうのはそうなのですけれども、患者さんの負担はかなり少ないです。

池田

そういったことで、リニアックも含めて従来の放射線療法とどのような違いがあるのでしょうか。

塚本

臨床的には、リニアックで先ほど申し上げたような5㎜程度の誤差はやむを得ないと考えています。そうしますと、病気のところを外さないようにするためには、その5㎜をあらかじめ上乗せしておく必要があるのですね。それから、呼吸で動くこともありますので、動く範囲もカバーする。それで照射範囲がどんどんどんどん大きくなっていきます。そうすると、広く当てればもちろん外れないのですけど、周囲によけいな放射線がかかってしまいますので、これで、ご存じの放射線治療によるいろいろな副作用が出ることになります。

放射線の副作用も出ますので、一遍にドーンと治療をしてしまいますと、非常に患者さんがつらいことになります。ですから、ちょっとずつしか毎日治療できません。「通常分割照射」という言い方になるのですけど、1回2 Gyで20~30回程度に分けて、ひと月前後かけて治療するということになります。

サイバーナイフはその点、1㎜も誤差なく照射でき、病巣だけに集中した照射ですからよけいなところにかからない分、副作用も少なく、照射回数を1回から5回程度に減らしても大丈夫です。そうしますと、もちろん1回当たりの線量はすごく大きくなるのですけど、よけいなところにあまり当たりませんので、無理なく副作用の少ない治療ができるということになります。つまり、サイバーナイフでは短期間で副作用の少ない治療ができるということになります。

池田

それは患者さんにとっても楽ですね。

質問にもあるのですけど、サイバーナイフの適応はどのようなものなのでしょうか。

塚本

先ほど先生からもありましたように、サイバーナイフの名前にも関係するのですけど、ナイフと言っても実際に切れるわけではありません。痛くもないし、熱も使わない。何も感じないのですけれども、ナイフというのはなぜかというと、治療効果が手術に匹敵する、つまり切り取ったようにきれいに全滅させられる、病巣が全滅するという意味で切るようなということでナイフと呼んでいます。

ですから適応としては手術の代わりになる、そういう可能性があります。例えば早期肺がん。これは手術が標準治療で、手術だけで治る方も多いのですけれども、それの代替としてサイバーナイフを使うこともできます。定位照射でも十分な線量を照射すれば、手術で切り取ったのと同じような効果が期待できます。それから、よく知られているのは大腸がんの肝転移です。これも数が少なければ手術をやっているのですけれども、サイバーナイフはこれの代替にもなります。そんな可能性がありますので、そういったところが適応になります。

池田

最近では数の少ない転移、オリゴ転移に関しても保険適用になったのでしょうか。

塚本

はい。実は2020年からオリゴ転移というのが保険に盛り込まれました。これは遠隔転移の一種なのですけれども、数が少ない転移、そしてそれが治ると根治に結びつく、そういうことが期待できる、具体的には予後が延びるというふうに保険では記載されていますけど、そういうものをオリゴ転移と呼んで、特別にそういうカテゴリーで考えていきます。

池田

サイバーナイフだけである程度は根治に持っていけるという、そういう意味なのですね。

塚本

はい、そうです。大腸がんの肝転移もオリゴ転移という考え方で手術が行われたのですけど、これの代替として放射線治療で定位照射ができるようになっています。

池田

一方、サイバーナイフの苦手な病巣というのはあるのでしょうか。

塚本

はい。これは極端に多い場合と大きいものです。集中した定位照射でも、重なりますと周りに影響が出ますので、だいたい脳転移ですと20個ぐらいが限界になります。体幹部では3~5個ぐらいが上限になります。一つしかないとしても、10㎝を超えるとなかなか治療が難しくなります。

池田

質問にもありますけれども、卵巣がんの腹膜リンパ節転移の治療は実際どうなるのでしょうか。

塚本

サイバーナイフでは、卵巣がんに限らずいろいろな転移をやっているのですけれども、質問の卵巣がんというのは非常に難しいのです。腹膜というのは動きますし、サイバーナイフは狙い撃ちをしますので、位置を確定するのは難しいという点で非常に難易度の高い部類に入ります。あまり広くかけることはもちろんできませんし、もしも消化管に高線量が当たると穿孔の危険もありますので、熟練した施設でしかできない照射ということになります。

池田

呼吸等で内部臓器が動いたりしますよね。その場合は、どうやって正確な照射範囲を把握するということになるのでしょうか。

塚本

肺転移などの場合は、実際、X線画像で見えます。おなかですと見えませんので、その近くに金属マーカーを留置して、その金属マーカーを手がかりに位置を決めて、それを追いかけるということもよくやります。

池田

なるほど。旧来、卵巣がんは放射線が効きにくいと聞いたことがあるのですけれども。

塚本

この質問のような卵巣がんは、放射線が非常に効きにくいと言われていました。ですけれども、定位照射になってだいぶ良く治ることがわかってきまして、通常分割照射ですと1回2Gyという量でやっていたのですけど、1回照射が8~12Gy、これを超えますと、腫瘍の中の血管が障害されますので、X線の直接作用ではなくて血流障害による、いわゆる兵糧攻めのような効果で全滅することがあることがわかってきました。

池田

ということは、腫瘍そのものよりも、腫瘍の血管の障害によって兵糧攻めにして効果が出るということなのですね。

塚本

はい。ですから、いわゆる放射線感受性というのは定位照射であまり意味をなさなくなってきています。

池田

それはまた素晴らしい発見ですね。それで質問にもある、殺細胞性抗がん剤あるいは分子標的薬との併用についてはどうですかという質問なのですけれども。

塚本

殺細胞性の抗がん剤と定位照射は併用されることは実は少なくて、あくまで殺細胞性の抗がん剤は全身的な作用を期待して、定位照射は局所制御を期待してということになります。

一方で、免疫チェックポイント阻害薬は非常に相性がいいということがわかってきました。腫瘍抗原に対する免疫が定位照射で活性化することはわかっていますので、さらに免疫チェックポイント阻害薬をかぶせることで上乗せ効果があるということはわかっています。

池田

なるほど。それは定位照射によって腫瘍の抗原が曝露されるということなのでしょうか。

塚本

そのとおりです。抗原が出てくるのを、免疫が活性化することによってさらに強い免疫作用を促すということになります。

池田

そういう意味では相性がいいということなのですね。

最後に、サイバーナイフを使いこなしている施設のご紹介といいますか、どういった所だったら紹介して安心できるかということなのですけど。

塚本

具体的に申し上げることはできないのですけれども、サイバーナイフは個々の症例で工夫が必要な難しい装置です。見分け方としては、やはり導入されてから年数が経っている。それから、たくさんの症例を治療しているということ。これが一つの見分けになると思います。

また、先生方からご紹介いただく場合は、直接お電話ください。患者さんのことを考えて治療している先生はきちんとした対応をしてくれるのだと思います。患者さんにも、緩和治療というのは特に1回で済む治療ではありませんので、通いやすい、家から近いことももちろんなのですけれども、放射線治療医との相性もありますので、丁寧に診てくれる先生かどうかというのを見極めるのも大事だとお伝えいただければいいかなと思います。

池田

細やかな対応をしていただける施設にご紹介するということですね。

塚本

それが一番だと思います。

池田

どうもありがとうございました。