ドクターサロン

池田

本日は、泥遊びや粘土遊びをした翌日に手のひらが赤くなった、かゆいと言って受診される子どもがいるということですが、こういうことはけっこう多いのでしょうか。

矢口

特に多いというわけではありませんが、冬の時期に多いような印象を受けます。寒い戸外で長時間泥んこや砂いじりをして、暖かい家に帰ってきたときに、血行の急速な改善のために、赤くなったりかゆくなったりすることがあります。これを繰り返したり、手が濡れたままの状態で冷たい風を受けたりすると、凍瘡(しもやけ)やあかぎれになります。また、かなり寒い日に鉄製の遊具を長く触っていると凍傷になることもあります。ほかに、砂かぶれ皮膚炎という皮膚病も注目されています。

池田

気になるところはいろいろな疾患が考えられるということで、皮膚科でない先生方だと鑑別に苦労するかと思うのですが、まずかぶれですと、どのような原因でどのような症状になってしまうのでしょうか。

矢口

かぶれとは原因物質の接触による皮膚炎で、刺激性のものとアレルギー性のものがあります。皆さんがよく知っているかぶれは湿布や香粧品によるかぶれかと思います。かぶれの原因は様々で、前述した湿布剤、香粧品や、意外なものとしては皮膚炎や水虫の外用治療薬などがあります。

かぶれの症状は、紅斑(赤み)・丘疹(ボツボツ)・水疱・かゆみです。かぶれは激しい皮膚炎ですので、皮膚

池田

砂の中にいろいろ金属が入っていますよね。いわゆるかぶれの原因になることはあるのでしょうか。

矢口

ニッケル、クロムなどによるかぶれは報告されています。また金属とは違いますが、公園の砂場には、犬・猫などの排泄物による刺激性またはアレルギー性皮膚炎もあるかもしれません。

池田

おそらくは尿そのものというよりも、pHの変化とか化学的なことですかね。

それで気になるところが、やはり偶発なのでしょうか。例えば、もともとある感染症があって、たまたま砂遊びをした後に顕著になるというパターンがあると思うのですが、そういった手のひらに症状が出てくるような感染症にはどのようなものがあるのでしょうか。

矢口

手のひらや足の裏、指先が赤く腫れ、硬くむくんだようになる川崎病、全身のどこにでも赤いボツボツが出現する溶連菌感染症など、さらに特に有名な感染症で、口腔内、手のひら、足の裏などに小水疱が出現する手足口病があります。

池田

感染症あるいは川崎病のような自己免疫の関係する、想定されているような病気もあると思うのですが、もう一つ、先ほどちょっとお話しいただきましたが、砂かぶれ様皮膚炎というのが報告されているようですが、どのようなものなのでしょうか。

矢口

砂かぶれ様皮膚炎は、荻野篤彦先生が「小児掌蹠丘疹性紅斑性皮膚炎」という病名で報告されました。特徴は手のひらや指先に小さな赤い発疹が出て、数日~1週間ほどで赤い部分が広がり、手のひら全体が赤くなり、さらに2週間ほどで少しむくんだように腫れ、かゆみを伴います。4歳くらいまでに多く、足の裏や足の指にも似た発疹が出ることがあります。時間とともに自然に良くなっていくタイプの皮膚病で、重症になることは少ないとされています。しかし、かゆみが激しい、腫れや赤みが強く、手のひらを痛がったり、足の裏が腫れて歩きにくいなどの症状が出現したら、皮膚科または小児科を積極的に受診し、適切な治療を受けたほうが良いと思います。

池田

原因はやはり砂なのでしょうか。

矢口

「砂かぶれ」という名前ですが、砂そのものが原因ではなく、EBウイルスの初感染を疑わせる症例や、手のみならず外来物質に接触しにくい足底にも皮疹が生じ得るため、ウイルス感染が関わっていると考えられています。ただし人から人へうつる病気ではありません。

池田

どのような人がかかりやすいですか。

矢口

特にかかりやすい体質などの報告はありませんが、アトピー体質の子どもに多い印象があります。

池田

やはりいろいろな疾患が隠れている可能性が多いのですが、いわゆる砂かぶれ様皮膚炎、あるいはかぶれ、それが考えられるときにどういう治療をされるのでしょうか。

矢口

砂かぶれ様皮膚炎は治療に抵抗性で、ステロイド剤の内服・外用にもほとんど反応せず、全経過は2週間から3か月間であったとの報告があるとおり、特効薬があるわけではなく、対症療法が中心となります。かゆみや赤みが強い場合には抗アレルギー剤の内服と、短期間のステロイド外用剤の併用が良いかと思います。冷やしたり、いわゆるかゆみ止めの、例えばクロタミトンやジフェンヒドラミンの外用も良いかと思います。

また明らかに接触性皮膚炎である場合には、抗アレルギー剤内服とやや強力なステロイド外用剤での治療が必要でしょう。

池田

よくいろいろなものにかぶれる代表的な疾患がアトピー性皮膚炎ですよね。そういう方が繰り返してこういう砂いじりによる紅斑ができるようになった場合、何か防ぐような手立てはあるのでしょうか。

矢口

いわゆる砂かぶれ様皮膚炎は、前述したように、ウイルスの関与が考えられており、4歳ごろまで好発するため、繰り返すことは少ないのではと考えます。

その他の寒冷刺激や外的刺激による手のひらの赤みやかゆみの予防策としては、寒い日に長時間戸外で遊ばないということになりますが、なかなか難しいため、手袋は必須でしょう。アトピー性皮膚炎患者は皮膚のバリア機能が低下しているため、容易に皮膚炎が起こりやすく、また悪化しやすいという特徴があります。そのため軽微な皮膚炎は治しておくこと、ハンドクリーム、保湿剤などを塗って皮膚を保湿、保護しておくことが重要でしょう。

乳幼児に対するステロイド外用剤の選択ですが、皮膚炎が激しい場合を除き、中等度から弱めのものを選択します。よく「数日でステロイドはやめるように」と指示されることがあるようですが、軽快・治癒するまで塗ることが重要です。塗るときは、ガーゼ・包帯保護を指示することが多いのですが、手が小さく難しいので、手袋やミトンを勧めています。もちろんすぐ脱いでしまいますが、多少舐めてしまっても大きな問題はありません。

また、ステロイドではない、ジファミラスト(PDE4阻害薬軟膏)、タクロリムス(免疫抑制外用薬)、デルゴシチニブ(JAK阻害外用薬)などの非ステロイド外用剤も最近よく使用されるようになっています。特にジファミラストは大人の手湿疹にも有効性が示されています。ただし、上記の3つの外用剤は、効能効果がアトピー性皮膚炎のみなので、ご注意ください。

池田

なかなか親御さんたちの心配な面も含めて適切な診断治療というのが大切だということで、どうもありがとうございました。