池脇
今回は、新生児のゼンメイ(喘鳴)に関する質問です。喘鳴というのは、呼吸の際にゼーゼー、ヒューヒューと音がすることをいいますが、それが赤ちゃんに起こるとなると、親御さんはすごく心配になると思うのですけれども、どうでしょう。
肥沼
ゼイメイとよく言われます。ゼーゼーするというのとほぼイコールで使われているかなと思いますが、最初に確認しておくと、医学用語としてはゼンメイになります。基本的には、どこか空気の通り道が狭いときに出てくる音とお考えいただければいいので、もちろんご家族が心配になるのは当然のことですけれども、緊急性を要するような疾患もありますが、そこまで心配しなくてもいいという病態まであるので、幅広いというのが特徴になるかと思います。
池脇
今回は喘鳴の新生児を診察された医師からの質問で、親御さんから、喘鳴がありましたということですが、受診時に喘鳴はなくて、ウイルスもチェックしたけれども原因不明で何だったのでしょうかということです。まず、喘鳴は呼吸のどこのフェーズで聞こえるかという違いはあるのでしょうか。
肥沼
そうですね。まず一番気にしていただきたいのは、息を吸っているときによく聞こえるのか、息を吐くときによく聞こえるのか、それともほぼ同等なのかという点です。あとはどこから響いてくるように聞こえるのか、鼻なのか、喉、いわゆる喉仏のあたりなのか、それとも胸なのかということを確認されるのが一番大事だと思います。そうすると、どこから響いてくるかによって、先ほどお話しした空気の通り道のどこが狭いのかという大きなヒントになります。
池脇
どこが狭窄しているのか。呼気なのか、吸気なのかによって、その原因が異なるということなのですね。
肥沼
そのとおりです。息を吸うときに強いもの、いわゆる吸気性喘鳴は、胸郭に入るよりも頭側、要するに上側の狭窄によるものです。呼気主体のものは胸郭に入ってからのもの、特に胸腔内、要するに気管支に分かれた後の狭窄というのは呼気に強く出ますので、そこのところで随分区別がつきます。そしてそこに一致して最強点が自分の吸気呼気の感覚と、最強点、鼻からか喉からか胸からかということが合いますと、だいたいの見当はつきます。もちろん騙されることはあるのですけど、それが大きなヒントになります。
池脇
話は戻りますけれども、今回の質問では、親御さんによると、家では喘鳴があった、でも診察のときにはなかったとなると、診察する医師としても手がかりがない。こういう場合は、親御さんがスマートフォンで録画・録音することも大事でしょうか。
肥沼
もちろんそのとおりです。昔は「ビデオを持ってきてください」というたいへんな時代もありましたけど、今は本当に簡単に録れますので。もちろん真夜中で暗かったとか、授乳中で動画までは難しいけど、といっても、音だけでかなりヒントになりますので、ぜひ「じゃあ次、音が出たら録ってきてくださいね」と言うことは非常に大事だと思います。
池脇
次に、呼気と吸気でそれぞれどういう疾患を念頭に置いたらいいのでしょうか。
肥沼
まず一番は吸気、簡単に言いますと首より上の狭窄でいうと、喉頭軟化症という病気があることが知られています。これは乳幼児特有の疾患だと思いますけれども、喉頭部の構造上の脆弱性が基本にあったり、形態が少し人と異なるということがあって、吸気時に気道側に引き込まれることによって狭窄を呈してしまうという病気があります。これはほとんどの方が軽症ですけれども、中等症以上ですと、飲みにくいとか苦しそうだとか体重が増えないという原因になります。
もう少しいきますと、鼻の奥にアデノイドというところがあります。これは最近、現代病なのかなと思っているのですけど、私が小児の診療に携わり始めた20年前はたまにしかいらっしゃらなかったのですが、最近は新生児期からアデノイドが腫れる方がいらっしゃいます。理由はわかりませんけれども、こういうものも吸気性喘鳴の原因になります。
呼気性はなかなか多岐にわたりまして、先天性のそれこそ気管が狭い方、気管支が狭い方。今回質問いただいたように、感染症によっても起こるでしょうし、もしくは新生児期にはわからないですけれども後から見れば喘息のような病態の始まりだったこともあるかもしれません。
あと比較的多いのは、実は誤嚥している。むせるって思うじゃないですか。ただ、赤ちゃんたちの中には、誤嚥をしているのだけれど、むせないという方もいないわけではないので、いつどのタイミングで音が出ますかということを確認することも大事だと思っています。
