池脇
本日は、研修医制度と新専門医制度について教えてくださいということです。私が卒業した当時の大学に入局して専門医を目指すという制度と、この新しい制度は全く違います。先生は日本専門医機構の理事として、この新専門医制度に深く関わっておられるということで、よろしくお願いします。
岡田
よろしくお願いします。
池脇
この新専門医制度が、今からほぼ8年前、2018年にスタートしたという意味では、まだスタートして日が浅いシステムですけれども、そもそも日本専門医機構が発足した背景や目的から教えてください。
岡田
過去の専門医制度に関しましては、各学会が独自の基準で学会認定専門医などを認定運営していたという背景があります。そのため、100以上の学会専門医が乱立していまして、認定基準ですとか専門医の名称、診療内容がバラバラで国民にとって非常にわかりにくい状態でした。
そこで新しい新専門医制度ですが、国民に標準的で適切な診断、また治療を提供できる専門医の養成を目指した制度となっています。学会から独立した形で第三者機関である日本専門医機構が制度の統一化、標準化を図っている制度になっています。
池脇
専門医が学会主導で、非常に厳しいところもあれば、やや緩いところもあって、結果的に専門医の質のバランスが崩れているところを均一化することが目的ということですね。
岡田
そうです。
池脇
先生方、専門医機構は実際、どういうことをやっておられるのでしょうか。
岡田
私たちは新専門医制度の中で研修プログラムの策定の大元となるような整備基準を設けたり、各施設で実施される研修プログラムの承認、また各学会で行われる専門医試験の管理、認定内容の承認、そういったことを実施しています。
池脇
100以上の専門医が存在したということですけれども、機構が発足して、総数を必要最低限に絞るのも目的の一つでしょうか。
岡田
そうですね。やはり基本となる診療領域の1階部分とサブスペシャルティの2階部分といった形を作ったことが大きな特徴だと思います。1階部分として19の基本領域ですね。内科、外科、小児科、精神科といった、これらの各領域の専門医資格をまず目指して土台をしっかり作るということ。そしてさらに各医師がサブスペシャルティ領域として専門的な領域を目指す2階建ての部分を作ったことが大きな特徴だと思います。
池脇
今回お聞きの先生方も、おそらく旧制度で医師になり専門医をお持ちで、どちらかというとご子息が、この新しい制度で医師としての生活、人生をスタートしている可能性が高いかなと思います。
ちなみに医師国家試験に合格して、医者になり、まずは初期研修から始まって、その後先生の携わっておられる専門医制度ですけれども、実際には学生、6年生のマッチングから始まりますか。
岡田
そうですね。6年生のマッチングは初期の臨床研修先を決定するためのマッチング制度になります。専門医制度への応募は2年間の初期研修が終わるその前で、マッチング制度では行われていません。医師になって2年目の秋頃にこの専門医の方のアプライというか、各研修プログラムへの登録が始まります。
池脇
そうすると初期研修をしながら自分の専攻をある程度決めて、初期研修が終わってからの専門医のときには、病院に申請をして受けられるかどうかというかたちになるのでしょうか。
岡田
そうですね。各基幹病院という大きな病院が研修プログラムを運営していますが、そこのプログラムに応募していくかたちになります。
大学病院でしたら内科ですとか小児科、各領域の専門研修プログラムがありますので、そこで研修をしたい研修医が申し込みをしていく。そして研修プログラム側もその研修医を採用するかどうか、そこで試験とか面接などで採用が決まっていくかたちになります。
池脇
受け入れている病院側の立場ですと、例えば初期研修で来てくれたのでその後の専門医研修もと考えそうな気がしますが、一方で医師は日本全国、自分の行きたいところに行きたいと考えるとすると、調整するのはたいへんな気がしますけれどもどうでしょう。
岡田