池脇
吸気か呼気かで考えるべき疾患を解説いただきましたが、この症例のように一時的か、あるいは持続するかというのも大きな情報でしょうか。
肥沼
非常に大事な情報になります。先ほどお話しした中の、例えば先天性の気管狭窄。構造上、気管が狭くて音が出ているのであれば、もちろん寝ていておとなしい呼吸をしているときに音は小さくなるかもしれないけれど、基本的にはずっとある。なのか、それとも、先ほどのように授乳のときだけに出るのか、寝ているときに出るのか、泣いているときだけ出るのかというような、いわゆる増悪因子とか寛解因子と言われるようなものは非常に大事で、ヒントになります。
池脇
先生が後半におっしゃった増悪因子、寛解因子の一つとして、例えば赤ちゃんが仰向けになっていると喘鳴は強いけれども、抱っこして頭が垂直になると和らぐとか、体勢によっても影響を受けますか。
肥沼
そうですね。一番わかりやすいのは舌根沈下と言われるもので、大人でも睡眠時に舌根が落ちることはよく知られていますけれども、赤ちゃんたちは、もともと空気の通り道が狭くて、上向きで寝ると落ちますので、抱き上げてあげると楽になるということもあります。
池脇
そうしますと、今回の質問では、一過性でウイルスも陰性ということですが、先生から見るとどういった喘鳴だったのでしょうか。
肥沼
可能性として大きいかなと思うのは、早朝にだったので、睡眠時だったとすれば、例えば授乳に癖があったりしてアデノイドが腫れてきて、大人のいびきに近いような状態になっているか、もしくは早朝であっても授乳中の可能性もありますので、授乳中に先ほど言ったようにむせるわけではないのだけれど誤嚥していてゼロゼロしたような可能性。
最後、ウイルスの検査をされたけど陰性だったということですけれども、もちろん下気道炎の最初である可能性はあると思いますが、一番大事なことは今この瞬間に、もう精密検査に行かなきゃいけないかどうかということは、元気かどうか、授乳できているかどうか、機嫌がどうかということでご判断いただければいいかなと思います。
池脇
喘鳴がどのフェーズだったかという情報もないので、なかなか診断を推定するのも難しい中で、ありがとうございました。
先生が先ほど言われた先天性の喉頭軟化症は徐々に改善していく病気ですか。
肥沼
はい。そのように考えていただいてよいと思います。軽症の方というのは、医療機関に受診されず自然軽快されている人がおそらくかなりの数いるので、何パーセント良くなりますというのが非常に難しいのです。おそらくお調べになると、喉頭軟化症にはこういう治療があるよ、こういう手術があるよということがたくさん出てきます。もちろんそういう方もいらっしゃるのですけれども、多くの方は自然経過で良くなります。中等症の方も、頑張っていると成長・発達とともに良くなっていて、原則論は12~18か月までにほぼ良くなるというのが基本の病気になります。
池脇
これは親御さんの見方ですが、緊急で受診したほうがいい場合、例えば、陥没呼吸などポイントはあるのでしょうか。
肥沼
そのとおりですね。赤ちゃんは大人と違って嘘をつかない、無理して「大丈夫だよ」とは言いませんので、お母さんお父さん方は見ていらっしゃれば必ずわかると思います。機嫌が悪い、無表情になる。赤ちゃん、新生児は笑わないかもしれませんけど、ニヤニヤとかニコニコはするので、いつもと違うなと思ったり、ハーハー、呼吸が早いな、陥没呼吸しているな、飲めないな、飲みたいけど飲めないな、もしくは飲む気がないなという場合には、急いで大きな病院へということになるだろうと思います。
池脇
今回の質問の最後に、喘息があります。確かに喘息は喘鳴をきたしますが、新生児あるいは乳児期も含めて、喘息は小児の呼吸器疾患では重要な疾患でしょうか。
肥沼
喘鳴というくくりで言えば、しかも乳幼児までターゲットを広げると一番多い疾患にはなります。ただ、日齢13日でということであれば、喘息よりもほかの疾患をまず考えるというのが基本になると思います。生後2~3か月発症の喘息の方というのはいらっしゃるので、もう少し月齢が上がったところであれば喘息も鑑別に考えますが、なかなか難しいケースもあります。
池脇
本日は、幅広く解説をいただきました。ありがとうございました。