もちろん研修病院は初期研修医が来てくれれば、そのまま採用したい強い思いがあると思うのですが、選ぶ側にも選択の自由があって、やはり自分がやりたい専門医または専門領域で自分に合った研修プログラムを探してアプライをしていくかたちになりますので、その点はある程度自由が利いているところにはなります。
池脇
受け入れる医療機関ですけれども、以前は大学病院が中心だったものが、最近は大学病院以外の中核的な病院に行く先生方が増えているのでしょうか。
岡田
そうですね。やはりこの専門研修のプログラムができたおかげで、地域の中核病院でしっかりとした専門研修ができるような時代になっていますので、大学だけではなくて地方とか、地域の基幹病院などで研修をする方も増えてはきています。
池脇
これは専門医制度だからというわけではないですが、今医師の偏在が大きな問題になっていますよね。この新専門医制度は、そういったものを軽減する方向に働くのか、なかなか難しいのか、現状はどうでしょうか。
岡田
とても難しい問題で、地域の医師不足を解消するためにいろいろ働きかけています。東京ですとか大阪といった医師が集まる大都市圏に関しては各領域においてシーリング制度といって、採用医師の制限、研修人数の制限が行われています。
それによって周囲の都道府県ですとか、または少し離れたところに専門研修へ行く方々も増えているとは思います。
池脇
今、この制度が発足してまだ10年弱、制度を変えると言ったら必ず制度を変えないほうがいいと言う人がいます。
その中でこの新しい制度を先生方が主導でやられて、ただその評判といいますか、この制度に関してどう思うか、アンケートを見ると、いいよというよりも、ちょっとどうだろうという声のほうが大きいですが、それは何が原因でしょうか。
岡田
やはり研修プログラムの厳しさも一つあると思います。それまでは比較的、1か所の病院で専門医の取得が可能になる例もあったとは思いますが、今は研修プログラムで必ず基幹病院と連携病院を移動する必要があったり、あとはやはり専門医のレベルも、かなりしっかりとした研修内容が求められていますので、そういった時間的にも厳しいものがあるのかなとは思います。
ただやはり、幅広い症例を経験したり、様々な施設で研修をすることは標準的な医療を提供していく上では、医師にとっては貴重な経験、大事な研修の期間だと思います。何らかの考慮すべき事情がある場合は専門医機構のほうでもある程度、柔軟に研修できる研修カリキュラム制を導入し運営をしているところになります。
池脇
医師になった先生方は1階部分の専門医は取って、サブスペシャルティも早く取りたいという希望があるように思いますが、この新しいシステムは最終的な2階部分までの専門医になる期間はどうなのでしょう。
岡田
やはり長くなっているとは思います。1階建て部分の専門医を取得するのがだいたい3年から、長いプログラムの診療科ですと5年かかります。例えば内科でしたら、その3年の内科専門医を取った後に循環器、消化器といった診療科の専門サブスペシャルティを取るのにさらに1年2年とかかりますので、どうしても時間がかかるようなことになっているかと思います。
池脇
領域によっては基礎領域の研修中にサブスペシャルティの研修を認定するようなシステムもありますよね。
岡田
はい。並行研修というかたちで、内科の間に消化器でしたら消化器の研修も並行して行って、短い期間で専門医が取れるシステムもあります。
池脇
まだ発足したばかりで、これからいろいろな修正を加えながら日本になじむ新専門医制度になっていくと確信をしていますが、機構の先生方は、今後の展望はあるでしょうか。
岡田
やはりこの専門医制度は社会的な使命も大きく担っていると考えています。広く国民の皆さまに適切な診断や治療が提供できることを目指したものになっています。ただ、なかなかシステムをご理解いただけないとか、研修が厳しい点ですとか、課題もまだたくさんあるとは思います。研究医が減ってきてしまっている問題も生じており、対策も機構の中では様々検討しているところです。専門医制度がより日々、改善していけたらと考えているところです。
池脇
今後とも新専門医制度が発展していくことを願っています。ありがとうございました。